UI/UXリサーチとは?知らないと損する7つの手法と失敗しない導入ステップ

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UI/UXリサーチとは何を指すのか

UI/UXリサーチとは、ユーザーの行動やその行動に至る心理、感情を調査することです。製品やサービスのユーザー体験を向上させるため、実際のユーザーがどのように感じ、どのように行動するのかを明らかにします。

筆者がプロジェクトに関わる中で繰り返し目にするのは、企業側の思い込みとユーザーの実態の間にある大きなギャップです。開発者が便利だと考えた機能が、実際のユーザーには気づかれていない。デザイナーが美しいと感じるレイアウトが、ユーザーにとっては目的の情報にたどり着けない原因になっている。こうした溝を埋めるのが、UI/UXリサーチの役割です。

UI/UXリサーチとは、ユーザー視点で物事を捉えるために、ユーザビリティやユーザー体験におけるニーズを調査することです。UXリサーチの専門家は、主にUXリサーチャーと呼ばれます。心理学や認知科学の知見を活かし、ユーザーと接する際には開発側のバイアスや固定観念を含まないように調査を進めます。

なぜ今UI/UXリサーチが重要視されるのか

デジタルサービスの競争が激化する中、機能の多さや技術力だけでは差別化が難しくなりました。ユーザーは使いやすさや心地よい体験を求めています。近年ではUXリサーチを専門とする職種を用意する企業も増えているなど、その重要性に注目が集まっています。

UXリサーチは定性的なアプローチでユーザー起点による製品・サービスの評価を実施します。ユーザーのニーズとのズレを減らすことで、開発のやり直しを防ぎ、リリース後の満足度を高めます。

適切なUXリサーチを取り入れることで、より迅速な立ち上げ・プロトタイプ制作が可能になります。定量リサーチと比較して素早くユーザーニーズを収集できるため、結果としてプロトタイプを開発するまでのスピード感を高めることができます。

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UI/UXリサーチで明らかにできる3つのこと

UI/UXリサーチを通じて得られる知見は、大きく3つに分けられます。

ユーザーの行動パターンと操作の実態

ユーザーがどこをクリックし、どこで迷い、どこで離脱するのか。ユーザーにプロダクトを操作してもらい、その行動や発言を通してユーザー心理とWebサイト/アプリの課題を発見する手法です。ユーザビリティテストや行動観察調査によって、設計者の想定と実際の使われ方のギャップが見えてきます。

ユーザーの感情と価値観

ユーザーや顧客が何を求めているのかを明確にして、それに対してどうするべきか検討を行います。顕在ニーズだけでなく、潜在ニーズを引き出すことで、ユーザー自身も気づいていなかった課題や期待が明らかになります。デプスインタビューフォーカスグループインタビューを通じて、数値では表せない感情の動きを捉えます。

利用シーンと環境の影響

ユーザーはどのような状況で製品を使うのか。ユーザーに普段通りの方法でサービスを利用してもらい、ユーザー利用の実態を知ることで、想定された利用方法との違いから新しい課題を見つけられる可能性があります。エスノグラフィー調査によって、実際の利用環境や文脈を理解します。

UI/UXリサーチの代表的な7つの手法

UXリサーチの手法は、定量調査と定性調査に分けられます。また、探索型リサーチと検証型リサーチにも分けられます。目的に応じて適切な手法を選ぶことが、成果につながる鍵です。

定性調査の手法

定性調査とは、ユーザーの言葉や行動などの情報を得ることを目的とした調査手法です。背景や意識を通して価値観などの心理的側面を探ることができます。

ユーザーインタビューとは、ユーザーに質問を投げかけ、その回答や会話の中から気づきを得る手法です。1対1で深掘りするデプスインタビューや、共通属性を持つユーザーから座談会形式で話を聞くフォーカスグループインタビューがあります。アンケートとの大きな違いは、ユーザーからの回答に応じて柔軟に質問を変更しながら調査を進められる点です。

ユーザーにタスクを提示した上で、製品やサービスのプロトタイプや実物を使用してもらい、その実行過程を観察します。ユーザビリティテストでは、UI上のどの部分に問題があるのか、なぜその問題が起きたのかを詳細に把握できます。思考発話法を用いることで、ユーザーが考えていることを話しながら操作してもらい、より深い理解が得られます。

ヒューリスティック分析は、UI/UXの専門家が経験則からユーザビリティを評価する定性調査手法です。ヤコブ・ニールセン博士提唱のユーザビリティに関する10のヒューリスティクスなどの分析指標をもとに実施します。専門家の確保ができればすぐに実施できる点がメリットです。

定量調査の手法

定量調査は数値によって結果を表し、統計学的に分析します。ユーザーの商品やサービスの利用状況やイメージ評価などの実態把握に向いています。

アンケート調査は、はい/いいえ、もしくは選択肢から選べる質問と、一部自由記入を必要とする質問で構成されており、様々な方法で対象者から回答を収集します。大人数のデータを収集し、全体の傾向を把握するのに適しています。

アクセス解析は、Googleアナリティクスなどを用いてWebサイトにユーザーがいつ、どれくらい訪問し、どう遷移しているかのデータを分析する手法です。アクセス解析で得られるのは定量的な事実情報のみなので、単体ではUXリサーチとしては不十分な場合もあります。事実情報をもとに、その理由や背景を定性調査で探ることで、より信頼性の高いデータを得ることができます。

ABテストとは、WEBマーケティングにおける手法の1つで、Webサイトや広告の表示を2つ用意し、AパターンとBパターンではどちらがよいかを比べる調査手法です。アクセス数やコンバージョン率などのデータを比較し、より効果的なデザインや文言を検証します。

定性と定量を組み合わせる理由

定性調査では対象者の人数が少なく、定量調査では情報の深堀ができません。UXリサーチは、2つのデメリットを補うために、組み合わせて実施することが有効です。先に定性調査で顧客の心理や傾向を把握し、定量調査で仮説を検証する流れが一般的です。定量・定性の互いの制約を知っておくことはとても大事です。ログではここまでしか分からない、ここから先はアンケートで聞くべきだと切り分けることが重要です。

UXリサーチャーの役割と業務の流れ

お客さまが何を求めているかを明らかにして、それに対して自分たちはどのような形で実現すべきかの解へとファシリテートする役割です。UXリサーチャーだけで全て出来るわけではないため、チームとしてどうこの問いに答えていくか、サービス開発のプロセスデザインをすることも重要です。

調査企画の設計

事業課題やプロジェクト背景を整理し、何を明らかにしたいのかという問いを設定し、そのために適切なリサーチ手法を選びます。ここはあまり語られないことが多いですが、知識や経験が求められ、実は最も難しいところです。この調査は何を目的にしているか、誰に対して行うか、何を解決すべきかなどの調査内容を整理します。

仮説探索と検証

リサーチを通してお客さまは何を求めているのかという仮説を探索し、その結果を分析し次に検証すべき仮説を整理します。仮説の確からしさをリサーチで検証し、その結果を分析し解釈や考察を加えて事業の意思決定に繋げます。

よくUXリサーチャーというと、ユーザビリティテストをやる人だと想起されるようですが、実際にはもっと幅広いリサーチ手法を使っています。エスノグラフィ調査や、アンケート調査など定性から定量までアプローチも多岐にわたります。カスタマーサポートの応対や店舗でのオペレーションなどもユーザーエクスペリエンスの重要な要素です。

失敗しないUI/UXリサーチの導入ステップ

UI/UXリサーチを実務に活かすには、段階を踏んだ進め方が必要です。

目的と調査対象の明確化

調査の目的を具体的に設定することが重要です。ユーザー理解を深めるといった漠然とした目標ではなく、新機能Aの使いやすさを評価する、利用時の課題を特定するなど、具体的な目標を定めます。明確な目的があることで、適切な調査手法の選択や質問項目の設計がスムーズになります。

調査対象となるユーザーの選定も重要です。ペルソナを設定し、実際のユーザー像に近い人を集めることで、より実態に即した結果が得られます。

適切な手法の選択

開発のフェーズに応じて、探索型リサーチと検証型リサーチのどちらが適切かを考えます。一般的には、企画段階ではアイデアの創出のために探索型リサーチ、開発中はプロトタイプの評価のために検証型リサーチが実施されます。リリース後は、現行製品・サービスの評価のために検証型リサーチ、次製品・サービス開発に向けた探索型リサーチと、検証型と探索型のどちらも実施されます。

分析時に使用する調査結果が数値かどうかによって、定量調査と定性調査のどちらが適切かを考えます。統計学的な側面から定量的に分析したい場合には定量調査が適しており、心理学的な側面などから質的に分析したい場合には定性調査が適しています。

調査の実施とデータ分析

調査を実施する際は、ユーザーにとって自然な状況で行えるよう心掛けます。仮説を肯定するためにリサーチが誘導的になってしまうと、正しい結果が得られません。先入観や信念が強すぎる場合も、仮説を支持する情報ばかりを集めて、都合の悪い意見を排除してしまう傾向があるため、注意が必要です。

収集したデータを効果的に分析し、実用的な知見として活用することが重要です。定量データは統計的な処理を行い、傾向や相関関係を明らかにします。定性データは、発言や行動を体系的に整理し、背景にある本質的な課題を抽出します。分析結果は、チーム内で共有しやすい形式にまとめ、具体的な改善アクションにつなげていきます。

改善策の立案と実行

リサーチが十分に行われていると、仮説通りに施策を実施できる可能性が高まります。仮説に沿わない結果が得られた場合は分析から再び進めましょう。UXリサーチを通してより良いプロダクトを素早く生み出すためには、リサーチを元に仮説を立て、施策を行い、改善につなげていくことが必要です。

実務でよくある3つの失敗と対処法

調査対象者の選定ミス

呼ぶお客さまの層を間違えてしまうと、その後どれだけ良いインタビューをしても全て無駄になってしまいます。ターゲットユーザーの属性や利用頻度を明確にし、適切な対象者を集めることが重要です。

バイアスの混入

定性調査では仮説1と仮説2の生徒がよく目につきました。しかし、やはりそういう生徒はほとんどいないという結論は変わりませんでした。定性調査には、バイアスがつきものです。定性調査で生成した仮説は定量調査でボリュームを確認することが重要です。

調査結果の活用不足

大切なのはリサーチの完了ではなく、プロジェクトに活用することがゴールであることを意識して取り組むことです。UXリサーチによって得られたユーザーのインサイトに対して、プロダクトに関わる人全てが当事者意識をつことのできる環境の設計が重要になります。

成功に導いた3つの実践事例

メルペイの定量×定性の補完的アプローチ

メルペイではmaruhadakaPJという取り組みを行い、お客さまのインサイトを丸裸にするという目的で定量と定性を使った補完的アプローチを用いています。UXリサーチャーとデータアナリストが協働し、データ分析から課題感を共有してスタートし、その課題をもとにUXリサーチャーがリサーチ企画を作成します。ログでは取り切れないようなところをアンケートで調べ、定量・定性の互いの制約を理解しながら進めています。

NTTドコモのユーザビリティテスト活用

NTTドコモ様が提供する、位置情報検索サービスイマドコサーチについて、新機能の使い勝手や、改善点をみつけるためのUXリサーチをおこないました。実際の利用者にユーザビリティテストを実施することで、課題の発見がスムーズになり、プロ目線で診断した改善方法を提案できました。

ジンズホールディングスのUX改善

顧客満足度向上とオンラインとオフラインの融合による顧客体験向上の実現という課題を抱えていました。顧客や経営層へのインタビューを通じて課題を抽出し、ペルソナ設定やカスタマージャーニーマップ作成を通して体験コンセプトを設計しました。ダッシュボード型のトップページへの変更や、直感的なタブナビゲーションなど、ユーザーが欲しい情報へとスムーズに導く情報設計を施しました。

UI/UXリサーチを始める前に押さえるべきこと

UI/UXリサーチは、ユーザーの行動と心理を深く理解し、製品やサービスの改善に活かす手法です。定性調査と定量調査を組み合わせることで、より確かな示唆が得られます。

重要なのは、調査の目的を明確にし、適切な手法を選び、得られた結果を確実に改善につなげることです。定性調査定量調査の両方の特性を理解し、プロジェクトの段階に応じて使い分けることが求められます。

お客さまがこう言ってただけでなく、裏付けとなる定量調査と定量データがしっかりあるからこそ、UXリサーチャーがプロダクトの意思決定に大きな影響を与えています。鵜呑みにするのではなく、それって本当にそうなんだっけと疑問に感じた部分も同時に伝えなければなりません。

UI/UXリサーチは一度実施して終わりではなく、継続的な改善のサイクルに組み込むことで、真の価値を発揮します。ユーザーの声に耳を傾け、データに基づいた意思決定を行うことが、競争力のある製品やサービスを生み出す鍵となります。

よくある質問

Q.UI/UXリサーチ手法とは何ですか?初心者にもわかるように教えてください。
A.UI/UXリサーチ手法とは、UI/UXリサーチに関連する概念・手法です。マーケティングリサーチの文脈では、顧客理解や戦略立案のために活用されます。詳しくは本記事の各セクションで実務的な視点から解説しています。
Q.UI/UXリサーチ手法を実務で活用する際に最も重要なポイントは何ですか?
A.最も重要なのは、目的を明確にしてから取り組むことです。UI/UXリサーチ手法は手法自体が目的化しやすいため、何を明らかにしたいのか、その結果をどう活用するのかを事前に設計することが成功の鍵です。本記事では具体的な設計方法と注意点を解説しています。
Q.UI/UXリサーチ手法にかかる費用や期間の目安はどのくらいですか?
A.規模や目的によって大きく異なりますが、一般的なマーケティングリサーチでは数十万円〜数百万円、期間は2週間〜2ヶ月程度が目安です。自社で実施する場合はツール費用のみで済むこともありますが、専門性が求められる場合は調査会社への依頼をおすすめします。
Q.UI/UXリサーチ手法でよくある失敗パターンを教えてください。
A.よくある失敗は、データの収集だけで満足してしまい、分析と施策への落とし込みが不十分になることです。また、サンプルの偏りや質問設計の不備により、信頼性の低い結果を得てしまうケースも少なくありません。本記事で紹介している手順に沿って進めることで、こうした失敗を防げます。
Q.UI/UXリサーチ手法について専門家に相談したい場合はどうすればよいですか?
A.リサート(Researto)では、UI/UXリサーチ手法に関する調査設計から分析、レポーティングまで一貫してサポートしています。初回のご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせページからご連絡ください。経験豊富なリサーチャーが最適な調査プランをご提案します。

この記事を書いた人

石崎健人

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。

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