はじめに
マーケティングや商品開発、ユーザー理解を深めるうえで欠かせないのが「調査・リサーチ」です。その中でも、顧客の“生の声”や“本音”を深く探るために用いられるのが「定性調査」です。
この記事では、定性調査の意味や定量調査との違い、メリット・デメリット、具体的な手法までを初心者にもわかりやすく解説します。定性調査を検討中の方や、より深い顧客理解を目指したいマーケターにとって、有益な情報をお届けします。
定性調査とは?その意味と特徴
定性調査とは、数値では表せない人の意見や感情、価値観、動機などの「質的な情報」を深掘りして把握する調査手法です。
- 「なぜそう思ったのか?」
- 「どのように感じたのか?」
- 「どんな背景や価値観があるのか?」
といった、人間の内面に迫る情報を得ることが目的です。
定性調査の主な特徴
- 数値化せず、言語情報を中心に分析する
- 小規模な対象者(数名〜数十名)に深くインタビューや観察を行う
- 分析はパターンや傾向を見つける“解釈型”
定量調査との違いは?比較で理解しよう
項目 | 定性調査 | 定量調査 |
調査目的 | 意見・動機・感情の深掘り | 数値的な傾向や相関の把握 |
データの性質 | 言語・行動などの非数値データ | 数値・スコア・割合などのデータ |
サンプル数 | 少人数(5〜20名程度) | 多人数(数百〜数千名) |
分析手法 | 解釈やパターン分析 | 統計分析(平均、分散、クロス集計など) |
主な手法 | インタビュー、観察、グループディスカッション | アンケート、テスト、パネル調査 |
両者は目的や扱うデータが大きく異なりますが、補完的に活用することで、より立体的なマーケティング判断が可能になります。
定性調査のメリット
1. 深いインサイトの発見ができる
表面的な回答ではなく、「なぜそう思うのか?」という心理の深層に迫ることができ、商品開発やコミュニケーション施策のヒントにつながります。
2. 想定外のニーズや課題に気づける
あらかじめ用意された選択肢では出てこない、ユーザー独自の視点や行動パターンが見えてくるのも定性調査ならではです。
3. 商品やサービスへの“リアルな声”を聞ける
顧客の言葉や感情を直接聞くことで、数字では見えない「共感」や「違和感」を把握できます。
定性調査のデメリット・注意点
- サンプル数が少ないため、一般化しにくい
- 実施や分析に時間と専門スキルが必要
- 分析者の主観に左右される可能性がある
これらの特性を理解したうえで、目的に合った手法を選ぶことが重要です。
主な定性調査手法
1. デプスインタビュー(1対1インタビュー)
1人の対象者に対し、インタビュアーが深掘り質問を行う手法。パーソナルな意見や本音が引き出しやすいのが特徴です。
2. フォーカスグループインタビュー(FGI)
5〜8名程度のグループに対し、モデレーターがテーマに沿って進行する座談会形式。複数人の相互作用により多様な意見が得られます。
3. エスノグラフィ(行動観察)
実際の利用場面を観察しながら、対象者の無意識的な行動や習慣を把握する手法。UX調査や店舗調査で活用されます。
4. 日記調査・写真調査
日常の体験を記録してもらうことで、リアルな生活背景や使用シーンを把握する方法です。
定性調査の活用シーン
- 新商品やサービス開発のコンセプト検討
- ターゲット顧客のインサイト把握
- ブランドイメージや広告表現の評価
- UI/UXの改善ポイント発見
定性調査は「課題の発見」や「仮説構築」に特に有効です。その後、定量調査で検証するという流れが一般的です。
まとめ
- 定性調査とは、数値では捉えきれない“人の本音”を探る調査手法
- 定量調査と補完し合うことで、より深く顧客を理解できる
- インタビューや観察など、目的に応じて手法を選ぶのがポイント
マーケティングや企画業務において、「ユーザーの心の奥を知りたい」「定量では見えない背景を理解したい」と感じたときこそ、定性調査の出番です。
目的に応じて、適切な調査設計とスキルをもって実施すれば、ビジネスを前進させるための大きなヒントが見えてくるはずです。