配架率とは何か?メーカーの売上を左右する3つの誤解と実務で使える向上策

消費財メーカーが売上を伸ばすとき、広告投資や商品改良に目が向きます。しかし現場で最も効くのは「どれだけ店頭に並んでいるか」という配架率です。買い物客の80%は毎週同じ店で買い物しているという事実を踏まえれば、認知があっても店頭になければ売れません。

配架率とは、自社商品がどのくらいの店舗で取り扱われているか?を表す割合を指します。例えばドラッグストアが100店舗あった場合、そのうちのどれだけの店舗で自社製品を取り扱われているかを表す割合であり、配架率60%なら60店舗で扱われていることを意味します。

呼び方にも幅があります。配荷率は「店頭カバー率」「カバレッジ」とも言い、実務では配荷率と配架率が混在して使われています。本質的には同じ概念を指しており、自社商品の店頭露出の広さを数値化したものです。

配架率の基本的な計算式と数値目標の立て方

配荷率は「配荷店数÷総店舗数×100」で求めることができます。この式によって配架率を高めるにはあと何店舗で商品の取扱を増やせばいいのかといった具体的な数字目標を定められます。

営業エリア内にドラッグストアが400店舗あって配架率を70%から80%に上げたい場合を考えます。+10%に相当する40店舗に新たに配荷をすればいいことがわかりますという計算が可能になります。

ここで注意すべきは総店舗数の定義です。単に全国の店舗数を分母にするのではなく、自社商品が購買される可能性のある店舗に絞る必要があります。化粧品なら美容系専門店やドラッグストアが対象となり、コンビニは含めても雑貨店は外すといった判断が求められます。

配架率が売上に与える影響とその理由

配荷で競合他社に負ければ、ほぼ確実に売上で負けてしまうと言われるほど配架率は売上に直結します。配荷率を高めることで、商品の接触機会が増えるため売上が伸びる可能性が高まります。消費者が買いたいと思ったときにすぐ手に入らない状況は機会損失になります。

売上の構成要素を分解すると配架率の重要性がより明確になります。売上 = 人口 × 認知率 × 配荷率 × 該当カテゴリーの過去購入率 × エボークトセットに入る率 × 年間購入率 × 1回あたりの購入個数 × 年間購入頻度 × 購入単価という分解式の中で、配荷率は企業側の戦略や交渉によってある程度コントロールしやすい要素の一つです。

購入意向を100%にすることは不可能ですが、認知率と配荷率は原理的には限りなく100%に近づけることが出来るものとされています。他の要素に比べて伸びしろが大きく、単価のように上がり下がりで発生するリスクも基本的にはありません。

配荷率は高いと顧客からの支持が高いことを示します。そして顧客の購買に繋がりやすく、チャンネル営業に注力していることを表します。特に配架率が重視されるのは、新商品発売時などの広告宣伝に力を入れている期間です。

配架率が伸びない3つの理由

配架率が思うように伸びないメーカーには共通するパターンがあります。第一に商品そのものの魅力不足です。顧客のニーズを把握し、競合の類似商品の特徴を把握したうえで自社の強みが際立つニーズの高い商品を作ることにより、結果的に配荷率を高めることが出来ます。

第二に価格設定と情報不足です。ブランド力・認知度が高い商品でも、卸売店・小売店のバイヤーや現場担当者に「この商品の価格は競合商品に比べ購入されにくいだろう」「価格に見合った商品のメリットが分からない」と判断されてしまうと配荷率を高めることはできません。

営業担当者に事前に商品の強みやターゲット、他社の類似商品との比較などさまざまな情報を伝えて営業でのコミュニケーションに活用してもらう必要があります。第三に売場での設置しやすさです。汎用性を持って店舗の空きスペースに対応できる、設置のしやすさを追求することが、結果的に製品の配荷率を上げる施策になるとされています。

配架率を向上させる実務的なアプローチ

配架率向上の最大の原則は小売店に「この商品を置くメリット」を納得してもらうことです。店頭にこの商品を置かないと客からクレームが来る、これ置かないと売り上げが下がっちゃうと小売店に思わせるほどの商品ブランド力が一番の武器になります。

小売業者が商品を取り扱うメリットを感じてもらわなければ、配荷率向上は難しくなります。そこで有効なのは他の店舗での売上データやプロモーション効果を提示することです。販促キャンペーンの共催や店頭イベント、共同広告などで小売側のメリットを訴求する手法も実績があります。

顧客の購買行動を分析:どの店舗・ECサイトに顧客が多いか、商品特性との親和性:生鮮食品なら地域密着型スーパー、サプリメントならドラッグストアなどという視点で重点的に配架率を高めるチャネルを特定します。

営業担当者だけでは手が回らない場合もあります。配荷率を高めるためには、営業エリア内の店舗をくまなくチェックし確度の高い店舗を優先的に交渉することや、自社商品の什器の見直しなどを検討する必要があります。ラウンダー業者に現場担当者との交渉やヒアリングの代行を依頼することで、メーカーの戦略実施や陳列状況の管理まで依頼することが出来るため配架率を高めるだけでなく売上向上が期待できます。

実際の成果事例としては、130店舗中85店舗(65%)に設置展開、昨年対比で190%伸長というケースが報告されています。

棚割とSKUの視点が配架率の質を決める

配架率は単に店舗数だけでなく質も見る必要があります。店頭にわかりやすく置かれているのと、目立ちにくい場所に置かれているでは意味が違いますし、申し訳程度に一個だけ置かれているのも「配荷されている」とは堂々とはいえないでしょう。

ストアカバレッジだけでなく、SKU(Stock Keeping Unit、商品の最小管理単位)で数値を見ることに注意が必要です。キリン氷結シチリア産レモンという1つの商品アイテムだったとしても、350mlと500mlが配荷されていれば2SKUという計算になり、SKUが多い方が有利となります。

店内のビール売り場における棚割だ。自社ビールが定番商品2フェース、プレミアム、糖質オフ、糖質ゼロが各1フェースを確保していて、競合商品がそれぞれ1フェースしか取れていない場合、自社は棚のシェアで数的有利となります。

ECチャネルとデジタル時代の配架率

実店舗だけでなくEC(オンライン)チャネルの拡充も現代では非常に重要です。Amazon、楽天などへの出品はベースカバー率を大幅に高めるとされています。自社ECサイトの強化により自社ブランドの世界観を表現しつつ購入動線を最適化できます。

デジタルマーケティングにおける配荷率は、「特定のニーズ (=検索クエリ) を持った人に対して、いかに自社サービスに関する情報が物理的に手の届く範囲に並べられているか (検索結果画面に載っているか)」という概念として定義できます。

店頭とデジタルの両面で配架率を高めることが現代のマーケティング戦略には不可欠です。SNS連携や広告運用により流入経路を多角化し、幅広いユーザーへのリーチを狙う施策も効果的です。

配架率を見るときに注意すべき3つのポイント

配架率の数値を追うときに見落としがちな注意点があります。第一に測定タイミングです。小売店側で一時的に品切れしているかもしれないので、「いつのタイミングで配架率を測るか」が大事とされています。

第二にチャネルの変化です。ネット通販(EC)の比重が高まると、「店頭に並ぶ」だけでは全体の実態を反映しきれない場合もあるため、実店舗とオンラインの両軸で見る必要があります。

第三にコストとのバランスです。配架率を上げるには営業コストや販促費がかかります。すべてのチャネルで最大化することは現実的に困難であり、自社の商品特性やターゲット顧客に合ったチャネルを特定して重点的に配架率を高めることが重要です。

配架率向上が事業成長の鍵になる

配荷率は商品の売上やブランド認知に直結する重要な指標です。特に競合がひしめく市場では、いかに効率的に配架率を高めるかがマーケターの大きな課題となります。

筆者が関わったプロジェクトでも、広告投資を増やす前に配架率を地道に改善することで売上が大きく伸びた事例がいくつもあります。認知率と配架率のバランスが取れて初めて売上が最大化されます。認知が増えれば配荷率も改善する場合もあります。話題性が高い商品と消費者に認識される状況ができあがると、そういった消費者の購買を見込んで小売店での取り扱いが増加するという望ましい連鎖が起きることもあります。

最終的には自社のターゲットやブランドの特性を踏まえ、優先度の高いチャネルから段階的に配架率を拡充していくことが成功への近道です。小売業者との関係強化やマーチャンダイジング戦略の見直しを行い、消費者が欲しいときに手に入れられる状況を作り出すことこそが売上最大化とブランド価値向上の鍵となります。

この記事を書いた人

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。アドタイにてZ世代の誤解とリアル。「ビーリアルな、密着エスノ記」連載中。