お客さまに「何が欲しいですか」と聞いても、本当に欲しいものは出てきません。言葉になる要望の、さらに奥にある、本人も気づいていない動機。それが消費者インサイトです。
ここを掴めると、商品も広告も、刺さり方が変わります。年間100件を超える調査で人の本音と向き合ってきた立場から、意味から見つけ方、活用までを整理します。
消費者インサイトとは
消費者インサイトとは、人が行動する裏にある、本人も明確には意識していない動機や本音のことです。
たとえば、高い化粧品を買う人が本当に求めているのは、成分そのものではなく、ちゃんと手をかけている自分への安心かもしれません。表に出る言葉ではなく、その奥にある気持ちを指します。マーケティングでは、この一点を見つけられるかどうかが、打ち手の質を分けます。
リサートでは、インサイトを「消費者の抑圧された潜在的な欲望」と定義しています。
人は、自分が本当に欲しいものを、うまく言葉にできません。たとえば、ある人がアップルの製品を選ぶ理由には、周りより少し上回っていたいという気持ちが混じっていることがあります。本人に尋ねれば、そんなことはないと答えるでしょう。けれど、意識のさらに奥では、そう動いている。インサイトとは、その本人も認めていない欲望のことです。
インサイトとニーズ・ウォンツの違い
よく混同されるのが、ニーズやウォンツとの違いです。
- ニーズ。困りごとや必要性。たとえば、喉が渇いた
- ウォンツ。それを満たす具体的な欲しいもの。たとえば、冷たいお茶が飲みたい
- インサイト。その奥にある、言葉にならない本音。たとえば、人前で落ち着いて見られたい
ニーズやウォンツは本人が言葉にできますが、インサイトは本人も気づいていないことが多い。
だからこそ、聞き方や見方に工夫が要ります。
なぜ消費者インサイトが重要か
商品やサービスがあふれる今、機能や価格だけでは選ばれにくくなりました。
似たような商品が並ぶなかで、お客さまの心の奥にある動機に応えられた商品が、選ばれます。インサイトは、その選ばれる理由をつくる起点です。競合がまだ気づいていない本音を先に掴めれば、それだけで差がつきます。
消費者インサイトの見つけ方
インサイトは、アンケートの集計からはなかなか出てきません。本人が言葉にできないからです。
掴むためによく使うのは、次のような方法です。
発言そのものより、その裏にある気持ちを読むこと。
ここが、インサイト発掘の核心です。
消費者インサイトを見つけるフレームワーク
手がかりとして、型を使う方法もあります。
インサイトをいくつかの切り口に分けて探すと、見落としが減ります。代表的な型は、7つの切り口で整理するフレームワークにまとめています。型はあくまで地図で、最後は対象者と向き合うなかで見つけるものです。
消費者インサイトとビッグデータ
インサイトは、定性調査で掘り当てるのが基本です。
実務の感覚で言うと、アンケートのような定量調査だけでインサイトまでたどり着くのは、なかなか難しいと感じます。数字は、何が起きているかは教えてくれても、なぜそうするのかまでは届きにくいからです。
ただ、例外もあります。ビッグデータの解析です。
ユーザーの行動を長い時間にわたって記録した時系列のデータがあれば、本人も語らない動機の手がかりが、行動の積み重ねから見えてくることがあります。何を言ったかではなく、何を続けているか。そこにインサイトが潜んでいることもあります。
消費者インサイトの活用事例
インサイトが商品や広告を変えた例を、二つ紹介します。
私が担当したある掃除用品では、使う人が本当に求めていたのは、汚れを落とすことそのものより、家族にきれいな家で過ごしてほしいという気持ちでした。機能ではなく、その背景にある願いに語りかけたことで、商品は強く支持されました。
もう一つは、エナジードリンクの調査です。
ターゲットの10代の男子学生に話を聞くと、彼らが本当に感じていたのは、単なる眠気覚ましではありませんでした。今これを飲めば目が冴えて徹夜できる、そうすれば、やらなきゃいけないことが何とかなるかもしれない。そんな、すがるような期待でした。
この発見は、広告のつくり方を変えました。
エナジードリンクだから、ただかっこよく見せれば売れる、というわけではありません。訴えるべきかっこよさは、効果の強さを感じさせる根拠としてのかっこよさでなければならない。そう整理できたことで、広告に起用する人選びの方向まで変わりました。
表向きの要望ではなく、奥にある動機に応える。
これが、インサイトを活かすということです。
インサイトが活きにくい場面もある
インサイトは万能ではありません。
たとえば、飲食品の商品開発では、インサイトの出番は限られます。プロダクトのコンセプトや、伝え方のコンセプトを考えるうえでは欠かせませんが、最後はおいしさがすべてを決めます。どれだけ鋭いインサイトを掴んでも、味が伴わなければ売れません。
インサイトが効く場面と、そうでない場面を見極めることも、使いこなす力のうちです。
消費者インサイトと顧客理解の違い
インサイトと近い言葉に、顧客理解があります。
顧客理解は、お客さまがどんな人で、どう考え、どう動くかを幅広く知ることです。インサイトは、その理解のなかから掘り当てる、行動を動かす一点の本音です。顧客理解という土台があってこそ、鋭いインサイトにたどり着けます。
消費者インサイトでよくある誤解
- アンケートの自由記述に、そのまま書いてあると思ってしまう
- 思いついた仮説を、そのままインサイトだと決めつけてしまう
- 一人の声を、全体の本音と取り違えてしまう
インサイトは、頭の中で当てるものではありません。
対象者の声から確かめながら、見つけていくものです。
「インサイト」という言葉の落とし穴
インサイトを出そう、インサイトをください。会議では、この言葉が軽はずみに飛び交います。とくに海外では、findings、つまり調査でわかったことくらいのニュアンスで insight と言うこともあります。
問題は、インサイトの定義が世の中で共通になっていないことです。ここから、企業のなかでさまざまなすれ違いが生まれます。
上層部が曖昧なまま「インサイトを持ってこい」と言うとき、それは結局、売れるアイデアや企画を出せ、という以上の意味を持ちません。
いっぽうリサーチャーにとって、インサイトはあくまでニーズの仮説です。それが売れるものとは限りません。そもそも、インサイトはそう簡単には見つからない。企業の思惑をいったん脇に置いて、消費者をまっすぐ観察し、問いを重ねた先に、ようやく顔を出します。
そして、インサイトがあれば必ず売れる、わけでもありません。
売れたものを後から振り返って、あれは良質なインサイトだったと言えるだけのことも多い。調査で導いたインサイトが、そのまま成功を約束するわけではない。この前提を共有しておくと、インサイトという言葉に振り回されずに済みます。
リサートの消費者インサイト発掘
リサートは、定性調査を軸に、消費者インサイトの発掘を支援しています。
インタビューの設計から進行、分析までを通して、表の言葉の奥にある動機を掘り当て、商品や広告の判断につながる形でお渡しします。マーケティングリサーチで人の本音を起点にしたいときは、まずは課題の整理からご相談ください。
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