マーケティングリサーチ専門のオンラインメディア

マーケティングリサーチの最新トレンド|AI時代に調査はどう変わるか

調査のやり方が、ここ数年で大きく動いています。会場に集まらなくても話を聞けるようになり、文字起こしはAIが数分で終わらせる。けれど、道具が変わっても、人の気持ちを理解するという目的は変わりません。
変わったものと、変わらないもの。その両方を見分けることが、これからのリサーチでは欠かせません。年間100件を超える調査に関わってきた立場から、いま現場で起きている変化を整理します。

いまリサーチに起きている変化

大きな流れは三つあります。調査のオンライン化、AIによる作業の自動化、そして事業会社が自分たちで調べるDIYリサーチの広がりです。
どれも、調査をより速く、より安く、より身近にする方向に働いています。専門家でなければ触れなかった調査が、誰の手にも届くようになりつつある。それが、いまの大きな潮目です。
一方で、手軽になったぶん、浅い調査も増えました。だからこそ、深く正しく理解する力の価値は、むしろ上がっています。マーケティングリサーチの基本を押さえたうえで、新しい道具を足していく姿勢が求められます。

AIが変えた調査の現場

いちばん変化が大きいのは、調査の裏方作業です。
これまで何時間もかかっていたインタビューの文字起こしが、いまは録音を入れれば数分で仕上がります。何百件もの自由回答も、AIに渡せばおおまかな傾向をすぐにまとめてくれる。下調べや、質問のたたき台づくりにも使われ始めています。
つまり、調査にかかる時間とコストの構造が変わりました。手作業に費やしていた時間を、考えることや解釈することに回せるようになった。これは現場にとって、静かで大きな転換です。

生成AIの使いどころと限界

便利な一方で、AIに任せてはいけない領域もはっきりしてきました。現場で使ってみて、線引きが見えてきました。

AIは、言われたことを上手にまとめる。けれど、言われなかったことに気づくのは苦手だ。沈黙の意味、言いよどんだ一瞬、建前の裏にある本音。そこを読むのは、いまも人の仕事だ。

AIは、すでにある言葉の整理は得意です。けれど、まだ言葉になっていない気持ちを掘り当てることはできません。
消費者インサイトのように、本人すら気づいていない欲求を探る作業は、文脈を読む人の力にかかっています。AIを下調べと整理に使い、解釈と発見は人が担う。この分担が、いまのところの正解です。

オンライン化の定着

画面越しの調査は、もう特別なものではなくなりました。
オンラインインタビューは、いまや当たり前の選択肢の一つです。全国の人に同じ日に話を聞ける、忙しい人にも参加してもらえる、といった利点が定着しました。
ただし、すべてが画面で済むわけではありません。商品を手に取ってもらう、生活の場を見せてもらう場面では、対面や訪問の価値は残ります。オンラインと対面を、目的で使い分ける。その判断力が、これからの基本になります。

行動データとアンケートの融合

聞いて集めるデータと、跡からたどるデータを、組み合わせる動きが進んでいます。
サイトのアクセスログや購買履歴は、人が実際にどう動いたかを正直に語ります。けれど、なぜそう動いたのかは語りません。そこをアンケートやインタビューで補うと、行動と理由がつながります。
何が起きたかを数字でつかみ、なぜ起きたかを言葉で確かめる。この二段構えが、当たり前の進め方になりつつあります。

DIYリサーチの広がり

専門会社に頼まず、事業会社が自分たちで調べるDIYリサーチも増えています。
安価なアンケートツールが普及し、ちょっとした確認なら自社で完結できるようになりました。スピードが命の場面では、自分たちで素早く回せる利点は大きい。
ただし、手軽さの裏で、設計の甘い調査も増えました。聞き方一つで結果は簡単に歪みます。簡単な確認は自社で、判断を左右する重い調査は専門家と。この線引きが、DIY時代の使い分けになります。

動画とスマホ起点の調査

対象者がスマホで撮った動画を送ってもらう調査も、静かに広がっています。
家での使い方、買い物の様子、料理の手順。文字や言葉では伝わりにくい生活の場面を、本人の目線で記録してもらえます。会場では再現できない、ふだんのままの姿が見えるのが強みです。
若い世代ほど、文章で答えるより動画で見せるほうが自然、という変化もあります。聞く相手に合わせて、答えてもらう形そのものを変えていく必要が出てきました。

倫理とプライバシーへの目

データを集めやすくなったぶん、扱い方への目も厳しくなりました。
誰の、どんなデータを、何のために使うのか。対象者にきちんと伝え、納得してもらったうえで進めることが、以前にも増して問われます。便利だからと無断で行動を追う、といったやり方は通用しません。
信頼を失えば、協力してくれる人はいなくなります。誠実にデータを扱う姿勢そのものが、これからの調査の土台になります。

人にしかできない部分

道具がどれだけ進んでも、最後に残るのは人の力です。
相手の懐に入り、本音を引き出す。言葉にならない表情から、気持ちを読み取る。集まった断片から、意味のある物語を組み立てる。こうした仕事は、AIにもツールにも肩代わりできません。
自動化が進むほど、人にしかできない部分の価値が際立ちます。技術に飲み込まれるのではなく、技術を使いこなして、人の理解を深める。そこに、これからのリサーチの軸足があります。

これから求められるリサーチャー像

変化の時代に強いのは、道具に詳しいだけの人ではありません。
新しいツールを試しながら、人の気持ちを読む力を磨き続ける人です。AIに任せられる作業は任せ、空いた時間で対象者ともっと深く向き合う。手を動かす人から、意味を見いだす人へ。役割の重心が移っていきます。
こうした変化のなかでキャリアをどう築くかは、リサーチャーのキャリアの記事でも掘り下げています。

リサートの考え方

リサートは、新しい道具を取り入れながらも、人の理解を深めることを軸に調査を支援しています。
AIで効率化できるところは効率化し、対象者と向き合う時間にこそ力を注ぐ。変わる時代に、何を変えて何を守るか。調査の進め方に迷ったときは、まずは課題の整理からご相談ください。

リサートにマーケティングリサーチの相談をする

よくある質問

Q.AIで調査はどこまで自動化できますか?
A.文字起こし、自由回答の要約、初期の整理、下調べといった裏方作業は大きく自動化できます。一方で、沈黙や言いよどみの意味を読む、本音を掘り当てる解釈の部分は人の仕事です。任せる部分と人が担う部分を分けるのがコツです。
Q.DIYリサーチと専門会社への依頼はどう使い分けますか?
A.簡単な確認やスピード重視の調査は、自社のアンケートツールで素早く回すのが向きます。判断を大きく左右する重い調査は、設計の甘さで結果が歪みやすいため専門家と組むのが確実です。重さに応じて使い分けます。
Q.これからのリサーチで人に求められる力は何ですか?
A.新しいツールを試す柔軟さと、人の気持ちを読む力の両方です。AIに任せられる作業は任せ、空いた時間で対象者と深く向き合う。手を動かす人から意味を見いだす人へ、役割の重心が移っていきます。

この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス 代表取締役

リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。

あわせて読みたい記事