商品が売れるかどうかを、出してみるまで分からない。その不安をできるだけ小さくするのが、マーケティングリサーチの役割です。
お客さまが何を求め、なぜ選び、どこで迷うのか。勘や経験だけに頼らず、事実をもとに判断するための調べごと全般を指します。
年間100件を超える調査の現場に立つ立場から、目的から手法、進め方までを、つながりが見える形で整理します。
マーケティングリサーチとは
マーケティングリサーチとは、商品やサービスを売るための意思決定に必要な情報を、調査によって集めて分析することです。
市場の大きさ、お客さまのニーズ、競合との違い、広告の効き方。こうした問いに、推測ではなく根拠を持って答えるために行います。市場調査とほぼ同じ意味で使われますが、マーケティングの判断に直結させる点に重心があります。
マーケティングとマーケティングリサーチの違い
よく似た言葉に、マーケティングがあります。
マーケティングは、商品が売れる仕組みをつくる活動全体を指します。誰に、何を、どう届けるかを設計し、実行するところまでを含みます。マーケティングリサーチは、その判断を支える調べごとの部分です。
大きなマーケティングという営みの中で、事実を集めて意思決定を助けるのがリサーチの役割、と整理するとわかりやすいです。
なぜマーケティングリサーチが必要か
理由はシンプルで、外すと高くつくからです。売れない商品を作ってしまう、刺さらない広告に予算を使ってしまう。発売してから気づくと、取り返しがつきません。
事前に小さく調べておけば、大きな失敗を避けられます。作り手は、自分の商品を良いと思い込みがちです。リサーチは、その思い込みと、お客さまの本音とのズレを先に見つける役割も果たします。
調査が意思決定を変えた、ある飲料の話
実際にあった例を、ひとつ紹介します。
ある外資系の飲料メーカーから、海外ですでに売れている製品を日本に投入すべきか、という市場進出の調査を頼まれました。本国の商品開発チームは、味に自信を持っていました。海外ですでに実績のある製品だったからです。
ところが、作り手が考える「おいしい」と、日本のお客さまが感じる「おいしい」は、同じではありませんでした。
日本人の対象者に試飲とインタビューをしてもらうと、本国の想定とはかなり違う反応が返ってきました。
日本人の口には甘すぎると感じる人が多かった。使われているスパイスが日常になじみがなく、最初のひと口で身構えてしまう。パッケージが日本では別ジャンルの飲み物に似ていて、その味を期待してしまい、口にしたときのギャップに戸惑う。
味そのものだけでなく、パッケージから受ける期待までが、評価を左右していました。
結果として、この製品の日本進出は、一度見送りになりました。もし調査をせずに発売していたら、大きな在庫と広告費を失っていたはずです。事実を先に知れたことで、撤退ではなく、賢い見送りという判断ができました。
定量調査と定性調査の違い
手法は大きく二つに分かれます。
- 数で測る定量調査。アンケートなどで、どれくらいの人がそう思うかを確かめる。割合や傾向を数字で押さえるのが得意
- 深層を探る定性調査。インタビューや観察で、なぜそう思うのかを掘り下げる。数字の裏にある理由や感情を言葉で捉える
どちらが上ということはなく、組み合わせて使います。
定性で仮説を見つけ、定量で検証する、という流れが王道です。
マーケティングリサーチの種類
定量と定性という分け方のほかに、目的による分類もあります。
- 探索型。まだ何が問題かが見えていない段階で、仮説を見つけるための調査
- 検証型。立てた仮説が正しいかを、数字で確かめる調査
- アドホック調査。そのつど課題に合わせて、単発で行う調査
- 継続調査。同じ項目を定期的に測り、変化を追う調査
探索型で見つけた仮説を、検証型で確かめる。
この順番が、調査全体の土台になります。
マーケティングリサーチの主な手法
よく使う手法を挙げると、次のとおりです。
- デプスインタビュー。一対一でじっくり深掘りする
- フォーカスグループ。数名を集め、会話から気づきを引き出す
- アンケート調査。多くの人に同じ質問をして、数で傾向を掴む
- 行動観察やエスノグラフィー。現場で人の動きをそのまま見る
- コンセプトテスト。発売前に、商品の受け入れられ方を測る
何を知りたいかによって、選ぶ手法が変わります。
マーケティングリサーチの進め方
進め方は、おおまかに5つのステップに分かれます。
- 課題設定。何を決めるための調査かをはっきりさせる
- 調査設計。手法、対象者、聞くことを組み立てる
- 実査。実際に対象者から話やデータを集める
- 分析。集めた事実から、判断に効く意味を取り出す
- 提案。次の一手につながる形で、結果を伝える
最初の課題設定がぶれると、後がすべてぶれます。
ここに一番、時間をかける価値があります。
マーケティングリサーチでよくある失敗
調査は、やり方を誤ると、お金と時間をかけたのに役に立たない結果になります。
よくあるつまずきは、次のようなものです。
- 目的が曖昧なまま、とりあえず聞いてしまう
- 手法ありきで、目的に合わない調査をしてしまう
- 対象者が偏り、本当に知りたい層の声が拾えない
- 分析が集計で止まり、意味の取り出しまで進まない
- 報告書を作って満足し、次の打ち手につながらない
どれも、最初の課題設定と、最後の使い方が抜けると起きます。
調査の前後をていねいに詰めるだけで、失敗の多くは避けられます。
マーケティングリサーチはどんな場面で使うか
マーケティングリサーチが活きる場面は、事業のあらゆる段階にあります。
どの場面でも共通するのは、思い込みを事実で確かめるという姿勢です。
マーケティングリサーチの有名な活用事例
マーケティングリサーチが事業を動かした例は、世の中にいくつもあります。
よく知られているのは、USJの立て直しです。マーケターの森岡毅さんが、来場者のデータと消費者の声をもとにテーマパークの方針を大きく変え、客足を回復させました。勘ではなく、人の行動と本音を起点に打ち手を決めた点が、調査の力をよく表しています。
派手な事例だけではありません。新商品の味を一つ変える、広告の一言を選び直す。
そうした小さな判断の積み重ねにも、リサーチは静かに使われています。
マーケティングリサーチの費用の目安
費用は、手法と規模で大きく変わります。あくまで目安ですが、おおよその水準を挙げておきます。
- ネットリサーチなどの定量調査は、数十万円から
- グループインタビューは、1グループあたり30万円から60万円ほど。会場、モデレーター、リクルートを含む
- デプスインタビューは、対象者の人数と謝礼によって変わる
- 設計から報告まで通すと、数十万円から数百万円が一つの目安
安く見える見積もりでも、リクルーティングや会場費が別になっていることがあります。
何が含まれているかを一行ずつ確かめると、後から驚かずに済みます。
マーケティングリサーチの市場とこれから
日本のマーケティングリサーチ市場は、2024年で2,725億円ほどの規模があります(JMRA調べ)。コンサルティングやデータ提供まで含めたインサイト産業全体では、およそ4,800億円にのぼります。
市場はゆるやかに伸びており、調査のニーズは、事業のあらゆる場面に広がっています。
AIはマーケティングリサーチをどう変えるか
AIの広がりは、調査のやり方を確実に変えています。
今、現場で効いているのは、次のような場面です。
- 自由記述やインタビューの文字起こしを、短時間で要約・分類できる
- 大量のデータから、人が見落としがちなパターンを拾える
- アンケートの設計や集計を、下書きの段階から手伝ってくれる
いっぽうで、何を問うかを決めることや、対象者の本音を引き出す対話は、まだ人の役割です。
AIは、リサーチャーの手を速くする道具として効いています。置き換えではなく、組み合わせで強くなる。これが今の実感です。
自社でやるか、調査会社に頼むか
小さなアンケートなら、自社のツールでも始められます。
一方で、対象者のリクルーティングや、本音を引き出すモデレーターの進行、観察に適したインタビュールームが要る調査は、専門の調査会社に頼むほうが確実です。
自社でやる範囲と、任せる範囲を分けて考えると、費用と質のバランスが取りやすくなります。
マーケティングリサーチ会社の選び方
調査会社を選ぶとき、私が見てほしいと思う点は次のとおりです。
- 自社の商材や業界に近い調査の経験があるか
- 定量と定性の両方を、目的に応じて使い分けられるか
- 設計から分析、提案まで一気通貫で見てくれるか
- 担当者が、現場のインタビューまで分かっているか
- 見積もりの内訳が、はっきりしているか
価格だけで選ぶと、報告書は出てきても、判断に使えないことがあります。
何を決めたいかを最初に共有し、そこに応えてくれる相手を選ぶのが近道です。
リサートのマーケティングリサーチ
リサートは、定性調査を中心に、年間100件を超える調査の現場に立っています。設計から、対象者集め、インタビューの進行、分析、提案まで、一気通貫で支援しています。
調査は、報告書を出して終わりではありません。事実をもとに、次の一手を一緒に決めるところまでが仕事だと考えています。マーケティングの判断に迷ったら、まずは課題の整理からご相談ください。
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