Z世代の消費行動を理解せずに若年層マーケティングを語れません。筆者がマーケティングリサーチの現場で日々向き合うクライアントの多くが、Z世代の消費行動を「なんとなくSNSを使っている若者」程度にしか捉えていません。実際には彼らの購買意思決定プロセスには極めて明確なパターンが存在します。
本稿では2025年4月に実施された国内15歳~29歳のZ世代を対象とした最新調査や複数の定量データを基に、Z世代の消費行動における10の特徴を実務視点で解説します。
Z世代とは誰を指すのか
Z世代は1996年から2012年の17年の間に生まれた若者を指します。生まれた時からインターネットが当たり前に存在し、少年期・青年期にスマートフォンやSNSの急速な普及を経験した「真のデジタルネイティブ」です。
Z世代は全世界人口の約25%を占め、今後50年にわたって市場で最大の消費者層となり、今後10年間で最も消費額の伸びが顕著な世代となる見込みです。日本においても2030年代には消費の中心を担う存在になります。
筆者が実施したデプスインタビューでも、Z世代の回答者は「検索エンジンよりもSNSのハッシュタグで情報を探す」「Googleで調べるのは最後の手段」と語っており、情報接触行動そのものが上の世代と根本的に異なっています。
Z世代の消費行動における10の特徴
1. 節約志向と贅沢消費の二極化
「節約と贅沢のメリハリをつけるようになった」と回答した層が最も多く、Z世代が消費においてバランスを重視していることが明らかになっています。「コストパフォーマンスを重視するようになった」「節約志向が高まり、より低価格なものを購入・予約するようになった」という価値観も増加しており、実用性や価格に見合った価値を重視している傾向が顕著です。
一方で他の世代に比べて「ご褒美消費」への意欲が高いことも、Z世代の特徴的な価値観です。Z世代では「推し活」が高い割合を占めており、各年代で昨年よりも割合が増加しました。価格に敏感でありながら、自分が価値を感じるものには惜しみなく投資する姿勢が見て取れます。
2. SNSを主軸とした情報収集行動
Z世代がモノやサービスの購入・利用において参考にしている情報源は、SNSが62%で1位でした。次いでテレビ番組・CMが43%、Web検索が39%と続きます。Z世代が情報収集するときに使っているSNSは、Instagramが42%が1位、YouTubeが38%、X(旧Twitter)が36%、TikTokが16%となっており、複数のSNSを使い分けて情報を取得しています。
筆者が関わった化粧品ブランドのフォーカスグループインタビューでは、参加者全員が「まずInstagramで検索してレビューを見る」と回答しました。店頭での情報収集は10%にとどまっており、リアル接点の重要性が相対的に低下しています。
3. 口コミとユーザー生成コンテンツへの信頼
第三者による口コミなどの情報をもとに「自分に合っているサービスなのか」「価格以上の価値がある商品なのか」を、シビアに検討します。「デザインや世界観が自分に合っていたとき」(44.5%)「実際のユーザーの声を聞いたとき」(43.3%)という回答が突出しており、企業発信の情報よりも第三者の評価を重視します。
インフルエンサーに対しても信頼を求めており、わかりやすく商品説明をしている動画を見て消費行動をとる人も少なくありません。ただし誰でも良いわけではなく、自分と価値観が合う発信者の意見を重視する傾向があります。
4. 失敗を極度に恐れる慎重な購買姿勢
「失敗したくない」「後悔したくない」という価値観が共通しています。商品の購入やサービスを契約する際は、事前にSNSなどを活用してじっくりと情報収集をしてから消費行動をとるのが特徴です。
計画購買をする傾向の強い人は特に口コミを利用した事前の情報収集をしている可能性が高いというデータもあります。筆者が設計したアンケート調査でも、Z世代回答者の8割以上が「購入前に必ず複数の情報源を確認する」と回答しています。
5. 自分軸を重視した個別最適化ニーズ
自分の価値観を大切にするZ世代は、自分を体現する「デザイン性」、そして失敗したくないからこその「ユーザーの声」や「企業/ブランドの信頼性」を重視します。カスタマイズ可能な商品に対する関心も高いという調査結果があります。
どのような商品やサービスを利用しているかは、自分らしさを表現する上で大切だと思う(55.0%)と回答しており、消費行動そのものが自己表現の手段になっています。
6. コト消費・イミ消費への強い志向
単にモノを所有する「モノ消費」から商品やサービスを通じて得られる体験を重視した「コト消費」へと消費行動が変化しています。商品やサービスの機能に加えて社会的・文化的な価値に共感する「イミ消費」という概念も生まれました。
「気に入っているインフルエンサーを応援したいので、その人が紹介していた商品を買いました」という購買行動は、共感や応援という感情が購買動機になっている典型例です。ステータス消費ではなく、エクスペリエンス消費がキーワードとなります。
7. 多様性の尊重とコミュニティ重視
多様な考え方を持つ人と出会い、刺激をもらいながら生きていきたい(56.5%)と回答しており、個人の性別や人種、価値観、趣味、ファッションなどの違いを個性として受け入れて尊重する「多様性」を重視します。
特定のコンテンツを軸に形成される”界隈”というコミュニティの概念があり、同じものを好む者同士で自然と集まりコミュニティを形成しています。この界隈内での情報共有や相互承認が消費行動に大きく影響します。
8. サステナビリティ意識の複雑な実態
商品やサービスを選ぶ際の重要なポイントとして「サステナビリティ(環境配慮)」と答えたのは全体のわずか2.8%という調査結果があります。サステナビリティに関して「興味・関心がある」と回答した層は全体的に減少しており、一般的なイメージとは異なる実態が見えてきます。
ただし「わざわざエコな商品を探し、高くても購入する」人が少ないだけで、「環境によくない商品はそもそも選択肢から外す」という人がほとんどという調査もあり、サステナビリティは前提条件として捉えられている可能性があります。
9. デジタル決済とEC利用の日常化
Z世代はデジタルデバイスへの依存度が高く、QRコード決済などデジタル決済を好む傾向が顕著です。他の世代に比べてEC利用割合も高いという特徴があります。
特にファッションや美容関連商品はオンラインでの購入が多くなっています。ただし完全にオンラインのみではなく、ネットショッピングと実店舗を併用する傾向もあります。筆者が関わったアパレルブランドの調査でも「実店舗で試着してオンラインで最安値を探す」という行動が確認されました。
10. タイムパフォーマンス志向の効率重視
コストパフォーマンスに加えて、時間対効果の意味を持つ「タイムパフォーマンス」を重視するのも特徴です。Z世代は日常の中で一定の効率を求めており、冷凍食品やReady to Cook型商品、コンビニエンスストアの商品などを積極的に活用する食生活スタイルを持っています。
効率的に生活をしたいという意向が高く、特にZ世代ではその傾向が顕著です。情報過多の時代に育った彼らは、限られた時間で最大の価値を得ようとする姿勢が染み付いています。
Z世代の消費行動を理解する上で知っておくべきこと
Z世代の消費行動を理解する上で重要なのは、彼らを一枚岩として捉えないことです。Z世代をひとくくりにして捉えるのではなく、属性ごとの多様な価値観や意識の違いを考慮することが重要です。
17年間を子供の成長で比較すると、幼稚園児から大学生までの年齢差があり、ステレオタイプによって構築されたイメージ先行で消費を行う層をマーケターが想定すること自体も時代錯誤になりつつあります。
筆者が定性調査で向き合ってきたZ世代の生の声からも、同じZ世代でも10代後半と20代後半では価値観が大きく異なることが分かります。年齢、性別、居住地、ライフステージによって細かくセグメントした上で理解を深める必要があります。
マーケティング実務への示唆
マスマーケティング的な一方通行のアプローチではなく、”リアルな”Z世代を知り「共感」から始める双方向のコミュニケーションが重要です。企業側の都合で一方的にメッセージを押し付けても、Z世代には全く響きません。
誇張された表現や不十分な情報を嫌がる傾向があり、過剰な広告表示も信頼性を下げる要因になります。広告を閲覧・クリック・シェアしたくなる理由として、お得なキャンペーンや特典の明記(24.5%)、デザイン性の高さ・美しいビジュアル(22.0%)、知っているブランド・信頼できる企業の発信(21.0%)が上位を占めます。
筆者が設計支援したあるD2Cブランドでは、商品情報だけでなく開発ストーリーや使用者のリアルな声を丁寧に発信することで、Z世代からの支持を獲得しました。透明性と誠実さが信頼構築の鍵になります。
企業は正確なセグメンテーションとハイパーターゲティングを駆使して、各層に応じた戦略を展開することが求められます。一律のZ世代マーケティングではなく、細分化されたターゲットごとに最適化されたアプローチが必要です。
Z世代理解に有効な調査手法
Z世代の消費行動を深く理解するには、定量データだけでは不十分です。筆者はインタビュー調査やエスノグラフィー調査を組み合わせることで、数字の背景にある文脈や感情を読み解いています。
特に有効なのが、Z世代が実際にSNSで情報収集している様子を観察しながら思考を言語化してもらう手法です。インタビュールームで彼らのスマホ画面を共有してもらいながら、どのアカウントをフォローしているか、どのハッシュタグで検索するか、どの投稿に反応するかを見ていくと、定量調査では見えない行動の理由が明確になります。
デブリーフィングの場でクライアントと一緒に発言録を読み込みながら解釈を深めることで、Z世代の本質的なニーズに辿り着けます。
まとめ
Z世代の消費行動には、節約と贅沢の二極化、SNS中心の情報収集、口コミ重視、失敗回避志向、自分軸、コト消費・イミ消費、多様性尊重、サステナビリティ意識の複雑さ、デジタル決済の日常化、タイパ重視という10の明確な特徴があります。
これらの特徴を単なる知識として持つだけでなく、実際の調査設計や施策立案に活かすことが重要です。Z世代は今後数十年にわたって消費の中心を担う世代であり、彼らの理解なくして今後のマーケティング戦略は成立しません。
ステレオタイプに頼らず、データと生の声を基にした深い顧客理解を積み重ねることで、Z世代に響くマーケティングが実現できます。
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