アンケート設問作成が難しい3つの理由とプロが教える精度を上げる実践術

📖 この記事の読了時間:約10分

アンケート設問作成が想像以上に難しい理由

アンケート調査は誰でも手軽に実施できます。しかし設問作成となると話は別です。設問の書き方ひとつで、調査結果の信頼性は大きく揺らぎます。筆者はこれまで数百件の調査票を見てきましたが、質の高い設問を最初から作れる人はほぼいません。

設問設計の難しさは、単に質問文を書く技術の問題ではありません。調査目的が定まっていない状態で作成に着手すると、必要な質問が漏れたり、質問の優先順位が決められなくなったりします。さらに、設問が複雑だと、回答者は深く考えることが面倒になり、適当に答えたり、無回答にしたりする可能性があります。

アンケートの設問作りは、調査設計の知識、回答者心理の理解、言語設計力の三つすべてを必要とする専門性の高い業務です。多くの実務者が苦労するのは当然と言えます。

設問作成を困難にする3つの構造的問題

目的と設問の接続が見えない

目的が曖昧なままアンケートを作成してしまうと、設問にブレが生じやすくなり、収集したデータが断片的で活用しづらいものになってしまう恐れがあります。調査の目的を言語化できていない状態では、どの情報を取得すべきかの判断基準が存在しません。

実務では「顧客満足度を知りたい」という漠然とした目的でアンケートを作り始めるケースがよくあります。しかしこれでは、商品の何について満足度を聞くべきか、どの属性で分析するか、結果をどう活用するかが見えてきません。目的と設問の接続を明確にする作業は、アンケート設計の核心です。

バイアスを完全に排除できない

バイアスとは、アンケート調査などで回答者の心理や質問の設計、調査の状況によって生じる偏りや歪みのことを指します。設問文にわずかな誘導表現が紛れ込むだけで、回答は特定の方向へ偏ります。

質問に答えを誘導するような文章等が入っている場合、調査結果は本来の姿とは異なった結果になってしまいます。たとえば「運動不足から生活習慣病になり」という前置きをつけた質問と、そうでない質問では、回答分布が大きく異なります。

バイアスは質問文だけでなく、選択肢の順序、タイトルの付け方、回答形式にも潜みます。完全に排除することは不可能ですが、その存在を認識し最小化する技術が求められます。

回答者の負荷を見誤る

設問数が多すぎると回答者に負荷がかかり、途中離脱の原因になるほか、適当に答えておこうという心理が働きやすくなり、データの精度が落ちてしまうことがあるため注意が必要です。回答者がどこで離脱し、どこで思考停止するかを予測できないと、有効な回答は集まりません。

設問文がわかりにくいと、要点のみ抑えてしっかり読まなくなる可能性があります。専門用語が多用されていて、誤った解釈での回答に加え、回答ストレスも高まりますので、十分な配慮が必要です。作成者には簡単に見える質問でも、回答者にとっては理解に時間がかかる場合があります。

🔗 あわせて読みたい【完全解説】調査票の作り方:マーケティングリサーチのプロの「示唆が生まれるアンケート設計」全ステップ

プロが実践する設問設計の技術

仮説から逆算して設問を構築する

仮説を検証するために、顧客が求める価値や購入時の満足度、期待とのギャップについて尋ねるような設問を設けることで、売上についてより具体的な実態を把握できます。仮説検証型のアプローチは、設問のブレを防ぎ、調査結果を施策に直結させます。

たとえば「新商品の売上が伸びない理由は価格が高いからではないか」という仮説があれば、価格感度、競合比較、購入障壁を段階的に聞く設問を設計します。仮説がないまま「新商品についてどう思いますか」と聞いても、施策につながる示唆は得られません。

1設問1テーマの原則を徹底する

一つの質問項目に複数の質問が含まれないようにしましょう。この原則はダブルバレル質問を避ける基本です。「価格とデザインに満足していますか」という質問では、価格には満足だがデザインには不満という回答者が答えられません。

設問を分割すれば解決しますが、設問数が増えて回答者負荷が高まります。このトレードオフを調整するのも設問設計の技術です。本当に必要な情報を見極め、優先度の低い設問は削ります。

中立性を保つ言葉選びを意識する

バイアスをかけるような枕詞をつけたり、プレゼントなどの報酬で回答を誘導したりすることは避け、回答者が設問フラットな気持ちで答えられるように配慮しましょう。誘導的な表現や価値判断を含む形容詞は、回答の偏りを生みます。

「優れた機能」「便利な」といった形容詞を削り、事実ベースで質問します。「この商品の機能についてどう感じますか」というフラットな聞き方が基本です。中立性の確保は、設問の一字一句を吟味する作業です。

設問作成でよくある7つの失敗パターン

専門用語を無意識に使ってしまう

アンケートを作成する際には、専門用語に対して常に気をつけなければなりません。回答者が質問や回答の選択肢を理解できない場合、データセットに悪いデータを取り込むことになるからです。業界では当たり前の言葉でも、一般の回答者には通じません。

NPSやLTVといった略語、社内でしか使わない製品名、専門的な機能名称は言い換えが必要です。中学生が理解できる言葉を基準にします。

抽象的な期間や頻度を使う

質問に答えを誘導するような文章等が入っている場合、調査結果は本来の姿とは異なった結果になってしまいます。「最近」「よく」「たまに」といった言葉は、人によって解釈が異なります。ある人にとっての「最近」は1週間、別の人には3ヶ月かもしれません。

「過去1ヶ月以内」「週に3回以上」と具体的に定義すれば、回答のブレは最小化されます。

選択肢にMECEの漏れがある

単一回答形式の場合、選択肢の内容がお互いに漏れなく・ダブリのない状態(MECE)にすることが重要です。選択肢が不十分だと、回答者は「その他」に集中し、分析できるデータが得られません。

「年齢:20代/30代/40代」という選択肢では、19歳や50歳の人が答えられません。すべての回答者が必ず一つ選べる選択肢設計が必要です。

設問の順序が回答に影響する

アンケートにおいて製品やブランド、出来事について述べてから質問をすると、親密度や態度の点数が変わってしまうことがあります。先に特定のブランド名を出してから「知っているブランドは」と聞くと、そのブランドが想起されやすくなります。

設問の順序は時系列や論理的な流れを意識し、先行する設問が後続の回答に影響を与えないよう配置します。

回答形式と分析方法が合っていない

自由記述ばかりのアンケートは分析に膨大な時間がかかり、定量分析ができません。最良のアンケートは、ほとんどが定量的なデータに定性的な色彩と裏づけを与えるためにオープンエンド型の質問をいくつか加えた、クローズドエンド型の質問を基本としています。

分析の目的に応じて、単一選択、複数選択、尺度評価、自由記述を使い分ける必要があります。

設問文が長すぎて理解しづらい

質問が長かったり回りくどかったりして、回答者が質問の意図を汲みにくくなっているという失敗例です。回答者にストレスを与えてしまい、途中離脱の原因となります。1文で複数の情報を詰め込むと、回答者は読む気を失います。

一つの設問は2行以内を目安にし、必要なら補足説明を別に記載します。

プレテストを実施していない

出来上がった後に自分で何回か回答してみることです。回答者の視点に立つことによって、質問文が理解しにくい、選択肢が回答しにくいなど様々な問題点を洗い出す事ができるでしょう。本調査の前に少人数でテストを実施すれば、設問の問題点を発見できます。

回答精度を高める設問設計の実践手順

調査目的を3階層で言語化する

第一階層は大目的です。「顧客満足度向上のため」といった抽象的なレベルです。第二階層は中目的で「リピート率低下の原因特定」など、具体的な課題を設定します。第三階層は小目的で「商品、接客、配送のどこに不満があるか把握」と、調査で明らかにする事項を特定します。

この3階層を明文化すれば、どの設問が必要かが見えてきます。

仮説を設問に変換する

仮説を立てたら、それを検証できる設問に変換します。「価格が高いから購入されない」という仮説なら、価格評価、支払意向額、購入障壁の設問を設計します。仮説が複数あれば、優先順位をつけて設問数を調整します。

設問と仮説の対応表を作れば、設問の漏れや重複を防げます。

回答者の思考プロセスを設計する

時間の流れに沿って並べるのが基本です。これは、時間が行ったり来たりすると回答者が答えにくくなってしまうためです。回答者が自然に答えられるよう、認知→検討→購入→評価という流れで設問を配置します。

最初は答えやすい事実確認の質問から始め、徐々に深い質問へ進みます。個人情報など答えにくい質問は後半に配置します。

バイアスチェックリストで検証する

設問を作成したら、バイアスチェックを行います。誘導表現はないか、選択肢の順序は中立か、ダブルバレルになっていないか、専門用語は使っていないか。一つずつ確認します。

第三者に設問を見てもらい、意図通りに理解されるかを確認するのも有効です。

回答負荷を数値で管理する

一般的に、アンケート調査の設問数は20問程度を超えると負担に感じるとされています。設問数だけでなく、回答時間も管理します。目安は5分から10分です。

自由記述やマトリクス形式は負荷が高いため、本当に必要な箇所にのみ使います。スマホ回答者を想定するなら、さらに負荷を下げる工夫が必要です。

設問作成の実務で使える3つの視点

回答データの使い道から逆算する

設問を作る前に、得られたデータをどう分析し、どう活用するかを想定します。クロス集計するなら属性情報が必要です。時系列比較するなら、同じ設問を繰り返し使う必要があります。

分析の出口が見えていないと、データを集めても使えない状況が生まれます。設問設計と分析設計は一体です。

回答者の記憶の限界を考慮する

アンケートの多くは記憶をさかのぼり回答するケースが多くあります。1ヶ月前の細かいことを思い出す場合は少しハードルが高いです。人の記憶は曖昧です。過去の行動や感情を正確に思い出せる期間は限られています。

「過去1週間以内」なら比較的正確ですが、「過去1年間」となると記憶は不確かです。質問する期間は回答者の記憶能力を考慮して設定します。

設問の言葉を統一する

同じ調査票で質問文の文言表現にブレがある場合、回答者に誤解を招くおそれがあります。「前年」と「昨年」、「子供」と「お子様」など、同じ意味でも表現が異なると回答者は混乱します。

調査票全体で用語を統一し、表記ルールを決めておきます。

設問作成の難しさを乗り越えるために

アンケート設問作成が難しいのは、調査設計、心理学、言語設計という三つの専門性が必要だからです。目的の曖昧さ、バイアスの混入、回答者負荷の見誤りという三つの構造的問題は、経験を積んでも完全には克服できません。

しかし、仮説から逆算する、1設問1テーマを徹底する、中立性を保つという基本原則を守れば、設問の質は確実に向上します。プレテストを実施し、第三者の視点を取り入れ、バイアスチェックを習慣化すれば、致命的な失敗は防げます。

設問作成は地道な積み重ねです。一つひとつの設問を丁寧に作り込み、回答者の立場で検証する。その繰り返しが、精度の高いアンケート調査を生み出します。

この記事を書いた人

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。アドタイにてZ世代の誤解とリアル。「ビーリアルな、密着エスノ記」連載中。

よくある質問

Q.アンケート設問作成が難しい理由とは何ですか?初心者にもわかるように教えてください。
A.アンケート設問作成が難しい理由とは、マーケティングリサーチの文脈で顧客理解や戦略立案のために活用される概念・手法です。詳しくは本記事で実務的な視点から解説しています。
Q.アンケート設問作成が難しい理由を実務で活用する際に最も重要なポイントは何ですか?
A.最も重要なのは、目的を明確にしてから取り組むことです。アンケート設問作成が難しい理由は手法自体が目的化しやすいため、何を明らかにしたいのか、その結果をどう活用するのかを事前に設計することが成功の鍵です。
Q.アンケート設問作成が難しい理由にかかる費用や期間の目安はどのくらいですか?
A.規模や目的によって大きく異なりますが、一般的なマーケティングリサーチでは数十万円〜数百万円、期間は2週間〜2ヶ月程度が目安です。
Q.アンケート設問作成が難しい理由でよくある失敗パターンを教えてください。
A.よくある失敗は、データの収集だけで満足してしまい、分析と施策への落とし込みが不十分になることです。またサンプルの偏りや質問設計の不備により、信頼性の低い結果を得てしまうケースも少なくありません。
Q.アンケート設問作成が難しい理由について専門家に相談したい場合はどうすればよいですか?
A.リサート(Researto)では、アンケート設問作成が難しい理由に関する調査設計から分析、レポーティングまで一貫してサポートしています。初回のご相談は無料です。

🔗 あわせて読みたい【完全解説】調査票の作り方:マーケティングリサーチのプロの「示唆が生まれるアンケート設計」全ステップ

🔗 あわせて読みたいアンケート離脱率を下げる5つの設問設計テクニックで回収率が劇的に変わる実務ノウハウ