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定性調査をAIで効率化|QDAソフト(NVivo・Atlas.ti)の実力と限界

定性調査をAIで効率化|QDAソフト(NVivo・Atlas.ti)の実力と限界

録音した2時間のインタビューが5本。文字起こしを開くだけで気が滅入り、そこからコードを付け、テーマにまとめる作業を思うと、キーボードに手が伸びません。
そんな夜に、AIがコーディングまで肩代わりしてくれるという触れ込みのQDAソフトは、ずいぶん心強く見えます。実際どこまで任せられて、どこから人の仕事が残るのか。NVivoとAtlas.tiを軸に、定性調査の現場目線で実力と限界を整理します。

QDAソフトのAIは、いま何をしてくれるのか

QDAソフトは定性データの分析を支える道具で、NVivoもAtlas.tiもここ数年でAI機能を一気に増やしました。両者に共通して使えるのは、おおむね次の4つです。

  • 音声や動画からの自動文字起こし
  • 本文を読んでコード候補を提案するAIコーディング
  • 長い文書や大量のコードを要約する機能
  • データに話しかけて答えを探す対話型の問い合わせ

2024年9月には、NVivoを手がけるLumiveroがAtlas.tiを買収し、両者は同じ傘の下に入りました。今後は機能の重なりや共通化が進むとみられます。
文字起こしと一次的なコード付けという、いちばん骨の折れる下ごしらえをAIが肩代わりしてくれる。ここは素直に大きな前進です。

ただし、どちらも本格的な専門ツールで、使いこなすまでには相応の学習が要ります。画面の構成もコードの管理も独自の作法があり、はじめの数日はAIより先に操作の壁と向き合うことになりがちです。無料で試せる範囲や導入費用も確かめてから選ぶと、あとで後悔しません。

NVivoとAtlas.tiで分かれる、AIコーディングの思想

同じAIコーディングでも、二つのソフトは発想が少し違います。Atlas.tiは「意図的AIコーディング」と呼ぶ機能で、調べたい問いを渡すと、それに沿ったコードをまとめて生成します。網羅性は高い反面、出てくるコードが多すぎて、後から間引く作業に時間を取られることがあります。
NVivoは、まず自分で関連する箇所を抜き出し、そこにAIがコードを当てていく流れを取りやすい設計です。AIが作るのはあくまでコードで、それをテーマへまとめ、名前を付け、束ね直す仕事は手元に残ります。

どちらが上という話ではありません。まだ問いが固まらず探索的に広げたいならAtlas.ti、問いを絞って深く掘りたいならNVivo。そんな向き不向きの差だと捉えると選びやすくなります。

AIに任せきると起きる、定性ならではの落とし穴

コード候補が一瞬で画面に並ぶ体験は気持ちよく、そのまま採用したくなります。危うさはここに潜んでいます。
AIは表面の言葉が似た発言をまとめるのは得意でも、なぜその人がそう言ったのかという背景までは読み取れません。皮肉や言い淀み、間に落ちた沈黙の意味は、文字の並びには表れないからです。

コードは全部AIが出してくれた。でも、どれが本当に大事なのかは、結局わからなかった。ツールを入れた現場で、そう漏らす方は少なくありません。

問いを渡して網羅的にコードを出させると、数百単位のコードが並ぶこともあります。一見すると分析が進んだ気になりますが、似た意味のコードが重複し、粒度もばらばらのままです。そこから使えるものだけを選び、束ね直す手間は、結局こちらに返ってきます。速く始められることと、速く終わることは別だと考えておいたほうがよいです。

数字の分析なら再現性そのものが武器になりますが、定性の価値は解釈の深さにあります。ここを外すと、速いだけで浅い報告書ができあがります。一人の何気ない一言から消費者インサイトにたどり着くには、AIの提案を一度疑い、原文に戻って読み直す時間がどうしても要ります。

役割を分ければ、速さと深さは両立できる

現実的な付き合い方は、AIに下ごしらえを任せ、判断は人が握ることです。線引きをこう決めておくと迷いません。

  • 文字起こしと一次コーディングはAIに任せ、時間を稼ぐ
  • 提案されたコードは必ず原文に戻って裏を取る
  • テーマの設計と取捨選択は、最後まで人が責任を持つ
  • 誰が読んでも判断の道筋を追える形で根拠を残す

AIが得意なのは量をさばくこと、人が担うのは意味を決めること。この線さえ守れば、QDAソフトのAIは頼れる相棒になります。
インタビューの場でモデレーターが肌で拾った空気を、分析でどう言葉に落とすか。そこまでが一続きの仕事だと考えると、AIは工程の一部を軽くする道具として腹落ちします。

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よくある質問

定性調査の分析はAIだけで完結できますか。

文字起こしやコード付けといった下ごしらえはAIで大きく時短できますが、分析そのものを丸ごと任せるのはおすすめしません。発言の裏にある背景や沈黙の意味を読み取り、どのテーマが重要かを決める部分は人の解釈が必要だからです。AIに量をさばいてもらい、意味づけは人が担う分担が現実的です。

NVivoとAtlas.tiはどちらを選べばよいですか。

問いがまだ固まらず、幅広く探索したい段階ならAtlas.tiが向いています。調べたい問いを渡すと網羅的にコードを生成してくれるためです。反対に問いを絞って深掘りしたいならNVivoが扱いやすく、関連箇所を抜き出してからコードを当てる流れを取りやすい設計になっています。目的と調査の段階で選ぶと迷いません。

AIコーディングを使うとき、気をつけることは何ですか。

提案されたコードをそのまま採用せず、必ず原文に戻って確かめることです。AIは言葉が似た発言をまとめるのは得意でも、その発言が出た文脈までは判断できません。また、なぜそのコードにしたのかという根拠を、後から誰でも追える形で残しておくと、分析の信頼性を保てます。

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この記事を書いた人

石崎健人
石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス 代表取締役

リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。

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出典:インタビュールーム株式会社(リサート)
https://researto.com/column/qualitative-research-ai-qda-software/

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