トップオブマインド分析とは?ブランド認知の第一想起を測る実務手法を完全解説

ブランド認知の実態を掴みたい。そう考えるマーケターにとって、トップオブマインド分析は欠かせない手法です。筆者はこれまで多数のブランド認知調査に携わってきましたが、この分析を正しく設計・実施できている企業は意外なほど少ないのが実情です。

自社ブランドは市場でどう位置づけられているのか。競合と比べて消費者の記憶にどれほど刻まれているのか。トップオブマインド分析は、特定の製品カテゴリやサービスについて顧客が真っ先に思い浮かべるブランドを調査し、その結果を基にブランドポジショニングや広告施策を最適化するための手法です。

トップオブマインド分析とは何か

トップオブマインド分析とは、純粋想起率と助成想起率を算出することで自社ブランドが消費者にとってどれほどの認知を得ているか、どれほどのブランド占有率を誇っているのかを調査する方法です。

トップオブマインドとは、特にブランド純粋想起において一番初めに思い浮かべられるブランドを意味し、第一想起とも言い換えられます。筆者の経験上、この第一想起を獲得しているブランドは購買時の検討において圧倒的に有利です。

戦略的ブランド・マネジメントの著者ケビン・レーンケラーはブランドを消費者が認知する過程を助成想起と純粋想起の2つと定義しています。この2軸で市場における自社の立ち位置を可視化するのがトップオブマインド分析の核心です。

純粋想起と助成想起の違い

純粋想起とは、ノーヒントで自発的にブランド名、商品名を思い出せることをいいます。たとえば、「コーヒーチェーンといえば」と問われて何の手がかりもなく「スターバックス」と答えられる状態が純粋想起です。

助成想起とは、ブランドや商品の認知度を調査する際、対象者に選択肢を提示して回答してもらうことです。店頭でロゴを見て「ああ、これ知ってる」と認識できる状態がこれに該当します。

純粋想起率は助成想起率よりも低くなる傾向があります。助成想起はヒントがある中で答えている一方、純粋想起は何もヒントがない状態で回答するので、その分思い出せる人は少なくなるのです。だからこそ、両者を混同してはいけません。

なぜトップオブマインド分析が重要なのか

消費者の購買行動を左右する要因は無数にあります。価格、品質、デザイン。しかしそれ以前に、選択肢として思い浮かばなければ検討すらされません。

第一想起されたブランドは、検討段階で最初に検討してもらえる可能性、そして、検討後に購入してもらえる可能性が高いといわれています。筆者が関わったある飲料メーカーの事例では、第一想起率が3ポイント上昇しただけで売上が12%増加しました。

トップオブマインド分析では自社のブランドがどの程度市場に浸透しているかを知ることができます。自社ブランドのユーザーだけでなく調査会社のモニターなどにより幅広い対象から回答を得ることで市場における認知度の把握が可能です。

競合との相対的な位置関係を俯瞰できる点も見逃せません。自社だけの認知率を測っても、それが市場の中で高いのか低いのか判断できません。競合を含めた全体像を把握してこそ、次の打ち手が見えてきます。

トップオブマインド分析でよくある失敗

調査設計の順序を間違える

アンケートを作成する際に必ず純粋想起を聞いてから助成想起を聞くという質問順序にして下さい。これを逆にしてしまうと、回答者は助成想起でブランドの選択肢を見た後に純粋想起を行うことになるので、純粋な想起ではなくなってしまいます。

筆者が過去に見た失敗事例では、先に選択肢を見せてしまったため純粋想起率が通常の2倍以上に膨らみ、データが使い物にならなくなったケースがありました。順序は絶対に守るべきです。

純粋想起と助成想起を比較してしまう

異なる方法で出された認知率ですから、絶対に比較してはいけません。測定している認知の深さが根本的に異なるため、両者の数値を直接比較することに意味はありません。

1回だけで終わらせる

トップオブマインド分析は1回だけではブランドの市場での認知を正確に把握することはできません。1回だけでなく定期的に実施することで市場での認知度とブランドの浸透度合いが明らかになります。ブランドは生き物です。定点観測してこそ変化の兆しを捉えられます。

トップオブマインド分析の正しい実施方法

調査設計の基本ステップ

トップオブマインド分析をするにはまず初めに市場内の消費者を対象としたブランド認知アンケート調査を行う必要があります。アンケート調査では純粋想起率、助成想起率を出すための質問を用意し、その回答を数値化しグラフに配置していきます。

具体的な質問設計では、消費者に対してアンケート調査を実施します。アンケート内容は、「あなたが○○を購買するとき、最初に思い浮かぶブランドは何ですか」など、消費者が直感的に回答できるようなものにします。

調査対象の選定も重要です。自社ユーザーだけでなく、市場全体を代表するサンプルを確保する必要があります。筆者が推奨するのは、ターゲット層を明確に定義した上で、年齢・性別・地域などの属性が偏らないよう配慮した設計です。

質問文の作り方

純粋想起を測る質問は自由回答形式にします。「チョコレートのブランドで思い浮かぶものを、思いつく順に3つまでお答えください」といった形です。

助成想起を測る質問では、市場に存在する主要ブランドを選択肢として提示します。「以下のチョコレートブランドの中で、知っているものをすべてお選びください」という形式です。

質問文に誘導が入らないよう細心の注意を払います。「人気の」「有名な」といった修飾語は避けてください。

4象限マトリクスの作成と解釈

トップオブマインド分析では純粋想起率を横軸、助成想起率を縦軸としてそれぞれの平均値を中心とした4つの象限のどこにブランドが存在するかでマインドシェアを分析します。

純粋想起率も高く助成想起率も高い右上の象限は広く知れ渡って市場をリードするブランドです。右下は知っている人は知っていますが、ブランドとして広く知れ渡るに至っていないブランドになります。左上はブランド名としては市場に広まっていますが、製品としての認知度に欠けるブランドです。左下の場合はブランド名として市場にも浸透度が低く、製品としても認知されていないブランドになります。

右上の「リーダー」ポジションは理想的な状態です。右下の「ニッチ」ポジションは、コアなファンを持つがまだ市場全体には浸透していない状態を示します。左上の「レガシー」は、助成想起率こそ高いが純粋想起率は低く、パッと名前が出でくるわけではないがブランド名を聞くとそんなブランドもあったな、といった具合に認知されているブランドです。左下の「マイノリティ」は認知拡大が急務です。

実務での活用シーンと事例

ブランドリニューアルの判断材料

既存の商品やサービスのリブランディングを計画する際にも、トップオブマインド分析を行い、消費者の認知度や評判を把握した上で、リブランディングの方向性を決定することもあります。

筆者が支援したある老舗食品メーカーでは、トップオブマインド分析の結果「レガシー」ポジションに位置していることが判明しました。助成想起は高いものの純粋想起が低い。つまり見れば分かるが、真っ先には思い出されない状態でした。この結果を受けて、パッケージデザインの刷新と広告訴求の変更を実施し、2年後の再調査では純粋想起率が15ポイント上昇しました。

競合分析とポジショニング戦略

競合状況の把握により自社ブランドが競合他社と比較してどの位置にあるか明確になります。これにより、自社が強化すべき領域が見えてきます。

純粋想起率と助成想起率をもとに、各企業をポジショニングしたところ、助成想起も純粋想起も高い「リーダー」に位置するのは日本生命をはじめとする5社となりました。このように業界全体を俯瞰することで、自社が取るべきポジションが見えてきます。

広告効果の測定

広告キャンペーン実施前後でトップオブマインド分析を行えば、施策の効果を定量的に把握できます。筆者が関わったあるBtoB企業では、展示会出展とWebキャンペーンを組み合わせた施策の前後で調査を実施し、純粋想起率が8ポイント、助成想起率が12ポイント上昇したことを確認しました。

トップオブマインド分析を成功させるコツ

カテゴリーの定義を明確にする

「飲料」では広すぎます。「炭酸飲料」なのか「エナジードリンク」なのか。カテゴリーの切り方次第で結果は大きく変わります。大カテゴリーを細分化して、消費者に想起してもらうこと目的とするなど、商品・ブランドの性質に応じた戦略を立案することが肝要です。

自由回答の集計ルールを事前に決める

純粋想起は自由回答形式のため、表記ゆれが発生します。「コカ・コーラ」「コカコーラ」「coca-cola」をどう扱うか。集計前にルールを明確にしておかないと、データの信頼性が損なわれます。

定期的な測定で変化を追う

1回の調査は現状把握に過ぎません。3ヶ月後、半年後、1年後と継続的に測定してこそ、施策の効果やブランド力の推移が見えてきます。定量調査の設計段階から時系列での比較を想定しておくことを強く推奨します。

定性調査と組み合わせる

トップオブマインド分析では市場においてユーザーが自社ブランドに対してどのようなイメージを持っているかまでは分かりません。数値で立ち位置は把握できても、なぜそうなのかという理由は見えません。

デプスインタビューフォーカスグループインタビューといった定性調査を組み合わせることで、認知の背景にある消費者の心理や文脈を掴めます。筆者の経験では、定量と定性を組み合わせた調査設計が最も実務で使える示唆を生み出します。

まとめ

トップオブマインド分析は、ブランド認知の実態を可視化し市場での自社ポジションを把握するための基本的かつ強力な手法です。純粋想起率と助成想起率という2つの軸で競合を含めた全体像を俯瞰できる点に最大の価値があります。

調査設計では質問の順序を厳守し、カテゴリー定義を明確にし、定期的な測定を前提とすることが重要です。アンケート調査の実施から4象限マトリクスの作成まで、一連のプロセスを正しく理解して実践すれば、次の打ち手が見えてきます。

数値だけでなく、その背景にある消費者の心理や購買文脈まで掘り下げることで、トップオブマインド分析は真に実務で使えるツールになります。定量と定性を組み合わせた調査設計を心がけてください。

この記事を書いた人

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。アドタイにてZ世代の誤解とリアル。「ビーリアルな、密着エスノ記」連載中。