浸透率とシェア率の3つの違いを知らないと損する理由とブランド成長の新常識

浸透率の定義と基本的な理解

浸透率とは、特定の製品やサービスが対象となる市場や顧客セグメント内でどれだけ普及しているかを示す指標です。具体的には、特定の期間にブランドを1回以上購入または利用した消費者の数を母集団の数で割った値として定義されます。

計算式は「浸透率=(製品・サービスの利用者数÷対象市場の総人数)×100」です。例えば、ある製品の浸透率が50%であれば、対象市場の半分がその製品を利用していることを意味します。

母集団の定義を「未顧客含む潜在顧客全員」とした場合は絶対浸透率、「特定期間内にカテゴリーを購入した人」とした場合は相対浸透率と呼びます。マーケティング実務では、この2つを使い分けることで市場の本質的な課題が見えてきます。

市場浸透率とブランド浸透率の区別

市場浸透率とは、全人口または全世帯における対象カテゴリーのユーザの割合です。ブランド浸透率とは、全人口または全世帯における対象ブランドのユーザの割合であり、ユーザの定義は市場浸透率と合わせます。

当然ですが、ブランド浸透率の上限は市場浸透率になります。市場浸透率が大きくならないことには、ブランド浸透率が大きく伸びることはありません。この理解がなければ、自社ブランドが伸び悩んでいる根本原因を見誤ります。

市場浸透率が小さく、その伸長率が低い場合には、自社ブランドで市場浸透率を伸ばす努力をするか、その市場から撤退するか、という判断になります。また、市場浸透率が十分大きいのに、相対的にブランド浸透率が小さい場合、その市場内で競合から奪い取る必要が出てきます。

シェア率との本質的な違い

市場浸透率はシェアともいわれます。しかし、厳密には浸透率とシェア率は異なる概念です。この違いを理解しないまま戦略を立てると、施策の方向性を誤ります。

定義と算出方法の相違

市場シェアは、ヘアドライヤーの総販売額や総販売台数のうちパナソニックのヘアドライヤーの売上額や台数がどれだけの割合であるかを示しており、計算式は「あるメーカーの販売額÷業界全体の総販売額」です。

エリアマーケティングにおいては、総販売額や総販売台数の代わりに特定地域のターゲットの総数を用いて算出し、顧客浸透率と呼ぶのが一般的で、計算式は「顧客獲得数÷ある地域のターゲットの総数」です。

つまり、シェア率は売上ベースの市場占有度合いを表すのに対し、浸透率は利用経験者ベースの普及度合いを表します。BtoBでも単価が異なる商材では、この2つの指標が大きく乖離するケースがあります。

浸透シェアという統合指標

浸透シェアとは、ブランド浸透率を市場浸透率で割った値であり、対象ブランドのユーザ数を対象カテゴリーのユーザ数で割った値です。市場浸透率に対する相対的なブランド浸透率の大きさを見る指標です。

市場浸透率とブランド浸透率と合わせてモニタリングすることが多く、横軸に市場浸透率、縦軸に浸透シェアを置いたマップを作りモニタリングするケースもあります。この分析により、定量調査で取得したデータを戦略判断に直結させることができます。

純粋想起率との関係性を読み解く

純粋想起とは、製品カテゴリー等の手がかりが与えられたときに特定のブランドを思い起こせることであり、調査対象者に何のヒントもなしに調査対象のブランドを想起するかどうかという手法での想起を指します。

例えば「ハンバーガーショップと言えばどこ」や「缶コーヒーといえば何」といったように、カテゴリーが与えられた場合に特定のブランド名を再生できる状態を指し、ブランド再生と呼ぶこともあります。

助成想起との違いと測定方法

ブランド名を提示した上での認知度を測る場合は「助成想起」といい、選択肢や写真などを提示して回答してもらう回答方法です。純粋想起の方が調査対象者にとって困難な想起であり、記憶やマインドの中に強く残っている、印象付けられているといえます。

自動車や高級腕時計などブランドの指名買いが多い高額商材は、純粋想起されるレベルにないと購入の選択肢に含まれないため、純粋想起率向上をKGIに据えることが多いが、清涼飲料水やスナック菓子のように消費者が店頭で気軽に選ぶ製品は、助成想起のほうが比較的購買に結びつく確率が高い。アンケート調査の設計段階でこの違いを踏まえておく必要があります。

浸透率と純粋想起率の相関

純粋想起は、ブランドの真の浸透度を測る重要な指標であり、助成想起よりも購買行動への影響が強く、特に第一想起の獲得が競争優位につながります。純粋想起率が高いブランドは、実際の購買行動において有利な立場に立て、消費者が商品を購入する際、まず頭に浮かんだブランドを選ぶ傾向があります。

純粋想起率とは、ある市場において思い浮かぶブランド名として自社ブランドの名前が出てくる確率のことを指し、トップオブマインド分析では純粋想起率と助成想起率を算出することで自社ブランドが消費者にとってどれほどの認知を得ているか、どれほどのブランド占有率を誇っているのかを調査します。

高い浸透率を誇るブランドほど純粋想起率も高い傾向がありますが、必ずしも比例するわけではありません。利用経験はあるが記憶に残っていないケースや、逆に利用経験はないが強く記憶されているケースも存在します。定性調査でこうした実態を把握することが重要です。

ダブルジョパディの法則が示す浸透率の重要性

ダブルジョパディ法則は、ブランドの市場浸透率が低いと、そのブランドの購入頻度も低くなるという法則を指します。市場浸透率が低いブランドは購入頻度も低い傾向があり、逆に市場浸透率が高いブランドは購入頻度も高い傾向があります。

大きなブランドと小さなブランドの主な違いは浸透率であり、浸透率が増えれば購入頻度や利用額もやや高まりますが、浸透率を増やさずに購入頻度や利用額だけを高めることは原則的に難しいということです。

小規模ブランドの二重苦

ダブルジョパディは「ブランドの持つ二重苦」と言い換えられ、シェアが低いブランドは市場浸透率においても購買頻度においてもシェアトップのブランドより劣ってしまいます。パーシルのほうが顧客の基盤が大きく、サーフのようにシェアが小さなブランドは購入頻度も少ない。

ブランドの成長は購入者数の増加と強く相関し、小規模ブランドほど新規顧客の力が大きく、新規客の割合はブランドが小さいほど高くなる傾向があるため、ロイヤルティ施策よりも先にライトに手に取ってもらう仕掛けが必要です。

浸透率拡大戦略の優先順位

浸透率とは「そのブランドを一度でも購入したことのある世帯や人の割合」のことであり、浸透率を高めることはより多くの人に認知・選択される機会をつくることです。認知の間口を広げ、誰もがなんとなくでも知っている、どこでも手に入る、話題になってる状態をつくるという万人に届く設計、すなわち浸透率最大化がブランドの礎になります。

低い浸透率はまだ開拓されていない市場があることを示唆し、ビジネスの成長機会を見出すための重要な指標となります。調査設計の段階から浸透率拡大を見据えた指標設計が求められます。

浸透率を活用した実践的な戦略判断

新しいマーケティングキャンペーンや戦略を実施した際、浸透率の変化を観察することで、その効果を定量的に測定することができます。製品やサービスのライフサイクルを把握する上で、浸透率は重要な指標となります。

成長機会の見極め方

浸透率の経時的な変化を観察することで成長トレンドの把握、季節変動の特定、マーケティング活動の効果測定が可能になり、顧客セグメントごとに浸透率を分析することでターゲット市場の再定義、新規市場の開拓、カスタマイズ戦略の策定ができます。

自社製品の浸透率を競合他社と比較することで、市場ポジションの把握、ベンチマーキングができます。この分析結果をペルソナ作成やカスタマージャーニー設計に反映させることで、より実効性の高い戦略が立案できます。

地域別浸透率分析の活用

顧客浸透率とは想定顧客のうちどれだけの顧客を獲得できているかを示す数値であり、一般的にシェアともいわれ、ターゲット層の人口や世帯数の総数に対して獲得した顧客の割合を計算して算出します。

エリアマーケティングでは、会員登録やアンケートで入手した顧客数をターゲット人口等で割って顧客浸透率を算出し、顧客浸透率を調べることで商圏内で多くの顧客を獲得できている強い商圏と、あまり獲得できていない弱い商圏を把握できます。

商圏の強さを考慮したチラシの配布戦略として、強い商圏に集中的に販促を実施して顧客浸透率を高めた上で、次の戦略として弱い商圏に販促を行い顧客浸透率を高めて行くのが大切です。限られた予算で最大効果を狙うなら、こうした優先順位づけが不可欠です。

浸透率測定と継続的モニタリングの実務

浸透率の最も一般的な計算式は「浸透率=(製品・サービスの利用者数÷対象市場の総人数)×100」であり、この式を使用することでパーセンテージで表現された浸透率を得ることができます。

調査設計の実践ポイント

ブランド認知度調査は、市場において自社商品・サービスがどの程度浸透しているのかを計測することが目的のため、幅広い層を対象に実施することが基本であり、ブランド認知度は自社のマーケティング施策や競合他社の展開によって変化するため、定期的に実施して常に自社のポジションを確認しておくことが重要です。

ブランド浸透度調査を行う上では、現状把握・課題発見だけでなく、その後の具体的な施策に結びつけることが重要です。調査票の設計段階から、施策への落とし込みを見据えた項目設計が求められます。

データの読み方と示唆の導出

浸透度調査では、ブランド名からイメージの想起量を計測することで、ブランドエクイティ形成の進捗を定量化することが可能になり、認知者から理解者へのコンバージョン率を測定することでブランドエクイティ形成の進捗率を把握できます。

ブランドマネジメントレポートとは、ブランド名認知率からロイヤルユーザー含有率までのファネル構造でブランドの浸透状況を確認できるレポートであり、時系列分析ではブランドのファネル構造を過去から並べることで変化の様子を確認できます。

浸透率の数値だけを追うのではなく、デプスインタビューFGIと組み合わせて背景にある消費者心理を掘り下げることで、より深い示唆が得られます。デブリーフィングの場で定量と定性の両面から議論することが有効です。

まとめ

浸透率とシェア率は似て非なる指標です。浸透率は利用経験者ベースの普及度合いを示し、シェア率は売上ベースの市場占有度合いを示します。この違いを理解しないまま戦略を立てると、施策の方向性を誤ります。

純粋想起率との関係では、高い浸透率を誇るブランドほど純粋想起率も高い傾向がありますが、必ずしも比例するわけではありません。ダブルジョパディの法則が示すように、浸透率が低いブランドは購入頻度も低くなる傾向があり、浸透率拡大こそがブランド成長の最優先課題です。

実務では、市場浸透率とブランド浸透率、そして浸透シェアの3つの指標を組み合わせてモニタリングすることで、新規拡大と既存顧客奪取のどちらを優先すべきかを判断できます。地域別の顧客浸透率分析により、強い商圏と弱い商圏を把握し、限られた予算で最大効果を狙う戦略が立案できます。

浸透率測定は単発で終わらせず、定期的に継続することで時系列変化を捉え、施策の効果検証と次の打ち手の立案につなげることが重要です。

この記事を書いた人

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。アドタイにてZ世代の誤解とリアル。「ビーリアルな、密着エスノ記」連載中。