シックスバブルとはアクセンチュアが提唱した企業変革の全体像を捉えるフレームワークです
シックスバブル(Six-bubbles)は、アクセンチュアが提唱したフレームワークで、ビジネスの全体像を構造的に理解するために用いられます。6つ並んだ円で表現され、それぞれのレベル感や概念の大きさが同じもので構成されています。
戦略的意図、ビジネスプロセス、振る舞い・行動、情報技術、組織、人材の6つの要素から成り立ちます。これらは独立した概念ではなく相互に影響を及ぼし合う関係にあります。
企業変革やデジタルトランスフォーメーションを推進する際、多くの企業が技術導入だけに目を向けてしまいます。しかし実際には業務、組織、人材といった複数の領域を同時に変革しなければなりません。シックスバブルはこの複雑な変革プロセスを整理し、抜け漏れなく取り組むための地図として機能します。
シックスバブルを構成する6つの要素とその相互関係
Strategy Intent(戦略的意図)、Business Process(ビジネスプロセス)、Behavior(振る舞い・行動)、IT(情報技術)、Organization(組織)、Human Resources(人材)が6つの要素として定義されています。
重要なのは隣接する要素が互いに影響するという点です。隣接しないビジネスプロセスと人材、振る舞い・行動と情報技術は直接には結びつかないと考えられています。
たとえばIT技術がいかに高度でも、それが直接現場の行動変容を生むわけではありません。ビジネスプロセスという媒介を経て初めて現場に影響を与えます。この構造を理解せずにITツールを導入しても、期待した効果は得られません。
筆者が多くのプロジェクトで目撃してきたのは、システムだけ先行導入して現場が動かないという失敗パターンです。シックスバブルの隣接関係を理解していれば、こうした事態を避けられます。
各要素の役割と変革における位置づけ
戦略的意図は企業が目指す方向性を示します。ビジネスプロセスは業務の流れと仕組みです。振る舞い・行動は組織文化や日常の実践を指します。情報技術は業務を支えるシステムやデータ基盤です。組織は役割分担や権限構造を意味します。人材は個々のスキルや能力を表します。
最終目的はBehaviorの変化であり、ビジネス運営のリアルな場面での日々の改善による効果創出だと考えられています。どれほど立派な戦略やシステムがあっても、現場の行動が変わらなければ成果は生まれません。
シックスバブルが必要とされる背景と実務での活用シーン
マーケティング領域でAI活用を進めると、業務、IT技術、組織・人材の壁にぶつかるときがあります。技術的には可能でも、組織の縦割り構造や評価制度が障害になる場面は少なくありません。
企業はAI活用を前提とした業務、IT、組織、評価制度に変え、最終的には文化を作っていく必要があります。この包括的な変革を設計する際にシックスバブルが力を発揮します。
改革の方向性や課題の抽出・整理および改善施策を検討する場合に適しています。たとえば新規事業立ち上げ、DX推進、業務改革、データ活用基盤構築といった場面で、変革の全体像を俯瞰する必要があるときに使います。
ブリヂストンはデジタルトランスフォーメーション推進のためにシックスバブルに沿って変革に取り組んでいます。UQモバイルでは2018年のプロジェクトスタートから業務プロセスの見直しを行い、業務担当者がデータを活用できる環境作りだけでなく、経営層のコミットを得た上で組織を横断する取り組みを実現し、人材育成のプログラムも改善を続けています。
課題の可視化とマッピングの実践方法
様々な課題を抽出した上でシックスバブルの各セグメントにマッピングします。これにより課題がどの領域に偏っているか、どこが手薄かが一目で分かります。
マッピング後、再び目的に立ち返って考えます。多くの場合、最終ゴールは現場の行動変容にあります。各課題が本当にその実現に貢献するかを吟味し、施策の優先順位をつけていきます。
筆者の経験では、IT投資の議論が先行しがちなプロジェクトでも、シックスバブルで整理すると組織や人材の課題が浮き彫りになります。そこから本質的な打ち手が見えてくるのです。
シックスバブルを実務で使いこなすために知っておくべきこと
フレームワークを使いこなすためには、まずそこに何が書かれているのかを愚直に読み解くことが大切です。表面的な理解で当てはめても意味がありません。
歪みがない理路整然とした解釈を伴ったフレームワークは非常に強力な武器となり、本質を理解しておけばどのようなシチュエーションでも活用できます。
重要なのは形だけ真似ないことです。シックスバブル・フレームワークを別の見栄えに変更したからといって、人材とビジネスプロセスが相互作用することはなく、ITがビヘイビアに直接的な影響を与えることもありません。構造の本質を変えてはいけません。
全てのフレームワークにはそれが指し示している真理があり、自分なりに解釈し齟齬が無いように理路整然と説明できる状態にしておかないと、斬りたくないものまでぶった斬ってしまって大怪我をしかねません。
フレームワークが問題を解決するのではなく人が解決する
シックスバブルは万能の解決策ではありません。あくまで問題を構造化し、思考を整理するための道具です。実際に変革を実行するのは現場の人間であり、フレームワークはその支援をするに過ぎません。
安易に型に当てはめて満足してしまうと、本来必要な深い思考が抜け落ちます。なぜこの6要素なのか、なぜこの隣接関係なのか、自分の言葉で説明できるまで咀嚼することが求められます。
シックスバブルと他のフレームワークとの使い分け
シックスバブルは企業変革の全体像を捉えるフレームワークです。一方で3C、4P、5フォースといったフレームワークは特定の領域を深掘りするためのものです。
たとえば3Cは市場と競争環境の分析に、4Pはマーケティング施策の設計に使います。シックスバブルはそうした個別施策の上位に位置し、変革プロジェクト全体の設計図として機能します。
実務では複数のフレームワークを組み合わせて使うことが多くあります。シックスバブルで全体を俯瞰し、個別の要素については専門的なフレームワークで深掘りするといった使い方です。
ペルソナを作成する際も、シックスバブルの視点で顧客理解を組織にどう定着させるかまで考えると実効性が高まります。
シックスバブルを活用した企業変革の進め方
企業変革には戦い方・価値、ビジネスプロセス、文化、技術、組織、人材の6つの変革要素があり、これらすべてをサポートできる機能と人材が必要です。
変革プロジェクトは組織横断的に進める必要があります。縦割りの壁が根強く残る日本型組織では、マーケティング部門が起点となって横断的なプロジェクトを主導していく方向性もあります。
経営トップのコミットが不可欠です。変革がうまくいっている企業では経営トップがしっかり関与しています。現場だけの取り組みでは限界があるからです。
実務の現場では、まず現状の課題を洗い出し、それをシックスバブルの6要素にマッピングします。次に各要素間の関係性を確認し、どこから手をつけるべきか優先順位をつけます。そして施策を実行しながら定期的に全体像を見直し、修正していきます。
まとめ:シックスバブルは企業変革の羅針盤として機能します
シックスバブルはアクセンチュアが提唱した企業変革フレームワークで、戦略・プロセス・行動・IT・組織・人材の6要素から構成されます。これらは相互に影響し合い、特に隣接する要素同士が強く関係します。
デジタル変革やAI導入といった取り組みでは、技術だけでなく業務、組織、人材、文化まで含めた包括的な変革が求められます。シックスバブルを使うことで全体像を俯瞰し、抜け漏れのない施策設計が可能になります。
ただしフレームワークはあくまで道具です。形式的に当てはめるのではなく、その本質を理解し自分の言葉で説明できるまで咀嚼することが重要です。
定性調査で顧客理解を深める際も、その知見を組織にどう浸透させるかという変革の視点が欠かせません。シックスバブルはそうした実務の羅針盤として活用できます。
この記事を書いた人

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。アドタイにてZ世代の誤解とリアル。「ビーリアルな、密着エスノ記」連載中。
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