売上を上げるのに純粋想起を上げるのはなぜ間違っているのか?

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純粋想起を上げれば売れる、という誤解

マーケティングの現場でよく耳にする言葉があります。「うちのブランド、純粋想起率が低いから売れないんだ」「第一想起を取れば勝てる」といったフレーズです。筆者もこれまで何度となく聞いてきました。確かに、第一想起の向上は検討者数の最大化に寄与し、購買数の最大化が期待されるとされており、一見すると純粋想起は売上に直結する重要な指標に見えます。

しかし、ここには大きな誤解が潜んでいます。第一想起は、必ずしも検討ユーザーのコンバージョンに貢献するとは限りません。相関と因果を混同し、想起を上げることを目的化してしまうと、施策は空回りし、投資対効果は低迷します。

純粋想起とは何か

純粋想起とは、企業やブランド、商品の認知度・浸透度を調査する際に、画像や看板といった、そのブランド・商品に紐づくヒントがなくても、特定の商品やブランドを思い出すことを指します。調査では「ビールと言えば何を思い浮かべますか」といった質問に対し、何も見せずに自由に答えてもらう形式を取ります。

この中でも、一番はじめに想起された商品・ブランドを「第一想起(トップ・オブ・マインド)」とし、その次以降に想起された「第二想起」「第三想起」とは区別して分析する場合があります。純粋想起は助成想起(選択肢を提示して聞く方法)よりも記憶が強く、購買に結びつきやすいとされてきました。

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純粋想起が高ければ売れるという相関の罠

多くの調査データは、想起率と売上の間に相関関係があることを示しています。多くのカテゴリーにおいて、「売れているブランド=思い浮かべられるブランド」という関係が一定程度成り立っているというデータも存在します。しかし、これは「想起が高いから売れている」のか、「売れているから想起されている」のか、第一想起だからマーケットシェアが1位なのか、マーケットシェア1位だから第一想起されるのかという「鶏と卵」の関係にほかなりません。

中長期的に見ると、売上と認知率は相関があることは、データで証明されています。しかし、認知率が上昇しても売上が上がらない場合には大きく2つの原因があります。一つは測定期間のズレ、もう一つは他の変数(商品力、流通、価格、競合状況)の影響です。

つまり、純粋想起と売上には相関はあっても、因果関係を一方向に決めつけることはできません。想起を上げても売れるとは限らない、という現実を直視する必要があります。

購買に至るまでの構造を見落としている

純粋想起は、購買プロセスの「入口」にすぎません。マーケティングのゴールを「買ってもらうこと」と単純化した場合、重要な要素は2つに集約できるとされています。1つ目は「メンタルアベイラビリティー」で、想起のされやすさとも言えるもの。もう1つは、「フィジカルアベイラビリティー」で、買い求めやすさとも言える要素です。

どれだけ想起されやすくても、実際に購入可能な状況でなければ売り上げにはつながらない。配荷がなければ買えません。価格が高すぎれば選ばれません。商品力がなければリピートされません。第一想起によって検討されたブランドの中で、どのブランドが最終的に選択されるかは、商品力による影響が大きいと考えられますという指摘は重要です。

想起は購買の必要条件ではあっても、十分条件ではありません。想起だけを追っても、購買構造の全体像を無視していては、売上には結びつかないのです。

純粋想起という指標の限界

純粋想起調査そのものにも限界があります。純粋想起は自由回答方式のため、バイアスのかかっていない純粋な回答が得られますが、表記揺れや誤表記などにより集計に手間と時間がかかります。調査設計によって結果が大きくブレる可能性もあります。

また、カテゴリーのフレーミングを明確にすることが重要で、「健康飲料」と「スポーツドリンク」では想起されるブランドが全く変わります。つまり、調査票の聞き方次第で数字は変動するということです。

さらに、指名検索が増えているなら、ブランド認知度が向上している、あるいは純粋想起を獲得できているという相関関係がありますが、自然検索は、完全に「思い浮かべて」検索しているとは限りません。SNSを見たり他の人から聞いたりした情報をもとに検索していることもあるという点も見逃せません。指標の精度には慎重であるべきです。

カテゴリーや商材特性による違いを無視している

純粋想起の重要性は、商品カテゴリーによって大きく異なります。自動車や高級腕時計などブランドの指名買いが多い高額商材は、純粋想起されるレベルにないと購入の選択肢に含まれないとされています。一方で、清涼飲料水やスナック菓子のように、消費者が店頭で気軽に選ぶ製品は、「助成想起(ブランド再認)」のほうが比較的購買に結びつく確率が高いという事実があります。

つまり、高関与商品と低関与商品では、想起の重要性も、効く施策も異なるのです。一律に「純粋想起を上げよう」と号令をかけること自体が、現場の解像度を下げる原因になります。

正しいアプローチとは何か

では、売上を上げるために何をすべきなのか。まず、「想起」という言葉自体の抽象度の高さを認識することです。その想起という言葉が指すものが、単に「知っている(認知)」レベルの話なのか、それとも「購入候補に挙がる」レベルの話なのかにより、採るべき施策は大きく変わるからです。

次に、想起を売上の先行指標として扱うのではなく、購買プロセス全体の中で位置づけることです。「世帯GRP→ブランド考慮率→購買個数」の関係をみると、「世帯GRP→ブランド考慮率」の関係、「ブランド考慮率→購買個数」の関係ともに、すべてのブランドでプラスになっていますというデータは、想起だけでなく、広告投下から購買までの因果構造を全体で見ることの重要性を示しています。

カテゴリー上位ではないブランドが、想起というテーマにどう向き合うべきなのかを考えるなら、「誰にとっての」「どんな目的における」という文脈を明確に絞り込んだ状態で想起を獲得するアプローチを取り入れることが必要です。大カテゴリーでの第一想起を狙うのではなく、細分化した文脈での想起を設計するという戦略が現実的です。

まとめ

純粋想起を上げることを目的化してしまうのは、相関と因果を取り違え、購買構造の全体像を見失い、指標の限界を無視している証拠です。想起は重要ですが、それは売上を構成する要素の一つにすぎません。

売上を上げたいのであれば、想起だけに目を奪われるのではなく、商品力、流通、価格、体験、文脈設計といった複数の変数を統合的に設計する必要があります。想起はその中の一要素として、正しく位置づけられるべきです。

「純粋想起を上げれば売れる」という単純な因果を信じるのではなく、自社の商品特性、顧客の購買行動、競合環境を踏まえた上で、何を指標にし、どこに投資するかを判断する。それが、実務で成果を出すための第一歩です。

よくある質問

Q.売上を上げるのに純粋想起を上げるのはなぜ間違っているのかとは何ですか?初心者にもわかるように教えてください。
A.売上を上げるのに純粋想起を上げるのはなぜ間違っているのかとは、売上を上げるのに純粋想起を上げるのはなぜ間違っているのか?に関連する概念・手法です。マーケティングリサーチの文脈では、顧客理解や戦略立案のために活用されます。詳しくは本記事の各セクションで実務的な視点から解説しています。
Q.売上を上げるのに純粋想起を上げるのはなぜ間違っているのかを実務で活用する際に最も重要なポイントは何ですか?
A.最も重要なのは、目的を明確にしてから取り組むことです。売上を上げるのに純粋想起を上げるのはなぜ間違っているのかは手法自体が目的化しやすいため、何を明らかにしたいのか、その結果をどう活用するのかを事前に設計することが成功の鍵です。本記事では具体的な設計方法と注意点を解説しています。
Q.売上を上げるのに純粋想起を上げるのはなぜ間違っているのかにかかる費用や期間の目安はどのくらいですか?
A.規模や目的によって大きく異なりますが、一般的なマーケティングリサーチでは数十万円〜数百万円、期間は2週間〜2ヶ月程度が目安です。自社で実施する場合はツール費用のみで済むこともありますが、専門性が求められる場合は調査会社への依頼をおすすめします。
Q.売上を上げるのに純粋想起を上げるのはなぜ間違っているのかでよくある失敗パターンを教えてください。
A.よくある失敗は、データの収集だけで満足してしまい、分析と施策への落とし込みが不十分になることです。また、サンプルの偏りや質問設計の不備により、信頼性の低い結果を得てしまうケースも少なくありません。本記事で紹介している手順に沿って進めることで、こうした失敗を防げます。
Q.売上を上げるのに純粋想起を上げるのはなぜ間違っているのかについて専門家に相談したい場合はどうすればよいですか?
A.リサート(Researto)では、売上を上げるのに純粋想起を上げるのはなぜ間違っているのかに関する調査設計から分析、レポーティングまで一貫してサポートしています。初回のご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせページからご連絡ください。経験豊富なリサーチャーが最適な調査プランをご提案します。

この記事を書いた人

石崎健人

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。

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