「何人に聞けばよいか?」はマーケティングリサーチで最もよくある質問のひとつです。「多ければ多いほどよい」は正しいようで、予算と効率の観点からは非現実的です。この記事では、サンプルサイズの基本的な考え方と実務での判断基準を整理します。
サンプルサイズを決める2つの要素
サンプルサイズを決めるには、主に2つの要素を考慮します。「信頼水準」と「誤差の許容範囲(標本誤差)」です。
信頼水準とは、「この結果が正しい確率」のことです。95%の信頼水準が一般的で、「100回同じ調査をしたとき、95回はこの範囲内に真の値が収まる」という意味です。
標本誤差とは、得られた数値がどの程度ぶれるかの許容幅です。たとえば標本誤差±5%なら、「本当の値がアンケート結果から±5%の範囲内にある」ということです。
信頼水準95%・誤差±5%でランダムサンプリングをする場合、必要なサンプル数は約400です。これは調査対象の母集団が数万人であっても数億人であっても大きく変わりません。この「約400」という数字は、多くの消費者調査で基準として使われています。
セグメント別に分析するなら、セグメントごとにサンプルが必要
重要な注意点があります。全体で400サンプルを集めても、「20代・30代・40代・50代」で別々に分析したい場合は、各世代ごとに最低100サンプル前後は必要です。全体400の中で20代が50人しかいなければ、20代の分析結果の信頼性は低くなります。
分析したいセグメントを最初に確認し、「そのセグメントごとに十分なサンプルがあるか」を確認してサンプル数を設計することが重要です。「400サンプル集めれば大丈夫」という単純な話ではない点を覚えておきましょう。
定性調査のサンプルサイズの考え方
インタビューや観察といった定性調査では、統計的なサンプル数という概念は使いません。代わりに「飽和(サチュレーション)」という概念を使います。
飽和とは、インタビューを続けても新しい発見が出なくなる状態のことです。一般的に、1つのセグメントで8〜12件のインタビューを行うと、大半のテーマが繰り返し出てきて飽和に近づくといわれています。
ただし、複数の異なるセグメント(例:重度ユーザーと軽度ユーザー)を対象にする場合は、セグメントごとに8〜12件が必要になります。予算が限られているなら、1セグメントに絞って深く調査するか、各セグメント5〜6件でも発見は得られます。
実務での目安まとめ
理論を踏まえた上で、実務での目安を整理します。
- 全体傾向を把握する一般消費者調査:400〜500サンプル
- 4〜5セグメントに分けて分析する場合:800〜1,200サンプル
- 希少な属性(例:月1回以上ジムに行く人)を対象にする場合:スクリーニング込みで500〜1,000サンプル以上必要になることも
- 定性インタビュー(1セグメント):8〜12件
サンプルサイズを減らすと費用は下がりますが、分析の信頼性も下がります。「予算内で何がわかるか」を正直に評価しながら設計することが、調査の価値を守ることにつながります。
この記事を書いた人

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。
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