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世界のZ世代格差|中国「寝そべり族」と新興国の若年失業を読み解く

世界のZ世代格差|中国「寝そべり族」と新興国の若年失業を読み解く

同じZ世代でも、生まれた国によって置かれた状況はまるで違います。豊かな消費者として注目される一方で、出口の見えない失業に直面し、競争から静かに降りる若者もいます。中国ではその姿を表す独特の言葉まで生まれました。
まずは日本ではなじみの薄い言葉から、ていねいに見ていきます。なお金額は1ドル155円で円に換算します。

そもそも「寝そべり族」とは何か

寝そべり族は、中国語の躺平(タンピン)を訳した言葉です。2021年の春に、中国のネット掲示板へ投稿された「寝そべることこそ正義だ」という趣旨の一文が発端とされ、そこから一気に広まりました。
意味するのは、過酷な受験や就職の競争、長時間労働をあえて拒み、最低限の生活で力を抜いて生きるという若者の姿勢です。家や車を買わず、結婚もせず、頑張らない。日本でいう、ゆるく生きるという感覚に近いようでいて、競争そのものからの静かな降板という色合いがより濃いのが特徴です。

当局が報道を抑えようとするほど社会現象になった点も見逃せません。私たちの見方では、寝そべりは単なる怠惰ではありません。いくら努力しても報われないと感じた若者による、声を上げない形の抗議と読むのが実態に近いはずです。

「偽オフィス」まで生まれた中国の若年失業

この空気を象徴するのが、偽オフィスと呼ばれるサービスです。これは、働いているふりをするために、机と椅子を1日単位で借りられる施設のことで、2024年から2025年にかけて中国の各地に現れました。
利用するのは、失業を家族や周囲に知られたくない若者や、就職活動の拠点が欲しい若者です。料金は1日あたり4ドルから7ドル、日本円にして約620円から1,085円ほど。出社する場所を、お金を払って手に入れているわけです。

背景にあるのは、16.5%という中国の高い若年失業率です。Fortuneの報道では、1,600万人もの若者が労働市場から事実上降りたとも伝えられています。働く場所を演じてまで体裁を保とうとする姿は、競争社会の重さを映しています。

新興国の若者はもっと厳しい現実に置かれている

苦しいのは中国だけではありません。インドの若年失業率は17%、モロッコにいたっては36%にのぼります。世界経済フォーラムによれば、アジアの若年失業率は、その国全体の平均の2倍から3倍に達する地域も少なくありません。
日本で語られるZ世代論は、恵まれた環境を前提にしがちです。けれど世界の多くのZ世代にとって、最初の関門は仕事に就けるかどうか、という切実な問題なのです。

それでも巨大な消費者であるという二面性

一方で、数の力は圧倒的です。コンサルティング会社EYなどの分析では、2025年にアジアの人口の25%をZ世代が占めます。中国のZ世代だけで2億3千万人にのぼり、家計支出の13%を握るとされます。
新興国では、Z世代の支出シェアが世界平均を上回る市場も珍しくありません。失業に苦しむ層と、市場を動かす巨大な消費者層が、同じ世代の中に同居しているのです。

国・地域数字出典
中国 若年失業率16.5%Fortune(中国)
インド 若年失業率17%WEF(インド)
モロッコ 若年失業率36%WEF(モロッコ)
アジアのZ世代人口比25%EY(アジア)
中国のZ世代人口2億3千万人Peak Re(中国)

「Z世代」を一つの塊で語る危うさを考える

ここから見えてくるのは、Z世代という一つの言葉で世界を語ることの危うさです。同じ年齢でも、ある国では市場の主役、別の国では失業に直面する当事者。前提も購買力も、まるで違います。
マーケティングリサーチャーの視点でいえば、海外のZ世代データを日本にそのまま持ち込むのは危険です。寝そべり族の感覚を、日本の若者にそのまま当てはめても、実態を外します。国ごとの文脈を抜きにした世代論は、きれいな誤解を量産するだけです。

各市場の実態は現地の声で確かめる

では、どうすればよいのか。出発点として世界の潮流を押さえるのは有効です。けれど最後は、対象とする国の生活者に直接あたって確かめるしかありません。失業率や支出シェアといった数字は、暮らしの輪郭を教えてくれますが、その国の若者が何に絶望し、何に希望を見ているかまでは語ってくれないからです。

数字の裏にある気分や価値観は、現地の人の言葉を聞く定性調査や、文化差を踏まえた海外調査でこそ立ち上がってきます。翻訳の等価性や聞き方の作法を誤れば、同じ質問でも国によって違う意味に受け取られてしまいます。

リサートは、こうした国ごとの文脈を踏まえながら、Z世代の本音を掘り起こすお手伝いをしています。海外市場のZ世代をどう捉えるか迷ったときは、まず気軽にご相談ください。世界の大きな流れと、その国ならではの現実。その両方を行き来しながら、確かな打ち手へとつないでいきます。

出典 Fortune 2025(中国)/ World Economic Forum 2025(インド・モロッコ)/ EY Global Generation Report 2025 / Peak Re(新興国)

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よくある質問

寝そべり族とは何ですか?

中国語の躺平を訳した言葉で、2021年春にネット掲示板の投稿から広まりました。過酷な競争や長時間労働を拒み、最低限の生活で力を抜いて生きる若者の姿勢を指します。

なぜ偽オフィスが生まれたのですか?

若年失業率が16.5%と高い中国で、失業を周囲に知られたくない若者などが、働くふりをするために机を1日単位で借りる施設として2024年頃から登場しました。

海外のZ世代データを日本に使うときの注意点は?

国ごとに前提も購買力もまるで違うため、そのまま当てはめると実態を外します。日本の生活者に定性調査で確かめる工程が欠かせません。

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この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス 代表取締役

リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。

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