ユーザーインタビュー5つの失敗から学ぶ実務で本当に使える正しいやり方

ユーザーインタビューとは何か

ユーザーインタビューという言葉は、現場で曖昧に使われがちです。筆者はこれまで数多くのプロジェクトを見てきましたが、同じ「ユーザーインタビュー」という言葉でも、現場によって指している対象が全く違うケースに何度も遭遇しました。

ユーザーインタビューとは、製品やサービスに対する意見をユーザーから直接聞き取る定性調査の手法です。ユーザー個人の体験に着目して質問を行い、回答や反応に対してタイムリーに深堀りを重ねていくことで、ユーザー自身も気づいていないニーズや課題を明らかにします。

この調査手法の特徴は、数字では見えない行動の「なぜ」に迫れることです。定量データからはその事実しかわかりませんが、インタビューを通じて「使い方がわかりにくい」「必要性を感じない」といった本質的な課題を引き出すことが可能です。開発や改善の現場で本当に必要なのは、この「なぜ」の部分です。

通常のインタビューとの決定的な違い

ジャーナリストやメディアが行うインタビューと、ユーザーインタビューは目的が根本的に異なります。報道や記事のインタビューは、取材対象の意見や事実を伝えることが目的です。一方でユーザーインタビューは、ビジネス的・社会的課題に対するソリューションをデザインすることを目的としたリサーチです。

現場でよく見かける混同が、「話を聞くこと自体が目的化」してしまうパターンです。ユーザーインタビュー自体を目的にしてしまうと、商品やサービスの改善に活かすことができません。あくまで手段であり、改善や開発の意思決定に使える洞察を得るために実施します。

もう一つの大きな違いは、聞き方そのものです。通常のインタビューでは「どう思いますか」と聞けば答えが返ってきます。しかしユーザーインタビューでは、インサイト、つまり潜在的なニーズを引き出すことが目的ですから、表層の回答にとどまらず、背景にある価値観や行動の文脈を探ります。

デプスインタビューやFGIとの違い

実務の現場では、ユーザーインタビューという言葉が、デプスインタビューやフォーカスグループインタビューを指すこともあります。ここでは明確に整理します。

デプスインタビューとは、インタビュアーが対象者に対して1対1でヒアリングをする調査手法です。通常のユーザーインタビューよりも長い時間をかけ、相手が言いたいことを存分に語れるよう配慮します。深層心理を探るため、モデレーションのスキルが高度に求められます。

一方、フォーカスグループインタビューは複数名に対して実施する座談会形式です。多様な意見を一度に集められる利点がありますが、個々の意見を深く探り、潜在ニーズを掘り下げるには不向きです。また集団心理の影響で本音が出にくい側面もあります。

ユーザーインタビューは、これらの手法を包含する広い概念として使われることも多く、文脈によって1対1の形式を指すこともあります。プロジェクトの目的に応じて、どの形式を採用するかを明確にすることが実務では重要です。

実務で本当によくある5つの失敗

筆者がこれまで見てきた中で、ユーザーインタビューは同じような失敗パターンに陥りがちです。ここでは特に頻度が高く、かつ致命的な5つの失敗を紹介します。

目的が曖昧なまま実施してしまう

調査目的があいまいだと、ユーザーインタビューの方向性が定まらず、必要な情報が得られない可能性があります。「他社でやっているから」「何となく大事そうだから」という理由で始めるプロジェクトを何度も見てきました。

目的が抽象的だと質問が増え、時間内に深掘りできません。現場で機能するのは、「このインタビューで何を決めたいのか」を1文で言える状態です。課題、目的、論点、活用方法の4点をセットで整理し、関係者と合意することが不可欠です。

対象者の選定を誤る

インタビュアーが知りたいことを回答可能な人を選定する必要があります。しかし実務では、リクルートの都合や予算の制約から、本来の対象者とは異なる人にインタビューしてしまうケースが散見されます。

例えば新規サービスのコンセプト検証なのに、既存ユーザーばかりに聞いてしまう。BtoB向けサービスなのに、決裁権のない担当者だけに聞いてしまう。こうした選定ミスは、後工程で取り返しがつきません。

インタビュアーが話しすぎる

調査員が話の主体になってしまうと失敗につながりやすくなります。自社商品の説明やPR、意味のない質問ばかりしていると必要な情報を収集できません。

インタビュアーは説明者や評価者ではなく、「体験を聞かせてもらう聞き手」であることを意識する必要があります。自社サービスの補足説明や弁解は、ユーザーの本音を遠ざけます。相づちやリアクションにも注意が必要で、同意しすぎると誘導になります。

バイアスに無自覚なまま進める

もっとも大切な準備が「バイアスに気づく」ことです。私たちは普段から、無意識のうちにあらゆる事柄を自分の価値観で捉え、極めて主観的に理解しています。

確証バイアスの罠にハマると、つい自分の都合の良い流れに沿ったインタビューをしてしまったり、自分の仮説を肯定する回答を意識的に拾いやすくなり、そうではない回答は軽視してしまう。バイアスを完全に取り除くことは不可能ですが、対策をすることが重要です。

分析を表面的な整理で終わらせる

発言を整理しグルーピングしたものの、どのように結論づけをすればよいか、定性情報に客観性をもって分析するにはどうすればよいか、という疑問を抱く人も多いのが実態です。

KJ法で付箋を並べて満足してしまうパターンが典型例です。発言の分類は分析のスタート地点であって、そこから示唆を導き、施策に繋げるまでが分析です。実用的であること、科学的であることの両方を満たす必要があります。

成果を出すための実践ノウハウ

失敗パターンを踏まえて、ここからは実務で本当に使える実践ノウハウを解説します。筆者が現場で積み上げてきた知見を凝縮しました。

目的設定は4点セットで合意する

プロジェクト開始時に、現状の課題、インタビューの目的、明らかにしたいこと、活用方法の4点を明文化します。例えば「ECサイトのカゴ落ち率が高い」という課題に対し、「購入プロセスの障壁を把握する」という目的を設定し、「どの段階で離脱するか、その理由は何か」を論点とし、「UI改善とコンテンツ施策に使う」と活用方法を明示します。

この4点セットをステークホルダー全員で合意しておくことで、調査目標を理解し、その調査方法を利用することがなぜ重要であるかという理由を理解して、最初から調査活動を支持している状態を作れます。

対象者条件は行動と心理の両面で設定する

単なる属性だけでなく、行動実態と心理状態の両面で対象者条件を設定します。そのカテゴリー・商品・ブランドへの関与度が高いかどうかを判断する条件を加えることが有効です。

例えば「月に3回以上利用している」という行動条件に加え、「サービスの改善点を3つ以上言える」という心理条件を加えます。こうすることで、表層的な感想ではなく、深い洞察が得られる対象者を確保できます。

質問設計は行動から意識へ進める

最初に行動の質問を行い、その質問を掘り下げて、「どうして(理由)」「それでどうしたい」などと意識の質問をしていきます。意識の質問から始めると、多くの人はまず具体的な行動を想像するため、先に考えた限定的な行動しか思いつかなくなります。

また、ユーザーは将来の行動や選択を予測するのが苦手です。実際の経験や選択について尋ねる必要があります。「もし新機能があったら使いますか」ではなく、「最後に使ったとき、どんな場面でしたか」と聞くべきです。

深掘りは「なぜ」を封印して進める

「なぜ」という言葉を連発すると、ユーザーは詰問されている気分になります。汎用的な深堀り質問をまとめた深堀り質問リストを置くことで、必要なときに頼れるようにしておき、繰り返し「なぜですか」と尋ねないですむようにします。

「どんな気持ちになりましたか」「そのとき何を考えていましたか」「具体的にはどういうことですか」など、バリエーションを持つことが重要です。対象者が言いたいことを表現するのが難しい場面でも、予測した回答や仮説を示して手助けをしないように心掛けます。

バイアス対策は複数名体制で実施する

インタビュアーのスキルによる結果の変化を避けるためには、あらかじめ質問項目や質問の仕方を担当者間で共有し、インタビューに差が出ないように準備しておく必要があります。

実務では、インタビュアーと記録者の2名体制が基本です。さらに理想的なのは、自分に反対意見を言える関係性の第三者と一緒にユーザーインタビューはするようにすることです。これにより、都合よく解釈してしまうリスクを低減できます。

具体的な活用シーン3例

ユーザーインタビューが実務でどう機能するのか、具体的なシーンを3つ紹介します。

新規サービスのコンセプト検証

ユーザーが抱えている課題が明確になっていない場合に、ユーザーインタビューを実施して課題を探る、または仮説を得る活用方法です。商品やサービスの開発において、方向性が見えていない場合などに役立ちます。

筆者が関わったプロジェクトでは、想定ターゲット層10名にインタビューを実施し、「企業側の視点では思いつかなかったような発見」を複数得ました。その結果、当初の仮説を大幅に修正し、より市場にフィットするコンセプトに再設計できました。

既存サービスの改善施策立案

定量調査でつかんだ課題をより鮮明に把握したい場合に、ユーザーインタビューで深掘りしていく活用方法もあります。例えば、ECサイトのカゴ落ちの原因を把握するためにインタビューを実施したところ、ページの戻り方がわからなかったなどの不便さが原因であることが判明した事例があります。

数字で「カゴ落ち率30%」という事実は分かっても、その背景は見えません。ユーザーインタビューで「他の商品もカゴに入れたいと思ったが、ページの戻り方がわからなかった」という具体的な声を拾うことで、UIの改善ポイントが明確になります。

ペルソナ・カスタマージャーニーの精度向上

ペルソナやカスタマージャーニーの精度を高める際にも役立ちます。ユーザーと直接会話することで、どのような価値観を持ち、何を期待し、どのような場面で不満を感じるかといった深層心理まで明らかにできます。

机上で作ったペルソナは、どうしても作り手の思い込みが入ります。ユーザーインタビューで得た生の声をもとにペルソナを作ることで、社内の共通言語として機能する「リアルなペルソナ」が完成します。

実務で必ず押さえるべき注意点

最後に、実務で見落とされがちだが重要な注意点をまとめます。

しっかり時間を取って信頼関係を構築せずに、いきなりユーザーインタビューに飛び込むと、そのインタビューから得られるデータの質と量は限られたものになります。世間話は無駄ではなく、本音を引き出すための必須プロセスです。

セッションを録音したり、ユーザーインタビューの内容を書き起こしたりするのが有効です。記憶に頼った分析は、どうしてもバイアスがかかります。録音や発言録を作成し、複数回見直すことで、初回では気づかなかった重要な発言に気づくことも多々あります。

そして、参加者には色の好みがあるという前提でどの色がいいかを尋ねるのは、色について考えて意見を持つべきだと勧めることになります。こうしたクエリー効果にも注意が必要です。質問自体が回答を作り出してしまうリスクを常に意識してください。

まとめ

ユーザーインタビューは、定性調査の中でも特に現場で活用頻度が高い手法です。しかし「話を聞くだけ」という認識のまま実施すると、時間とコストを浪費するだけで成果は得られません。

通常のインタビューとは目的が異なり、デプスインタビューやFGIとも明確に区別して使い分ける必要があります。目的の曖昧さ、対象者選定の誤り、インタビュアーの話しすぎ、バイアスへの無自覚、表面的な分析という5つの失敗パターンを避けることが第一歩です。

目的設定は4点セットで合意し、対象者条件は行動と心理の両面で設定します。質問設計は行動から意識へ進め、深掘りは「なぜ」を封印してバリエーションを持ちます。バイアス対策は複数名体制で実施することが実務では不可欠です。

新規サービスのコンセプト検証、既存サービスの改善施策立案、ペルソナカスタマージャーニーの精度向上など、活用シーンは多岐にわたります。信頼関係の構築、録音や発言録の作成、クエリー効果への注意といった細部まで気を配ることで、本当に施策に繋がる洞察が得られます。

ユーザーインタビューは、定性調査の基本であり、デプスインタビューフォーカスグループインタビューなど他の手法と組み合わせることで、より深い顧客理解に繋がります。実務で成果を出すためには、正しいやり方を理解し、失敗パターンを避け、実践ノウハウを積み上げていくことが重要です。

この記事を書いた人

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。アドタイにてZ世代の誤解とリアル。「ビーリアルな、密着エスノ記」連載中。