ブランドパーセプションとCXが実は同義な3つの理由をマーケターが知るべき現場の真実

ブランドパーセプションとCXは、実務の現場では驚くほど重なり合っています。筆者は数多くのデプスインタビューフォーカスグループインタビューを実施してきましたが、顧客がブランドについて語る内容は常に体験に紐づいていました。理論上は別物とされるこの2つの概念が、なぜ現場では同義語として扱われるのか。その理由を紐解きます。

ブランドパーセプションとCXの定義を再確認する

まず用語の整理から始めましょう。ブランドパーセプションとは、顧客が商品やサービスに対して抱く認識や信念、そしてそれが引き起こす感情のことです。企業側が発信するメッセージではなく、顧客の頭の中に存在する主観的なイメージを指します。

一方でCX、つまりカスタマーエクスペリエンスは顧客体験や顧客体験価値と訳され、商品やサービスの機能や価格だけでなく、購入前から購入後までの全過程で顧客が得る体験を指します。認知から検討、購入、使用、アフターサポートまでの一連のプロセス全体が含まれています。

CXは2000年頃から注目され始めた概念で、合理的な価値だけでなく感情的な価値の訴求を重視するマーケティングの考え方です。機能や価格のコモディティ化が進む中で、差別化の手段として体験価値が重要視されるようになりました。

なぜブランドパーセプションとCXは同義なのか

顧客の認識は体験から形成される

ブランドパーセプションは、顧客体験が期待に応えなかったときに損なわれ、逆に優れた体験を提供することで向上します。筆者が実施したインタビュー調査では、ブランドに対する印象を尋ねると、顧客は必ず具体的な体験エピソードを語り始めます。

カスタマージャーニーを軸にブランド体験を設計する際、パーセプション、つまり顧客の認識は現状をブランドにとって望ましい状態に変化させるための起点となります。認識と体験は切り離せない関係にあり、体験を通じてブランドアイデンティティが再定義されていきます。

顧客がブランドから受け取る全体的な体験が、彼らの思考や感情に影響を与えます。Webサイトの使い勝手、スタッフの対応、商品の梱包状態、発送スピード、すべてがブランド認識の形成に寄与しています。

CXの積み重ねがブランド認識を決定する

優れた顧客体験が顧客基盤全体に広がることで、ブランドパーセプションは向上します。一度きりの接点ではなく、継続的な体験の蓄積が重要です。筆者がクライアント企業とカスタマージャーニーを設計する際も、各タッチポイントでの体験がブランド認識にどう寄与するかを必ず議論します。

ブランドエクスペリエンス戦略では、あらゆる接点で同じブランド価値を伝えることが重要で、商品、サービス、広告、店舗、Webサイト、顧客対応などすべてが同じブランドコンセプトに基づいて設計されるべきです。この一貫性こそが、強固なブランド認識を生み出します。

顧客満足は期待値によって決まり、期待よりも短い待ち時間を提供するとブランド認識は大幅に向上します。この事実は、CXの設計がいかにブランド認識に直結するかを示す好例です。

測定方法と改善アプローチが重なる

ブランドパーセプション調査は、顧客がブランドをどう認識し、どう関わるかを調べるもので、顧客の感情、態度、信念についての洞察を提供します。この調査手法は、CX改善のための調査と本質的に同じです。

筆者が実務で使うデブリーフィングのプロセスでも、ブランド認識とCXの改善点は常に同時に議論されます。フォーカスグループは、参加者8〜10名を集めてブランドについてのフィードバックや意見を得る古典的な手法で、ターゲットオーディエンスがブランドについてどう考えているかの定性的なフィードバックを得られます。この手法は、CX調査とブランド調査の両方に用いられています。

フォーカスグループとブランドパーセプション調査は、消費者からの直接的なフィードバックを提供する重要なツールで、そのフィードバックは市場の需要に合わせてビジネス戦略を適応させるために不可欠です。つまり、定性調査の文脈では両者は同じ目的を共有しています。

実務で見えてくる同義性の証拠

顧客は認識と体験を分けて語らない

筆者がモデレーターとして現場に立つとき、顧客に「このブランドについてどう思いますか」と尋ねると、返ってくるのは必ず体験ベースの回答です。抽象的なイメージだけを語る人はいません。

カスタマージャーニー上での価値とは、パーセプションやエモーション、アクションの変化のことであり、現状の認識や期待を自社ブランドに有利な認識や期待に変化させることが、ブランドが果たすべき役割です。この視点からも、認識の変化は体験設計と不可分であることが分かります。

こうした相互作用の質が、初期のブランド認識形成において決定的な役割を果たし、カスタマーエクスペリエンスマネジメントは約束を守り、これらの相互作用を有機的でありながらコントロール可能な方法で形作る枠組みを提供します。理論と実務が一致する瞬間です。

改善施策が同一のアクションを生む

CXのメリットにはブランドイメージの向上や競合他社との差別化、顧客自身による口コミでの宣伝などが挙げられます。つまり、CX向上施策は自動的にブランドパーセプション向上施策となります。

顧客と企業のすべての接点でCXの向上が図れれば、顧客は価格や機能以上の満足度を感じ、顧客ロイヤルティが向上し、口コミやSNSで自発的に商品やサービスを宣伝してくれるようになります。これはブランドパーセプションの向上そのものです。

筆者がクライアントに提案する施策は、「CX改善」とも「ブランド認識向上」とも呼べます。実際、プロジェクトの目標設定で両方の言葉が同時に使われることも珍しくありません。

デジタル時代が境界を消した

インターネットの普及により企業と顧客の関係性が変化し、オンラインマーケティングや広告が多くのB2CおよびB2B関係の最初のステップになったことで、顧客が初めて企業を体験する方法は無数に存在するようになりました。この環境変化が、ブランド認識と体験の境界を曖昧にしました。

多くの場合、顧客は直接接触する前にレビューを調べており、これらのエントリーポイントは過去に比べて研究や管理が難しく、初回の印象は短時間であったり伝統的なブランド広告の形式ではなかったりします。このため、体験の第一印象がそのままブランド認識になるのです。

インターネット上には商品の評価だけでなく、使い勝手、利用シーン、店の様子、接客、発送スピード、梱包状況など、商品やサービスに関連するさまざまなコメントが投稿されており、ブランドコンセプトと相反する体験をしたユーザーの厳しい評価が拡散されるケースもあります。体験の共有が瞬時に行われる時代では、CXとブランド認識は完全に一体化しています。

理論と実務のギャップをどう扱うか

学術的には区別される2つの概念

ブランド体験とカスタマーエクスペリエンスは密接に関連していますが異なる目的を果たし、ブランド体験は購入したことがない人も含めたオーディエンスが形成する全体的な印象と感情的つながりであり、カスタマーエクスペリエンスは実際の購入者が調査、購入、使用する過程で経験する生きた旅路です。理論的にはこのように区別されています。

ブランド体験は広告、広報、コンテンツマーケティング、ソーシャルメディア、企業価値、公的認識によって影響され、カスタマーエクスペリエンスは営業ミーティング、商品使用、カスタマーサービス、購入後のコミュニケーションといった直接的で個人的な相互作用から生まれます。チャネルの違いが理論上の境界を作っています。

実務者が知るべき本質

しかし実務では、この区別はほとんど意味を持ちません。ブランド体験という言葉に置き換えると、バイヤー、クライアント、社員などすべての関係者の行動や心理的プロセスを考慮する上で思考の幅を広げることができ、オンラインとオフライン両方のインタラクション、自社ブランドだけでなく競合ブランドとのやりとりも考慮の範囲となります。より包括的な視点が求められているのです。

スターバックスの事例では、コーヒーという商品だけでなく顧客体験を提供する戦略を打ち出し、サードプレイスという存在になることを掲げました。筆者がクライアントとペルソナを設計する際も、この統合的な視点が不可欠です。

CXプログラムはブランドがカスタマーパーセプションを活用する際に役立ち、深堀分析に何が求められるか、リソースをどこに投資すべきか、ブランド全体のパフォーマンスに最も影響を与えるものは何かを明らかにします。実務的には、この2つは同じ分析フレームワークの中で扱われています。

調査設計における実践的アプローチ

インタビューフローの組み立て方

筆者がインタビューフローを作成する際、ブランド認識を探る質問とCXを探る質問を明確に区別することはありません。「このブランドについて教えてください」という問いかけに対して、対象者は自然と体験を語り始めます。

ブランドエクスペリエンスは感覚的、感情的、認知的、行動的要素から構成され、これらの要素を戦略的に設計し統合的にマネジメントすることで、顧客にとって価値ある体験を提供できます。調査設計でもこの統合的視点が必要です。

実際のインタビュールームでは、対象者の語りから体験とブランド認識の両方を同時に捉えることができます。両者を分離しようとする試みは、むしろ対象者の自然な語りを妨げる結果になりかねません。

分析フェーズでの統合

発言録を作成し分析する段階でも、体験に関する語りとブランド認識に関する語りは区別できません。対象者が「このブランドは信頼できる」と述べるとき、その背景には必ず具体的な体験エピソードがあります。

ポジティブな顧客体験は顧客ロイヤルティの向上に直接つながり、一貫して品質を提供し顧客の価値観と一致するブランドは、忠実な顧客基盤を構築します。この因果関係を理解することが、調査結果を施策に落とし込む鍵となります。

示唆導出における一体性

調査から得られた示唆をクライアントに報告する際、筆者は「ブランド認識を改善するために、顧客体験のこの部分を変えるべきです」という形で提案します。両者は常にセットで議論されます。

ブランド体験はそのブランドの世界観や価値観を顧客が感じてもらうことであり、商品やサービスの機能性だけでなく、その背後にあるブランドのストーリーや価値観、文化などより深い部分も含めて設計し、さまざまな接点で一貫性のある体験を提供する必要があります。実務では、この統合的アプローチが当然のものとなっています。

マーケターが陥りがちな誤解

別物として扱おうとする罠

一部のマーケターは、ブランドパーセプションとCXを別々のKPIで管理しようとします。しかし筆者の経験上、これは非効率です。優れた顧客体験が、顧客が関わりたいと思う強いブランドを育て、ポジティブなブランド認識を強化し成長させることは、顧客の獲得、エンゲージメント、維持を続ける継続的なプロセスとなります。一体として管理すべきです。

ブランドパーセプションプログラムの最終目標はブランド価値とブランドエクイティを高めることであり、ブランドエクイティとは認知度のある名前を持つ商品が汎用品と比較して企業が得る付加価値のことで、購買決定に際して顧客がより自信と快適さを感じられるようにすることです。この目標は、CX向上の目標と完全に一致します。

施策の重複を恐れる必要はない

「ブランド施策とCX施策が重複している」という懸念を耳にすることがありますが、それは当然です。良質なブランドエクスペリエンスを得ることができれば、顧客はブランドに対して好印象や信頼感を抱くようになり、ブランドへのロイヤリティが高まることが期待できます。むしろ重複こそが正しい状態です。

マーケティングの権威であるフィリップ・コトラー氏は、顧客満足度、ロイヤルティ、顧客収益性といった指標が企業の業績に重大な影響を与えると述べています。これらの指標は、ブランド認識とCXの両方から生まれます。

概念の同義性を活かした戦略立案

統合的な指標設計

筆者がクライアント企業と指標を設計する際は、ブランド認識とCXを分けずに測定します。ブランド体験の指標にはブランド認知度、感情スコア、シェアオブボイス、コミュニティエンゲージメントが含まれ、カスタマーエクスペリエンスの指標には満足度スコア、ネットプロモータースコア、カスタマーエフォートスコア、リテンション率、解決時間が含まれます。両方の指標を組み合わせた設計が効果的です。

ブランドパーセプション調査は改善すべき領域を特定し、マーケティング活動を整合させ、顧客がブランドを体験する方法を改善し、最終的にビジネスの成長を促進します。この目的は、調査設計においてCX調査と完全に一致します。

一貫したメッセージング

倫理的実践やサステナビリティ目標に関するメッセージングは顧客体験に統合されるべきであり、これによってブランド認識を強化し信頼を構築でき、倫理とサステナビリティをブランド体験の領域から顧客体験の一部にすることができます。両者を統合する具体例です。

筆者が関わったプロジェクトでは、ブランドメッセージと各タッチポイントでの体験設計を同時に議論することで、より強固な戦略が生まれました。概念の同義性を前提とすることで、チーム内の認識も揃いやすくなります。

効率的なリソース配分

ビジネスが顧客からどう認識されているかを理解すれば、顧客ニーズにより適合した戦略を調整し、競合他社と差別化し、市場リーダーとして位置づけることができ、適切に管理されたブランド認識は現在の顧客基盤を維持するだけでなく、新規顧客を引き付け新市場に参入することを助けます。ブランドとCXを統合的に扱うことで、リソース配分の効率が上がります。

別々の予算、別々のチーム、別々の指標で管理するのではなく、統合されたアプローチを取ることで、より大きなインパクトを生み出せます。筆者のクライアント企業でも、この統合アプローチを採用した組織ほど成果が出ています。

まとめ

ブランドパーセプションとCXは、理論上は区別される概念ですが、実務レベルではほぼ同義として扱われています。顧客の認識は体験から形成され、体験の積み重ねがブランド認識を決定し、両者の測定方法と改善アプローチは重なり合っているからです。

デジタル時代の到来により、この2つの境界はさらに曖昧になりました。顧客は体験と認識を分けて語ることはなく、企業が取るべき施策も本質的には同一です。

筆者が顧客理解の現場で見てきた真実は、この2つを別物として扱おうとすることの非効率さでした。統合的に捉え、一体として設計し、まとめて改善することこそが、現代のマーケティング実務における正しいアプローチです。

概念の同義性を理解し活用することで、より効果的な戦略立案とリソース配分が可能になります。理論と実務のギャップを埋め、実態に即した施策を展開していきましょう。

この記事を書いた人

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。アドタイにてZ世代の誤解とリアル。「ビーリアルな、密着エスノ記」連載中。