インタビューフローとは
インタビューフロー(Interview Flow)とは、定性調査のインタビュー調査において、モデレーターが使用する台本形式の調査票のことです。マーケティングリサーチ業界では、「フロー」と略して呼ぶこともあります。
調査の目的を達成するために、インタビュー参加者に「何を質問するか」「どの順番で質問するか」「どのような点を深堀りするか」「どの調査項目にどれくらい時間を割くか」を記す台本です。
インタビューを担当するモデレーターがインタビューフローの作成も担当します。
ちなみに、外資系企業ではインタビューフローをインタビューガイド(Interview Guide)と呼ぶこともあります。
インタビューフローを作成するべき理由
インタビューフローのメリット
- 初心者でもそこそこのレベルでインタビューができる
- 事前に練習することができる・本番のイメージが付きやすくなる
- 抜けもれなく聞ける・質問のし忘れを防げる
- 話題がそれても、今回の調査で解き明かしたい主題に軌道修正しやすい
- チーム内で共有・引継ぎができるようになる
- 調査の設計の質を上げるための振り返りに使える
定性調査およびインタビュー調査は、インタラクティブな調査である点が定量調査と異なります。よって、インタビューではモデレーターが想定しないことが多発します。
モデレーターは、今自分が何を目的に深堀っているのかを見失ったり、緊張して次に投げかける質問を忘れてしまうこともあります。
そういった際に、軌道修正したり、次の質問を思い出したりするためのツールがインタビュフローです。言い換えると、インタビューガイドはインタビュー調査のクオリティを一定に保つ効果があると言えます。
リサートでは、どのインタビュー調査においても、必ずインタビューフローを作ることをおすすめしています。プロのモデレーターも、毎回必ずインタビューフローを作っています。
インタビューフローを作成するタイミング
インタビューフロー調査実施のステップ
- 調査目的(解くべき問い)を決める
- 調査項目(知りたいこと)を洗い出す
- インタビューフロー(聞き方・聞く順番)を作成する
- インタビューをする
- 発言録を作る
- 分析する・レポートを作成する
調査は常に目的から逆算して設計します。調査を実施した後に決めたいこと、そのために今回の調査で明らかにしたいこと=調査目的をまず定義します。そのうえで調査目的を達成するために必要な論点、知りたいことを洗い出し、調査項目としてまとめます。
調査項目が定まったタイミングで、インタビューフローを作成します。調査項目が「知りたいこと」であれば、インタビューフローは「聞き方」です。
知りたいことを決めなければ、聞き方を決めることはできません。よって、調査項目を作る前にインタビューフローを作ることは非効率的ですので、やめましょう。
詳しくは調査実施のステップ(コラム作成予定)をご覧ください。
インタビューフロー作成のコツ
インタビューフロー作成のステップ
- 調査項目を大項目で整理する
- 大項目ごとに時間配分を作る
- 調査項目の一つ一つを分解し、具体的な質問内容に変換する
- 自然な流れに質問の順序を再構成する
- 時間配分を再度修正する
インタビューフロー作成時の原則は「大きいカテゴリーから小さなカテゴリー」へ作っていきます。まずはインタビューの時間を、調査項目の大項目レベルで割り振りし、各パートの時間配分を決めます。
60分のデプスインタビューであればインタビューフローは4~5パート、90分であれば6~8パート程度に収めるのがよいでしょう。リサートでは、1パートは10分~20分くらいで区切ることをおすすめしています。
各パートの時間配分を決めたら、各パート内に具体的な調査項目を割り振っていきます。このとき、調査項目(知りたいこと)をインタビュー参加に対する実際の質問(聞き方)に分解、変換を行います。
調査項目は事業者側のビジネス言語です。インタビューフローで記すのは一般の消費者との日常会話の言語である点に注意してください。
質問を並べたら、インタビュー参加者の目線からセルフレビューを行います。質問の流れが自然で、回答がしやすいか、という観点で質問の順序を適宜並び替えます。このとき、聴取順序バイアスが起きていないかもチェックします。
インタビューフローを再度セルフレビューしてください。調査項目を質問に分解・変換したり、並び替えを行うと、インタビューフロー上に記載した時間配分と実際に質問量がバランスしていない、矛盾している、ということがよく起きます。
質問量が多すぎてしまい計画したインタビュー時間を超えている場合は、調査項目の優先順位の見直し、優先順位の低い質問を削除し調整をします。予算に制約がない場合は、コストをかけてインタビュー時間を延長する調整をすることもできます。
インタビューフローを作る際の大原則・注意点
大原則①:インタビューフローは、モデレーターが作る
インタビューフローはモデレーターが主担当となって作ることが大原則です。他人が作ったインタビューフローはモデレーターの頭の中で整理してアウトプットしたものではないので、モデレーターは本番のインタビュー中に混乱し、現在地を見失います。モデレーターが迷わずインタビューを進めるために作成するガイドがインタビューフローなので、これでは本末転倒です。
モデレーターが自分なりに調査目的を理解・解釈し、整理し構造化するプロセスが実はモデレーターにとってとても重要です。現在はAIでインタビューフローを作ることもできますが、モデレーターはAIに全任せにせず、自身の思考整理のプロセスを必ず設けてください。
大原則②:初回のインタビュー後に、インタビューフローを修正する
初回のインタビューが終わったら、デブリーフィングにてインタビューフローを修正するための議論の時間を設けます。
想定した通りに機能しない質問を削除・修正し、その代わりに次回のインタビューから追加したい質問を追加します。
思い通りに機能しなかった質問は、質問の投げかけ方を変えることで改善できる場合もあるので、修正をしましょう。バイアスをある程度許容して直球で聞くか、多角的な質問に分解することで間接的に洞察する、などのアプローチをとることができます。
大原則③インタビューフローにこだわりすぎない。あくまでも目安の資料
インタビューフローはあくまでもガイドの資料です。インタビューフローを守ることは手段であって調査の目的ではないので、手段に固執することは必ずしも最善とは言えません。
インタビューフローよりも重要なことは、モデレーター自身がインタビュー参加者をありのままに受け入れる姿勢です。モデレーター自身がインタビューフローに固執してしまうことはモデレーター自身のバイアス(思い込み)だとも言えるでしょう。
インタビュー参加者の発話の裏にある背景(価値観・性格・思考のクセ・習慣)に迫るためにはインタビュー参加者に自由に話してもらうことも一つの手です。思わぬ会話の脱線が大きな発見を生むことがあるのも定性調査の醍醐味です。
モデレーションにある程度慣れてきたらインタビューフローを読み上げるのではなく、目の前のインタビュー参加者と目を見て会話をするモデレーションのスタイルにアップデートしていきましょう。
このガイドとアドリブのプローブを混ぜたインタビューを「半構造化インタビュー」と呼びます。定性調査における理想は「半構造化インタビュー」です。
構造化・半構造的・非構造化インタビューとは(コラム作成予定)
インタビューフローを作ったら:見直しが必要なポイント
一問一答になっている
一問一答でもよいのであれば、定性調査ではなく定量調査を使った方が効率的で、調査コストも安いです。定性調査の真価はインタビュー参加者の自由な会話と深堀り(プローブ)から生まれるものです。
設問を詰め込みすぎている
繰り返しますが、定性調査の真価はインタビュー参加者の自由な会話と深堀り(プローブ)から生まれるものです。ガチガチに設問を固めずに、ある程度の時間の余裕・余白を持たせたインタビューフローが望ましいです。
初心者ほど、設問を多く詰め込みすぎてしまう傾向にあります。この場合、調査の目的が明確になっていない可能性が高いです。改めて「今回のインタビュー調査を通じて本当に明らかにしたいこと」を見直してください。
バイアスをかけている
インタビューフローに記した質問が誘導バイアスをかけるような問いかけになっていると、モデレーターがそのまま質問をした瞬間に誘導バイアスが起きるので修正しましょう。
質問の修正例
- NG:「~~~したいと思いますか?」
- Good:「~~~したことはありますか?どうしてそれをしましたか?」
- NG:「~~~は好きですか?」「~~~はいいと思いますか?」
- Good:「~~~についてどう思いますか?」
- NG:「~~~したのはxxxだからですか?」
- Good:「どうして~~~をしたのですか?」
仮説を直接聞いている
誘導バイアスや、社会適応性バイアスをかけることになります。
消費者は善良な人間でありたいと考えていますが、消費者の本音やインサイトは必ずしも善良で綺麗なものではありません。人間の本音やインサイトというものは本来、生々しく、汚いものです。それを直接聞かれても、消費者は「善良な人間でありたい」と思っているので、公共の場では同意しづらいわけです。
また、ビジネス的な仮説を言われると、人間はついその意見が正しいように感じてしまい、同意しやすくなってしまいます。この場合、その同意は、インタビュー参加者の考え(事実・ファクト)ではなく、モデレーターの願望(解釈)にすぎません。
どうしても直接的に仮説を聞きたい場合は、インタビューの最後に聞きましょう。
質問のNG例
- 「この香水を使う理由は、イケてる男だと思われたいからですか?」
- 「仕事だけでなく、家事も育児にも協力的なナイスなパパだと思われたいですか?」
- 「この商品カテゴリーを買う際に重要なポイントはAとBとCだと思っているんですが、あっていますか?」
答えられないようなことを聞いている
「この商品を買わない理由」「どうして~~~を買わないのですか?」という質問をされる方をよく見かけますがこの質問は期待通りに機能しません。回答する側の目線に立つと「その商品を知らないから」か「興味がないから」だけなので、答えに窮してしまいます。
質問の修正例
- 「普段このあたりの商品を買うお店ではどんなものが売っていますか?」
- 「今お使いの商品と似たもので気になっている商品はありますか?どうして?」
- 「この商品と今お使いの商品は何が違いますか?」
- 「このあたりの商品を買うときに重視しているポイントは?どうして?」
「なぜ」を繰り返しすぎている
「なぜなぜ分析」はあくまで分析の方法論なのですが、これをインタビュー参加者に行うと詰問的で、強いプレッシャーを与えるので避けましょう。
「なぜ」ではなく、5W1Hを使い多角的に問いかけていくのが正しいモデレーションのアプローチです。
質問の修正例
- NG:「どうしてこの商品に愛着を感じているのですか?どうして?なぜ?どうして?」
- Good:
- 「この商品はいつからお使いですか?」
- 「どこでこの商品知りましたか?そのときはどのような印象でしたか?」
- 「何がきっかけで購入に至りましたか?」「実際に使ってみて、どうでしたか?」
- 「その後繰り返して購入する回数が増えていったとのことですが、それどうして?」
- 「この商品のどこがお気に入り?」「ほかの商品じゃダメなの?」「何が違う?」
まとめ:インタビューフローのポイント
- インタビューフローとは定性調査のインタビュー調査において、モデレーターが使用する台本形式の調査票のこと
- インタビュー調査の質を一定に保つのに効果的
- インタビューフローはモデレーターが作るのが大原則
- 調査項目を作成した後に作成する
- 作成時はバイアスに注意する
- インタビューフローはあくまでガイド。必要に応じて逸脱するもの
- 初回のインタビュー後にインタビューフローをアップデートしておく
リサートにモデレーターを派遣してもらう
リサートでモデレーション能力を向上させる
リサートでモデレーターになる
この記事の監修者

角 泰範 | マーケティング・リサーチャー
リサート所属モデレーター。シンクタンク・マーケティングリサーチ複数社を経て現職。マーケティングリサーチャーとして10年以上の経験を有し、大手ブランドの広範な商材・サービスの調査を支援。統計学的な分析手法とインタビューをハイブリッドに活用した、定量・定性の両軸での消費者分析力が強み。
この記事を書いた人

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。アドタイにてZ世代の誤解とリアル。「ビーリアルな、密着エスノ記」連載中。






