マーケティングファネルとは?顧客の購買プロセスを可視化する実務フレームワーク完全ガイド

マーケティングファネルとは何か

マーケティングファネルとは、顧客が商品・サービスを認知してから、実際に購入するまでの一連の流れを図で表したものです。ファネルという言葉は英語で漏斗を意味し、認知から購入にいたるまでの購買行動を示す形が逆三角形になることから、この名称が付けられています。

実際の購買プロセスを考えてみましょう。100人に認知されたとしても関心を保つのは60人、比較検討に進むのはさらに少なくなって30人、そして最後まで買う意志が残った場合のみ、購入にいたる形になります。筆者がこれまで支援してきた企業でも、各ステージでの離脱率を正確に把握できていないケースが多く見られました。

マーケティングファネルはもともと、1920年代にアメリカのサミュエル・ローランド・ホールが提唱した広告宣伝における消費者の心理プロセスを示した「AIDMA」の発展形として登場したと言われています。購買行動の可視化という考え方は100年近い歴史を持ちながら、現在でも実務で活用されているのです。

実際の購買データを当てはめることで、どのフェーズで見込み顧客が離脱しているかが明確になります。筆者の経験では、多くの企業が認知から興味への移行で大きな課題を抱えていました。

マーケティングファネルが必要とされる理由

マーケティングファネルを活用する最大の利点は、消費者の一連の購買プロセスの中で、どこに問題があるのかを浮き彫りにし、適切な施策を打てるようになることです。これは実務において極めて重要な視点になります。

筆者が支援した複数の企業では、施策の効果が見えにくいという悩みを抱えていました。広告費を投入しても成果につながらない、コンテンツを作成しても購入に結びつかない。こうした課題の本質は、購買プロセス全体を俯瞰できていないことにあります。

マーケティングファネルを用いるメリットは、企業は顧客がどの段階で離脱しているのかを特定できることです。感覚的になりがちなマーケティング活動をデータに基づいて分析し、戦略的に改善していく際に役立ちます。

メーカーや商品について認知したばかりの消費者に対して、すぐに購入を促すようなアプローチをかけても、良い結果には繋がりません。各フェーズの顧客心理を理解した上で、適切な情報提供が求められます。

実務では、各フェーズに対してKPIを設定し、定期的にモニタリングすることが効果的です。筆者が関わったプロジェクトでは、フェーズごとの転換率を週次で確認し、変化の兆候を早期に捉える体制を構築しました。

実務でつまずきやすいマーケティングファネルの問題

マーケティングファネルを導入する際、多くの企業が同じような問題に直面します。筆者がこれまで目にしてきた典型的な課題をいくつか挙げます。

最も多いのは、ファネルを作っただけで満足してしまうケースです。図を描いて数字を当てはめても、そこから具体的なアクションにつながらなければ意味がありません。きちんとしたファネル分析を行うことで、どのフェーズの消費者に対しての施策を見直すべきなのか、重点的に施策を仕掛けるべきはどの過程なのかが明確になります。

二つ目は、各フェーズの定義が曖昧なまま進めてしまう問題です。「興味・関心」と「比較・検討」の境界線をどこに引くのか、社内で共通認識がないまま数字だけを追いかけても、改善につながりません。

三つ目として、インターネットとスマートフォンの普及により、現代の消費者の行動は非常に複雑で非線形化しています。従来の直線的なファネルでは捉えきれない顧客行動が増えているのです。SNS広告で商品を知った後、途中で離脱し、後日YouTubeの紹介動画を見た後に、再びECサイトにアクセスし購入するといった行動がよく見られます。

また、BtoBはBtoCに比べて複雑といわれますが、それは関与者や決定過程における協議の多さ、さらに決定要因が複雑なことから言われるものです。業界やビジネスモデルによって、ファネルの形は大きく異なります。

マーケティングファネル3つの種類と正しい使い分け

パーチェスファネル

パーチェスファネルとは、前章で紹介したAIDMAをもとにした、もっとも基本となるマーケティングファネルです。特徴は、認知→興味・関心→比較・検討→購入と、段階を経るにあたって人数が少なくなっている点になります。

実際の活用では、Webページの遷移を例にとれば、興味を持ってランディングしたページでの離脱はあまり発生していないものの、次に閲覧したサービス紹介ページで急激な離脱の増加があった場合、このサービス紹介ページに問題があるということが分かります。

筆者が支援したあるBtoB企業では、認知から興味への転換率は高かったものの、比較・検討から購入への転換が著しく低い状況でした。詳細に分析すると、競合との差別化ポイントが明確に伝わっていないことが判明しました。

パーチェスファネルは「TOFU」「MOFU」「BOFU」という3種類に分類できます。TOFUは認知段階、MOFUは比較検討段階、BOFUは購入段階を指し、それぞれに適した施策が異なります。

インフルエンスファネル

インフルエンスファネルは、顧客が商品やサービスを購入したあとの行動に着目するマーケティングファネルです。主にECサイトやサブスクリプションなど、継続利用が求められるビジネスで用いられています。

インフルエンスファネルは口コミやレビューといった、インターネット上での消費者の発信力の高まりとともに誕生したモデルです。購入後の行動を「継続」「紹介」「発信」の3段階で捉えます。

実務では、既存顧客のロイヤルティ向上施策として活用されます。筆者が関わったサブスクリプションサービスの事例では、継続率の向上だけでなく、紹介プログラムの設計にもインフルエンスファネルの考え方を取り入れました。

それまでのパーチェスファネルでは、購入をしたらそれで終わりでした。しかしインターネット上の口コミやレビュー、さらにSNSにより、購入者のその先の行動も見据えることが大切になったのです。

ダブルファネル

パーチェスファネルとインフルエンスファネルを統合し、相乗効果を生み出す「ダブルファネル」というモデルも存在しています。砂時計のような形状になり、認知から発信までの全プロセスを一つの図で表現できます。

ダブルファネルは、パーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせることで、顧客が商品を認知してから情報共有するまでの流れをモデル化したものです。認知、興味・関心、比較・検討、購入・申し込み、継続、紹介、発信の7段階で構成されます。

実務での活用例として、商品を購入した後にレビューを記載すればクーポンをゲットというキャンペーンを実施することで、SNSのレビュー数増加を目指す場合、商品を購入する前からクーポンをもらえることをアピールすることで、比較・検討段階での離脱率を減少させられる施策が考えられます。

筆者の経験では、ダブルファネルを導入することで、マーケティング部門と顧客理解部門の連携が強化された事例があります。購入前後の施策を一体的に設計できるため、組織間の壁を越えやすくなるのです。

実務で成果を出すマーケティングファネルの活用方法

マーケティングファネルを実務で活用する際、まず必要なのは現状把握です。購買や購入後の全体の流れを分解して見られるため、感覚に頼らず、根拠ある戦略が立てやすくなる点が大きなメリットになります。

具体的な手順として、まずは各フェーズの定義を明確にします。認知とはどの状態を指すのか、興味・関心はどう測定するのか。これを曖昧にしたまま進めると、後で数字の解釈が困難になります。

次に、各フェーズの人数を実際のデータで埋めていきます。マーケティングファネルに落とし込んだのみでは、仮に購買に問題があったとしても、そのボトルネックとなる具体的な原因が分からず、有効な施策を打ち出すことができません。KPIツリーと組み合わせることで、より詳細な分析が可能になります。

フェーズごとで、消費者心理の移り変わりについても併せて分析することでペルソナ作りに活かすことができます。顧客インタビューやデプスインタビューと組み合わせることで、数字だけでは見えない顧客心理を深く理解できます。

筆者が支援した企業では、ファネル分析とカスタマージャーニーを組み合わせることで、各フェーズでの顧客の感情や接点を詳細に把握できました。マーケティングファネルは、各ステップでの顧客数を分析し、購買プロセス全体の効率を評価するのに最適です。一方、カスタマージャーニーは顧客の心理やニーズを細かく分析し、各フェーズでの顧客体験を最適化するために使用されます。

BtoBでは依然として、マーケティングファネルは有効なモデルです。企業が購買を検討する際、個人の消費行動ほど非線形にはなりません。BtoBは一直線型で最大公約数のモデルに近い実態があるため、ファネルの適用がしやすいのです。

実務で重要なのは、定期的なモニタリングと改善のサイクルです。月次でファネルの形を確認し、異常値が出た場合はすぐに原因を調査します。筆者が関わったプロジェクトでは、週次でファネルのダッシュボードを確認し、変化の兆候を早期に捉える体制を作りました。

マーケティングファネル活用の実践事例

ある製造業のBtoB企業では、Webサイトからの問い合わせ数を増やすことが課題でした。ファネル分析を実施したところ、ECサイトを訪れた消費者は商品を認知し、興味を持つことで商品詳細ページに遷移します。さらに、類似商品と比較・検討したのちに、購入に至りますという基本的な流れは確認できました。

しかし、商品詳細ページから問い合わせフォームへの遷移率が著しく低いことが判明しました。商品詳細ページに自社の強みを大きくアピールすることで、消費者の比較・検討プロセスで離脱されづらくなります。この企業では、競合との差別化ポイントを明確化し、ページ構成を見直しました。

別のサブスクリプションサービスの事例では、インフルエンスファネルに注目しました。SNSのレビュー内容が不満ばかりである場合は、自社サービスを改善する必要があります。レビューをもとに自社サービスのどこに問題があるのか判断して、得た情報をマーケティング活動に活かすことで、継続率が大きく改善しました。

BtoB企業での採用活動にもファネルの考え方は応用できます。内定を最終的なゴールとした場合、どこで離脱される可能性があるのか、コンバージョン率はどれぐらいかを確認して、それぞれのプロセスで施策を打ち出しましょう。認知、応募、面接、内定というプロセスを可視化することで、採用の歩留まり改善につながります。

ダブルファネルを活用した事例では、MAを活用することでリードジェネレーションからMQLまでの工程をチャネルごとに最適化することができるため、機会損失を防ぐだけでなく、顧客の確度に応じたフォローを実施できます。マーケティングオートメーションとインサイドセールスを組み合わせることで、各フェーズの転換率が向上しました。

マーケティングファネルを実務で使いこなすために

マーケティングファネルのもっとも基本的な考え方は、認知→興味・関心→比較・検討→購入というプロセスを示すものです。この基本を押さえた上で、自社のビジネスモデルに合わせてカスタマイズすることが重要になります。

BtoBビジネスにおいては、ファネルの考え方は依然として有効です。フェーズに合わせたホワイトペーパーやウェビナーなどのコンテンツ提供は、顧客の情報収集を支援できます。業界や商材の特性に応じて、適切なファネル設計が求められます。

実務では、ファネルを作って終わりではなく、継続的な改善が不可欠です。現代の複雑化したマーケティングに携わっていると、往々にして思考が混乱したり、取るべき施策や判断に迷いが生じることがあります。そんな時こそ、ファネルで全体像を俯瞰することが有効です。

筆者の経験では、ファネルを組織全体で共有することで、マーケティング部門と営業部門の連携が強化された事例が多くあります。各部門が購買プロセスのどの部分を担当しているかを明確にすることで、責任範囲が明確になり、協働しやすくなります。

BtoBでは、個人ではなく組織による購買行動となるため、購買プロセスの変化が起こりにくく、マーケティングファネルを活用した分析がしやすいのです。顧客ターゲットに合わせて、最適な分析方法を選択することが成果につながります。

最後に、マーケティングファネルはあくまでフレームワークであり、現実の顧客行動をすべて説明できるわけではありません。基本的に認知せず購入するケースはなく、興味を持たずに購入するケースもないという原則は変わりませんが、そのプロセスは多様化しています。ファネルと定性調査を組み合わせることで、より深い顧客理解が可能になります。

この記事を書いた人

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。アドタイにてZ世代の誤解とリアル。「ビーリアルな、密着エスノ記」連載中。