なぜ顧客は欲しいものを言えないのか?梅澤理論で紐解く3つの理由と未充足ニーズ発見法

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はじめに

マーケティングリサーチの現場で繰り返される問いがあります。顧客に欲しいものを聞けば、売れる商品が作れるのではないか、と。しかし実際には、顧客の要望通りに開発した商品が市場で失敗する事例が後を絶ちません。

この矛盾を説明する理論が、梅澤伸嘉氏が体系化した未充足ニーズ理論です。1969年に梅澤伸嘉によって創始されたキーニーズ法は、未充足の強いニーズに応える商品コンセプトをシステマティックに開発する発想法として知られ、カビキラーやジャバなど30年以上売れ続けるヒット商品を数多く生み出してきました。

筆者がこの理論に注目するのは、定性調査の実務において日々直面する課題への明快な回答を提示しているためです。なぜインタビュールームで顧客は本当の欲求を語れないのか。その構造的な理由を理解することで、調査設計と分析の精度は飛躍的に向上します。

未充足ニーズとは何か

未充足ニーズは潜在ニーズの一種で、その言葉のとおり、いまだ満たされていないニーズです。顧客には「○○になりたい」「○○をしたい」という欲求があるにもかかわらず、それを充足する手段が現状存在しないか、存在していても問題を抱えている状態を指します。

梅澤理論において重要なのは、「未充足ニーズ理論」は数々のコンセプトテストと市場での成績との相関研究をもとに1986年に発表された「どのようなニーズに応えたら売れるか」を説明する理論であり、単なる概念ではなく実証データに基づく点です。

「行為ニーズ」の「したい、やりたい」の度合の強さと、「でも現状ではできない」という満たされない度合がともに高い、「未充足の強いニーズ」に商品が応えたとき、消費者はその商品を「欲しい」と思うのです。

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顧客が欲しいものを言えない3つの理由

理由1:ニーズの深層構造が言語化を妨げる

梅澤理論の核心は、ニーズを3層構造で捉える点にあります。消費者ニーズの深層には、普遍的な「基本(be)ニーズ」(人生ニーズ)があって、それを満たすために「行為ニーズ(do)」(生活ニーズ)が発生し、そのニーズが商品やサービスに触れると「欲しい」という「対象・所有(have)ニーズ」をもたらすのです。

各層には、複数層のニーズがあり、それぞれが「目的」⇔「手段」という関係で繋がっています。顧客が語るのは最も表層的なHaveニーズであり、その背後にあるDoニーズやBeニーズは本人も意識していないことが大半です。

筆者の経験では、インタビューで「どんな商品が欲しいですか」と尋ねると、顧客は既知の商品カテゴリーの範囲内でしか答えられません。これはお客さんは知っているもの・想像できるものの範疇からしか欲しいものは選べないためです。

理由2:発言と行動の乖離が真のニーズを隠す

ニーズとは「満足を得るために行動を駆り立てる力・動因機能」であり、「〇〇したい」と口で言ったとしても、それが、特に大きな障害もないのに実際に行動にあらわれていなかったとしたら、それは口先だけでニーズではない可能性があります。

この発言と行動の乖離は、マーケティングの現場で頻繁に観察されます。マクドナルドの顧客向けにアンケートをとると必ずといっていいほど、ヘルシーな野菜系のメニューが欲しいという声が多数出てくるそうです。ところが、それをもとに商品化しても、なかなか売れないという事例は有名です。

顧客の発言には、社会的望ましさバイアスや建前が混入します。定性調査においては、発言そのものよりも行動の観察と、その行動に費やされている時間・費用・労力を精査することが真のニーズ把握につながります。

理由3:未充足ニーズの多くは潜在化している

現在、未充足ニーズの多くは潜在している。すなわち、その商品が登場する前に「こんな商品が欲しい」とは思われていないのです。何もないところに、コンセプト(イラスト付き説明文)という形で提示されれば、欲しい、欲しくないというニーズが明確になり、潜在していたニーズを顕在化できるわけです。

顕在ニーズは、「生活者本人が気づいているニーズ」です。生活者ご本人の口から語られるものであり、その問題について 1)認識している、2)記憶している、3)言語化できる、という条件をすべてクリアしたニーズに過ぎません。氷山に例えれば、顕在ニーズは水面上のわずかな部分であり、水面下には膨大な潜在ニーズが存在しています。

筆者が携わった調査でも、顧客は現状の不満を語ることはできても、それを解決する具体的な手段までは想像できないケースがほとんどでした。「顧客に何が欲しいかを聞いてそれを与えようとしてもダメだ。それが完成した頃には、彼らはきっとまた別のものを欲しがる」というジョブズの言葉が示すように、顧客に問うべきは「何が欲しいか」ではなく「どんなニーズを抱えているか」なのです。

未充足ニーズを発見する実践手法

CAS分析による問題の反転

CASはConcept Assessment Studyの略です。生活ニーズと行動から問題を見つけ出して未充足ニーズを探索する手法であり、梅澤理論の中核を成す調査技法です。

CAS分析は生活ニーズ(Q1)、そのニーズを満たすための行動(Q2)、その行動における問題(But)を基に問題や行動を反転させて未充足ニーズを探索します。たとえばトニックシャンプーの開発では、「頭を洗いたい→女性用シャンプーや石鹸で頭を洗う→気分まではスッキリしない」という流れから、「気分もスッキリ頭を洗いたい」という未充足ニーズを見出し、当時存在しなかった男性用シャンプーを誕生させました。

この手法の本質は、問題を発見したら単にそれを解決するのではなく、問題を反転させて新たなベネフィットを創造する点にあります。

「したいけどできない」「仕方なくやっている」を探る

化粧や買い物、調理など具体的な行動やシチュエーションを絞ったうえで、次の2つの問いに自由回答で答えてもらう方法が実務では有効です。「したいけどできていないことはありますか?」「本当はやりたくないけれど、仕方なくやっていることはありますか?」という問いかけです。

手段はあるけれど問題があって、「仕方なくやっていること」は何かを発見できれば、その問題を反転させ、仕方なくやっているものを解消する商品やサービスを提供できれば、生活者の未充足ニーズに応えることができるのです。

定性調査では、顧客の日常行動を時系列で詳細に聞き取りながら、各行動における微細な不満や妥協点を拾い上げていきます。この作業には熟練したモデレーターのスキルが求められます。

行動観察とニーズ構造の推測

お客様は自分が知っている事しか発言しませんので、発言録からだけでは商品コンセプトのヒントは得られません。お客様の発言だけでなく、行動や状況などから推測されたことも情報として、その構造を整理しながらニーズを発見する方法が必要です。

行動した結果、満足や不満が生じているかどうかもニーズの存在や種類を検証する手掛かりとなります。特にそこに費用や時間、手間暇がかけられているのかどうか、ということがニーズの存在や強さの判断基準となります。

エスノグラフィーや行動観察調査を活用し、顧客が無意識に行っている工夫や代替行動に注目することで、発言では得られない洞察が得られます。

未充足ニーズを活用した成功事例

塗るつけまつげの事例

塗るつけまつげは、「目を大きく見せたい」というDOニーズに応える商品です。しかし、まつ毛エクステやつけまつげなど、このDOニーズを充足する商品やサービスはすでに存在していました。

ただし、つけまつげをしてもいつの間にかズレてしまうし、面倒くさい。まつ毛エクステにしても、定期的に通わなければいけないし、それなりにお金もかかるという問題が存在していました。

目を大きく見せるために、つけまつげを「仕方なく」使っている。そんな未充足ニーズを発見し、ズレない、それでいて手軽な方法を提供する。それが塗るつけまつげのベネフィットです。この事例は、既存市場に手段が存在していても、そこに残る問題点を発見し解消することで新市場を創造できることを示しています。

GOPAN開発の裏側

お米でパンが作れる「GOPAN」もその一つです。開発者で元三洋電機執行役員の竹内創成さんは長年、梅澤理論を学び、その手法によって「GOPAN」を開発しました。

GOPANは単にホームベーカリーを改良したのではなく、「米を主食としながらパン食も楽しみたい」という潜在的なDoニーズを発見し、従来は不可能だった「米からパンを焼く」という新カテゴリーを創出しました。発売当初、商品を発表しただけで問い合わせが殺到するなど大ヒット商品となったのは、未充足ニーズに的確に応えた結果です。

定性調査における未充足ニーズ発見のポイント

もっとも適しているのが、定性調査です。「したいけどできないこと」「仕方なくやっていること」を探るには、インタビューを通じて、話を聞き取りながら深堀りしていくのがいちばんです。

筆者が実務で重視しているのは、インタビューフローの設計段階でHaveニーズへの直接的な質問を避けることです。代わりに、具体的な生活シーンや行動の詳細を時系列で語ってもらい、各場面での感情や判断基準を丁寧に聞き取ります。

上位ニーズから下位ニーズへは、『そのためには?』をキーワードに、下位ニーズから上位ニーズを推測していく時には、『主としてどうしたいため?』をキーワードにすると、ニーズを推測しやすくなります。モデレーターはこの問いかけを繰り返しながら、ニーズの深層構造を紐解いていきます。

デブリーフィングの場では、発言内容だけでなく、行動の文脈や矛盾点に注目し、チーム全体で未充足ニーズの仮説を構築します。発言録を精読する際も、表面的な要望ではなく、その背後にある生活上の問題や葛藤を読み取る姿勢が求められます。

まとめ

顧客が欲しいものを言えない理由は、ニーズの深層構造、発言と行動の乖離、そして未充足ニーズの潜在化という3つの構造的要因に起因します。梅澤理論が示す未充足ニーズの概念は、これらを統合的に説明する優れたフレームワークです。

実務においては、「どんな商品が欲しいですか」という問いを封印し、顧客の日常行動と問題点を丁寧に観察・聴取することから始めます。CAS分析の枠組みを用いて生活ニーズ・行動・問題を構造化し、問題を反転させることで新たなベネフィットを創造します。

新市場創造型商品の開発を成功させるためには、調査などで得られた情報から仮説的に「未充足の強いニーズ」を「創造」しなければならないのです。顧客の声を額面通りに受け取るのではなく、その奥にある真のニーズを推測し創造する。この姿勢こそが、インタビュー調査を成功に導く鍵となります。

よくある質問

Q.なぜ顧客は欲しいものを言えないのかとは何ですか?初心者にもわかるように教えてください。
A.なぜ顧客は欲しいものを言えないのかとは、マーケティングリサーチの文脈で顧客理解や戦略立案のために活用される概念・手法です。詳しくは本記事で実務的な視点から解説しています。
Q.なぜ顧客は欲しいものを言えないのかを実務で活用する際に最も重要なポイントは何ですか?
A.最も重要なのは、目的を明確にしてから取り組むことです。なぜ顧客は欲しいものを言えないのかは手法自体が目的化しやすいため、何を明らかにしたいのか、その結果をどう活用するのかを事前に設計することが成功の鍵です。
Q.なぜ顧客は欲しいものを言えないのかにかかる費用や期間の目安はどのくらいですか?
A.規模や目的によって大きく異なりますが、一般的なマーケティングリサーチでは数十万円〜数百万円、期間は2週間〜2ヶ月程度が目安です。
Q.なぜ顧客は欲しいものを言えないのかでよくある失敗パターンを教えてください。
A.よくある失敗は、データの収集だけで満足してしまい、分析と施策への落とし込みが不十分になることです。またサンプルの偏りや質問設計の不備により、信頼性の低い結果を得てしまうケースも少なくありません。
Q.なぜ顧客は欲しいものを言えないのかについて専門家に相談したい場合はどうすればよいですか?
A.リサート(Researto)では、なぜ顧客は欲しいものを言えないのかに関する調査設計から分析、レポーティングまで一貫してサポートしています。初回のご相談は無料です。

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