カスタマージャーニーマップは、顧客が製品やサービスに関わる全プロセスを可視化するツールです。マーケティング・UX・カスタマーサクセスなど幅広い場面で使われますが、初めて作ろうとすると「どこから始めればよいかわからない」「作ったけど使えなかった」という声が多いです。この記事では、初めて作るときに陥りやすい3つのミスと対策を解説します。
ミス1:「理想の旅」を描いてしまう
最もよくある失敗は、顧客の実際の体験ではなく、「こうあってほしい旅」を描いてしまうことです。「まず認知して、興味を持ち、比較検討して、購入し、リピートする」——こういった直線的で美しいジャーニーは、実際の顧客行動とかけ離れていることが多いです。
実際の顧客は、途中で離脱し、別の情報ソースを探し、気が変わり、予想外のきっかけで戻ってきます。顧客の本音を反映させるためには、インタビューや行動データを基に作ることが前提です。「自分たちがこうだと思う」ではなく「顧客が実際にこうしていた」という事実を積み上げてマップを作りましょう。
調査なしで作るジャーニーマップは、チームの思い込みを整理するには役立ちますが、顧客理解のツールとしては機能しません。初めて作るなら、少人数(5〜10名)のインタビューから始めることをお勧めします。
ミス2:ペルソナが曖昧なまま始める
カスタマージャーニーマップは、特定の顧客像(ペルソナ)の体験を描くものです。「すべての顧客」の旅を一枚に収めようとすると、誰の旅でもない抽象的なマップになります。
たとえば、30代の共働き夫婦が家電を選ぶ旅と、60代の定年退職後の方が同じ家電を選ぶ旅は、情報収集の手段も評価軸も購入チャネルも全く異なります。これを一枚のマップで表現しようとすると、どちらの顧客の実態も表せないものになります。
対策は、「誰のジャーニーを描くか」を最初に明確にすることです。自社にとって最も重要な顧客セグメントを1〜2つ選び、それに絞って作成しましょう。ペルソナが決まっていない場合は、ジャーニーマップを作る前にペルソナを定義するステップを挟むべきです。
ミス3:作ることが目的になる
カスタマージャーニーマップをきれいに仕上げて満足してしまい、実際の改善活動に繋がらないケースがあります。「マップを作った」という事実は成果ではなく、マップを活用して「何かを改善した」「何かを決めた」ところに価値があります。
作成後に活用するためのポイントがあります。まず、マップ上で「顧客がもっとも不満を感じているポイント(ペインポイント)」を特定し、そこを改善する施策の優先順位を決めましょう。次に、マップをチームで共有し、各部門が自分の業務のどの部分が顧客体験に影響しているかを認識できるようにします。
ジャーニーマップは一度作って完成ではなく、新しい顧客データや施策の結果を得るたびに更新するものです。「生きたドキュメント」として定期的に見直す運用設計を、作成時から決めておきましょう。
まとめ
カスタマージャーニーマップは、正しく作れば顧客体験の改善に強力なツールです。しかし「リサーチなしで作る」「ペルソナが曖昧」「作って終わり」の三重苦に陥ると、時間をかけた割に何も変わらない結果になります。小さく始め、実際の顧客の声を反映させ、改善活動に繋げることを意識して取り組んでください。
この記事を書いた人

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。
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