定性調査の手法を選ぶとき、最初に迷うのがフォーカスグループ(グループインタビュー)とデプスインタビュー(個別インタビュー)のどちらを使うかです。どちらも生の声を集める手法ですが、向き不向きが明確に異なります。ここでは実務で判断できる水準まで整理します。
フォーカスグループとは
フォーカスグループは、通常6〜8名程度の参加者が一堂に集まり、モデレーターの進行のもとで特定のテーマについて議論する手法です。参加者同士の会話やリアクションから、一人では引き出せないアイデアや感情が浮かび上がることがあります。
強みは、グループダイナミクスにあります。誰かの意見が別の参加者の思考を刺激し、「そうそう、私もそれを感じていた」という共鳴が生まれることで、潜在的なニーズが言語化されやすくなります。また、複数人から同時に意見を収集できるため、1対1インタビューと比べて時間効率が高いです。
向いているシーン:新製品のコンセプト評価、広告クリエイティブのリアクション確認、カテゴリ全体の生活者像の把握など
一方、弱みもあります。グループに影響力の強い人がいると、他の参加者の意見が引きずられる「同調バイアス」が生じることがあります。また、プライベートな話題や「人と違う意見を言いにくい」テーマには不向きです。
デプスインタビューとは
デプスインタビューは、インタビュアーと回答者が1対1で深く掘り下げる手法です。45分〜90分程度の時間をかけて、個人の経験・感情・判断プロセスを丁寧に引き出します。
強みは、深さと個別性にあります。グループの目を気にせず本音を話せる場を作りやすく、複雑な意思決定プロセスや繊細なトピック(健康・家族・財務など)を扱うのに適しています。また、回答者の言葉に合わせて臨機応変に深掘りできるため、事前に想定していなかった発見が生まれやすいです。
向いているシーン:購買意思決定の詳細なプロセス理解、高関与製品(保険・医療・住宅など)の顧客体験調査、競合他社からのスイッチング行動の解明など
弱みは時間とコストです。1件のインタビューに対して設定・実施・分析の工数がかかるため、フォーカスグループと同じ予算ではカバーできるサンプル数が少なくなります。
選択の判断基準
実務での選択基準をまとめると次のようになります。
- テーマが社会的・個人的に繊細で、グループの場では話しにくい → デプスインタビュー
- 参加者同士の議論や刺激が発見につながると期待できる → フォーカスグループ
- 個々の意思決定プロセスを詳細に追いたい → デプスインタビュー
- 広い意見の幅と共通点を同時に把握したい → フォーカスグループ
- 予算が限られている → 1グループのフォーカスグループか、少数のデプスインタビュー
どちらが「正解」ということはなく、調査目的とテーマの性質によって判断します。迷ったときは調査設計段階でリサーチャーに相談するのが最善です。プロは目的を聞けば適切な手法を提案できます。
この記事を書いた人

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。
よくある質問

