顧客理解の「問い直し」から始めよう:「顧客を理解する」とはどういうこと?〜意外と誤解されている顧客理解について〜

はじめに:「顧客理解は重要」だけれども・・・のモヤモヤ

あなたはマーケティングをされている方でしょうか?

それとも、マーケティングリサーチに取り組まれている方でしょうか。

あるいは、そのどちらでもなく、例えばデザインや営業を担当されている方でしょうか。

いずれにしても、このコラムを読みに来られたということは、顧客理解に課題やモヤモヤをお持ちなのだと思います。

  • 「顧客理解のやり方がわからない」
  • 「顧客理解のためにリサーチをしたが手応えがない」
  • 「顧客理解の重要さが組織に浸透しない」

こうした話は、今でもよく耳にします。

顧客理解の活動を提案しても適当にあしらわれて終わったり、「この忙しいのに何を言ってるんだ」と怒られたり…。

私は調査会社などの支援側ではなく、事業会社側でキャリアを積み重ねてきましたので、特に事業会社の方々のこのような悩みなどには少しばかり覚えがあります。仲間と飲んで愚痴を言ったりしたものです。

昔も今も、顧客理解にまつわる難しさは変わらず続いているようです。

そんな皆さんの悩みを少しでも軽くしたいと思い、このコラムを書き始めました。

マーケティングリサーチャーとしての15年以上のキャリアから、皆さんの実際の業務に役に立つ視点をお伝えできればと思います。

なお、顧客理解はビジネスをする上ではどんな立場・職種でも大なり小なり必要ですが、特にいわゆるエンドユーザー向けの戦略・施策に取り組む方々にとって優先度の高いテーマです。

基本的には、そのような職種の方々の「現場感」に届くよう、連載コラムを書くことといたします。

よくある「顧客理解」についての悩み・課題

先述の通り、顧客理解についてよく聞く課題や悩みは、概ね以下の三つに大別できます。

  • 顧客理解のやり方がわからない・・・方法論の課題
  • 顧客理解のためにリサーチなどをしたが手応えがない・・・活用の仕方の課題
  • 顧客理解の重要さが組織に浸透しない・・・組織内での課題

一点目は、「誰にどういうリサーチをすればいいのか」、などの方法論です。

二点目は、「リサーチの分析や活用の仕方」に帰結します。
よくあるのが「リサーチ結果はわかったけれど、それで?」という状況ですね。成果につながらない感覚に陥ります。

三点目は「そもそも顧客理解を必要とされない」状況です。
建前では顧客理解の重要性が言及されつつ、実態として後回しになる状況と言えるでしょう。さすがに堂々と顧客理解不要論を唱える人に会ったことはありませんが、それゆえに、より対処が難しくなっている側面もあると思います。

この中で最も深刻なのは三点目で、私もさんざん悩まされました。一点目、二点目は少なくとも顧客理解に踏み出してはいますが、三点目はスタートラインに立ててすらいませんよね。

よって、このコラムでは三点目を解消するヒントに重点を当てたいと思います。

ただ、多くの場合、一点目や二点目の躓きは、三点目が解消されていないことが原因だったりします。顧客理解の必要性が組織内で共有されていなければ、正しい方法論も、活かし方も定まりません。

だから、このコラムでは三点目、つまり「なぜ顧客理解が必要なのか」をあらためて掘り下げるところから始めます。

ここが腑に落ちれば、自然と一点目・二点目の課題も整理されていきます。

今一度問い直そう:「顧客理解」はなぜ重要か?

それではあらためて、「顧客理解がなぜ重要か?」を考えてみましょう。

一見、自明のようでいて、実は組織内で言語化される機会が少ないテーマです。

ビジネスは、基本的に「製品やサービスをポジティブな気持ちで買い続けていただく」ことで成立します。

買い続けていただかないと売上・利益が発生せず、ビジネスを続けられません。そして、買い続けてもらうには、「買ってよかった」というポジティブな気持ちになってもらう必要があります。それは、ときに新規顧客を呼ぶ力にもなります。

製品やサービスの売り手側は、そのポジティブな気持ちを導く要因を理解しておく必要があります。そのための手段としてアンケートインタビュー行動観察などの調査で様々な情報を収集するのです。

ここで、少し身近な例で考えてみましょう(この先も「身近な例で考える」ことを頻繁にやっていきます)。

好きな相手のためにプレゼントを選ぶ場面を思い浮かべてください。
まだ交際には至っておらず、自分のことを好きになってもらいたい。
あなたはそんな状況におかれています。

プレゼントを選ぶために、まずやること。

それは相手の情報を集めることではないでしょうか。

本人と過去に交わした会話や、共通の友人から聞いたお話。あるいは、本人を観察することで得られる情報も貴重です。

そのような「データ」に基づき、「◯◯をプレゼントすれば喜んでくれるだろう」と仮説を立てて選択・購入すると思います。

そのような情報抜きでプレゼントを購入したら、どうなるでしょうか?

運よく(結果的に)相手が喜ぶ可能性はありますが、それは限りなく低くなるでしょう。

あなたの独りよがりが表れたプレゼントになっており、関係性をむしろ悪化させる可能性すらあります。

実際にこのような経験をされた方は、そのときの相手の微妙な顔を思い出してください。

ビジネスに置き換えて考えれば、顧客理解が必要になるのは自明ですよね。

ここでひとつ重要なのは、先述の通り組織内では「顧客理解が大事」という前提が自明のこととして扱われるため、深く問い直される機会が少ないという点です。

少なくとも私はあまり見たことがありません。社内では、建前上それに反論する人もいないので、ますます問い直されることが少なくなると思います。

しかし、自明と思っていることが本当に自明であるとは限りません。むしろ、社内ではひとりひとりバラバラなことを考えており、実は自明から程遠かった…ということはよくあります。

それは「顧客理解が大事」ということにも当てはまります。

だからこそ、今一度「そもそも顧客理解とは何か?」を問い直す必要があります。

顧客理解を進め、浸透させていくのに大事なことは、まず「問い直す」ことです。

定義し直そう:顧客・消費者・生活者とは?

本題に入る前に、顧客理解をより正確に掴むために必要な、言葉の整理をしておきます。

「顧客理解」以外に、「消費者理解」や「生活者理解」という似た言葉があります。

「顧客」「消費者」「生活者」は、概ね以下のように区別されます。

  • 顧客:自社製品・サービスの購入者
  • 消費者:購入者に限らず、購入・利用するかもしれない世の中一般の人たちの総称
  • 生活者:消費者を購入・利用側面だけでなく、生活全般から捉え直したときの総称

顧客→消費者→生活者、の順番で意味が広くなりますね。

このコラムでは「顧客理解」という言葉で統一しますが、これは「自社商品・サービスの購入者」が最もイメージしやすいと思われるためです。

内容自体は、「顧客」を「消費者」「生活者」と読み替えていただいても問題ありません。

このコラムで重要なのはそちらではなく「理解」の方です。

次回予告:「顧客を理解する」とはどういうこと?〜意外と誤解されている顧客理解について〜

「そもそも顧客理解とは何か?」という、当たり前すぎて問い直しをされない、それゆえに誤解されやすいテーマに踏み込んでいきます。

焦点となるのは「理解とはどういう状態なのか?」という問いです。

これがクリアになるだけで、顧客理解の浸透させ易さが驚くほど変わります。

当たり前すぎて、わざわざ読む必要があるか疑問に思う方もいると思います。

しかし、「一見、当たり前に見えること」が、実は当たり前ではなかった。

そんな気づきによって、日々のモヤモヤが急に整理される経験をしたことがある方もいるでしょう。

顧客理解もまさに、そのような気づきの積み重ねです。

難しい理論は扱いません。どうぞ気楽な気持ちで読み進めていただければと思います。

一緒に、顧客理解の土台から整えていきましょう。

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この記事の監修者

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。アドタイにてZ世代の誤解とリアル。「ビーリアルな、密着エスノ記」連載中。

この記事を書いた人

山本  寛 | マーケティング・リサーチャー
リサート所属。1975年生まれ。新卒入社の株式会社オリエンタルランドで2009年よりマーケティングリサーチャーのキャリアを歩み始める。その後、人材紹介のパーソルキャリア株式会社、株式会社ディー・エヌ・エーにリサーチャーの専門職として在籍。また、2020年から個人としても複数社を支援中。2025年より桜美林大学非常勤講師。事業会社側のリサーチャーとして、アンケート調査・インタビュー調査・観察調査など複数の手法を組み合わせて顧客インサイトを見出している。