1990年代後半から2000年代に生まれたZ世代は、インターネットやスマートフォンが当たり前のように存在するデジタルネイティブとして育ちました。社会情勢、経済状況、そしてテクノロジーの進化が複雑に絡み合い、彼ら独自の価値観を形成しています。
ここでは、若者の研究所を運営する筆者が日々若者と活動する中で見出したZ世代の主な特徴10個を紹介します。彼らの行動原理や思考を理解することで、Z世代とのより良いコミュニケーションや、新たなビジネスチャンスの創出に繋がるかもしれません。
1. デジタルネイティブの「情報リテラシーの高さ」
生まれたときからインターネットが身近にあり、スマートフォン、SNSを通じて多様な情報に触れてきたZ世代は、情報の真偽を見極める能力が高い傾向にあります。フェイクニュースや偏った情報に対して敏感で、多角的な視点から情報を収集し、判断しようとします。
なお、純粋な情報リテラシーに関しては今日時点ではY世代(30代)の方が高い傾向があるように思えます。筆者が様々な調査を通じて知る限り、Y世代はインターネットを黎明期から利用しており、様々なサービスを使い、スマートフォン、SNSが登場して今に至ります。Yahoo!、Google、にちゃんねる、モバゲー、mixi、LINE、Facebook、Twitter、Instagramという順でSNSなどを経験してきた世代です。
また、Y世代はビジネス、日々の仕事においてはIT、DX、リモートワークの普及を肌で感じてきた世代です。クリティカルシンキングや情報の取り扱い方については現時点ではZ世代よりY世代の方が能力面では高いように思います。
2. タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する効率性
動画を倍速視聴したり、短時間で多くの情報を得ようとしたりするなど、「時間対効果」を意味するタイパを非常に重視します。これは、情報過多の時代を生きる彼らが、限られた時間を有効活用しようとする意識の表れです。
最近は美容整形が流行っていますが、この背景もタイパの概念で説明ができます。これはZ世代がスキンケア、メイクだけではすぐに美に効果がでない、というタイパの悪さを感じていることが一つの理由になっているように感じます。スキンケアって、すぐに効果がでるものでもないですし、効果があったのかよくわからないですよね。Z世代は、成果をすぐに手にしたい、という感覚がが強いのだと筆者は思っています。
3. 「多様性」と配慮意識
ダイバーシティ&インクルージョンが叫ばれる社会の中で育ったZ世代は、性別、国籍、価値観、働き方など、あらゆる多様性に対して寛容です。他者の個性を尊重し、自分らしさを表現することにも抵抗がありません。
と言いつつも、実際にある真因は「人を傷つけたくない」「相手を怒らせたくない」「相手に失礼を与えたくない」「誰がどのような背景を持っているかわからない」といった警戒心のように見えます。自分の意見を通すことで起きる他社への影響を気にしているのです。「炎上バリア」として多様性を受け入れている、という構図に見えます。
「相手に踏み込みすぎない」というのがポイントです。踏み込むことで人を「傷つけたくない」「怒らせたくない」のは、「自分が傷つきたくないから」です。Z世代はメンタルが弱い、という言説がありますが、筆者の観測上、これはある程度あっていると思います。それ故に、自己防衛心が高い、ということも傾向があると思います。
4. SNSの「つながり」「つながり疲れ」
SNSはZ世代にとって、単なる情報収集ツールではなく、自己表現や他者との共感を求める場です。共通の趣味や価値観を持つコミュニティに属し、「つながり」を大切にします。
一方、2024年くらいから「Z世代のSNS疲れ」ともいうべき現象を筆者は感じています。TwitterがXになりアルゴリズムが変わったあたりからその傾向が顕著になりました。
SNS上での知らない人同士の喧嘩や過度なインフルエンサーマーケティング・PR―――デジタル空間の公共性が増すと同時に、SNSは治安の悪い繁華街のような雰囲気になり始めています。
薄い関係性の友人ともつながっていることで、身動きがとりづらい=「うかつに何でも発言できない」ような場になり、Z世代が気疲れしているような印象を受けます。
5. デジタルもリアルである意識
デジタル空間と現実世界を区別なく行き来し、双方を当たり前に活用するシームレスな行動が特徴です。オンラインで知り合った友人とオフラインで会ったり、リアルでの体験をすぐにSNSで共有したりするなど、デジタルとリアルの境界線が曖昧です。彼らにとって、オンラインもオフラインも「現実」の一部として捉えられています。
Z世代にとっては「オフラインもリアル」「オンラインもリアル」という感覚があるように思います。Y世代はにちゃんねるなど、インターネットが匿名性の高い空間でした。しかし、今日は公共性の高い場所になっています。友人とも24時間365時間繋がっています。その結果、オンライン空間はリアルそのものなのです。
6. リアリティ志向と等身大の価値観
華やかな有名人よりも、身近な友人や共感できるインフルエンサーの意見を信頼します。過度な演出や加工された情報よりも、リアルで等身大の姿に魅力を感じ、親近感を覚えます。
同じく「Z世代のSNS疲れ」ともいうべき現象の一つです。SNSのアルゴリズムに対する不信感は増しています。インフルエンサーマーケティングが横行した結果、「インフルエンサーがみんななんでもよさそうにおすすめしてくるけど、結局自分は何を選択していいのだろうか」と迷うZ世代が増えたように感じます。
7. 協調性の高さと積極性の低さ
個人主義が強まっていると言われる一方で、Z世代はオンライン・オフラインを問わず、仲間との協調性やチームワークを重視する傾向があります。プロジェクトや課題解決においても、単独で進めるよりも、メンバーと協力し、意見を出し合うことを好みます。共創によってより良い結果を生み出すことに価値を見出します。
逆に言うと、独断力のなさもあります。「相手がどう思うかな?」という意識が強すぎて積極的、大胆な進め方は苦手のように思います。根底には「出る杭は打たれる」意識が強いことがあげられます。SNSで炎上や問題を起こしている若年層に注目がいきがちですが、全体としてはそういった人たちの行動を見て「大人しくしよう」と思っている人の方が多いように思います。
ちなみに、そのようなZ世代に「頭角」を現してもらうには少しコツがいると筆者は考えています。
8. 合理的な思考
無駄を嫌い、費用対効果や効率性を重視する合理的思考が根付いています。購買行動においても、単に価格だけでなく、品質、機能、得られる体験などを総合的に判断し、最もメリットのある選択をしようとします。口コミやレビューを徹底的に調べ、納得した上で購買決定を下す傾向が強いです。
仕事面においてはこの点はX世代とZ世代で顕著に差が出ます。X世代は「質より量」と考えますが、Z世代は「量より質」だと考えています。この点で、「自分のやりたい仕事を任せてもらえない」「理由に納得できないことや目的があいまいなことををやらされていて辛い」と思っているZ世代は多いです。
逆にX世代は「俺たちが若いときは上司から『いいからやれ』って感じで理屈もくそもなかったのたのに、最近のZ世代は理由を聞いてくるし、理屈を説明しても納得しないと動かない」なんて思っています。
この世代ギャップ論、筆者はX世代の方が分があると思っています。数をこなさせることで経験値を貯めるプロセスなしには質は追いつかないですからね。
とはいえ、Z世代とのコミュニケーションにおいて重要なのは、「目的・理由をクリアに伝える必要がある」ということです。
9. 「ワークライフバランス」とYOLO
上の世代と比べて、仕事一辺倒ではなく、プライベートの充実や自己成長を重視する傾向が強いです。働きがいや仕事内容はもちろん、ワークライフバランスの取れた働き方を求めます。
仕事よりもプライベートが大事だ、という価値観の背景にはYOLO(You Only Live Once:人生は一度きり)という価値観がZ世代において強く作用していると思います。
ある種、Z世代は人生というものを大人よりよくわかっています。自分が熱を注げないものに時間をかけたくない、ということです。残業もただ意味づけがなければ自分の貴重な時間の切り売りに要に感じてしまうでしょう。逆に、仕事への意味付けができれば、寝る間を惜しんで没頭して働く力も秘めています。
10. 「推し活」とアイデンティティクライシス
アイドル、アニメ、ゲームなど、自分が「推せる」対象に対しては惜しみなく時間やお金を使い、深くコミットします。共感できる対象を見つけ、その活動を応援することを通じて、自己のアイデンティティや幸福感を満たしています。
「推し活」台頭の背景にある、ちょっと深い話をしましょう。
「推し活」の背景にあるのは、「自分の進むべき道がわからない」「自分が何者かわからない」というアイデンティティクライシスが原因にあると考えています。
今日ではSNSの普及で「自分が相手からどう見られているか」といった他者評価を常に受け続ける日常になりました。その中で、誰しもがインフルエンサーなど、有名になれる可能性が出ています。SNSを開けば高級そうなごはんやバッグを持っている人、お金をかけてきれいになった人など、羨ましい生活を散々見せつけられます。当然そのような人たちにも苦悩があると思いますが、表面的にその生活を見せられて感じるコンプレックスのようなものにZ世代は悩まされているように思います。
推し活というのはある種の宗教的信心に近いものがあると筆者は感じています。「自分をゆだねられる何か」を人々は求めています。最近はやっている占いや陰謀論においても同じことが言えると思います。無宗教であっても、神様のような、何か絶対的に自分を委ねられるものをもつことでアイデンティティを確立しようとしている雰囲気があります。
「推し活」という言葉は日本的ではありますが、このアイデンティティクライシス、「自分をなにか絶対的なものに委ねたい」という現象は昨今のグローバルでも見られる傾向だと感じています。
まとめ:Z世代の多様な価値観を理解するために
これらの特徴は、あくまで一般的な傾向であり、Z世代の中にも多様な価値観を持つ人々が存在します。Z世代というのはあくまで企業が仕掛けたマーケティングとしての用語でしかありません。
Z世代は実際のところ、「Z世代」と一括りにされることを嫌う傾向にあります。
しかし、彼らが共通して持つこれらの傾向を理解することは、これからの社会やビジネスを考える上で非常に重要です。一方的な情報発信ではなく、彼らの価値観に寄り添い、共感を呼ぶコミュニケーションを心がけることが、Z世代との良好な関係構築の第一歩となるでしょう。
Z世代リサーチ・調査は若者研究所にご相談ください
リサートおよび親会社のバイデンハウスはZ世代・α世代マーケティングリサーチに特化した「若者の研究所」を運営しています。若年層に関する価値観考察コラムやトレンドレポートを公開しています。
この記事を書いた人

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。若者の研究所研究員。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。アドタイにてZ世代の誤解とリアル。「ビーリアルな、密着エスノ記」連載中。



