NPSとは?顧客ロイヤルティを測る指標の調査方法・計算式・マーケティング活用事例を徹底解説

NPSとは顧客ロイヤルティを数値化する指標

NPSとは、Net Promoter Scoreの略称で、顧客が企業や商品、サービスに対してどれくらい信頼や愛着を持っているかを数値で表す指標です。2003年にベイン・アンド・カンパニーのフレッド・ライクヘルド氏によって提唱されました。

顧客に対し「この商品やサービスを友人や同僚に勧める可能性はどのくらいありますか」という質問を投げかけ、0から10の11段階で回答してもらい、その結果を数値化して求めます。回答された数値によって顧客を3つのグループに分類し、スコアを算出する仕組みです。

世界ではApple、Amazon、Google、Facebookなど顧客志向を重視する企業で特に採用されるケースが多く、アメリカのフォーチュン500のうち約30%が既にNPSを経営指標として採用しています。日本国内でも近年、CX向上における先行指標として導入する企業が増えています。

NPSの計算方法と3つの顧客セグメント

推奨者・中立者・批判者の分類

NPSでは、0から10点で回答してもらった結果を点数によって3つのグループに分類します。9から10点を付けた顧客を推奨者、7から8点を中立者、0から6点を批判者と分類します。

推奨者は親しい人に薦めるという企業にとってプラスとなる行動を取る可能性が高い、ロイヤルティの高い顧客セグメントです。批判者は商品やサービスに不平不満を感じていて、すぐに離反する可能性が高く、周囲にネガティブな情報を発信する可能性の高い顧客セグメントです。中立者は推奨者のように紹介することはないけれども、きっかけがあれば離反し競合へなびいてしまうという顧客セグメントです。

NPSスコアの計算式

NPSスコアの計算方法は非常にシンプルで、回答者全体に占める推奨者の割合から批判者の割合を引いて出てきた数値がNPSの値となります。割合表記を省略した数値がNPSスコアです。

たとえば100人にアンケートを取って推奨者が50人、中立者が30人、批判者が20人だった場合、推奨者の割合は50%、批判者の割合は20%となり、50-20で「30」がNPSスコアとなります。NPSは-100から+100の範囲で表され、推奨者が多く批判者が少ないほどスコアが高くなります。

NPSが重要視される理由

業績成長との高い相関性

NPSと事業の成長率には高い相関関係があることを証明する多くの調査が出ています。ベイン・アンド・カンパニーでは、おおよその業界においてNPSでトップを走る企業は競合他社の2倍の成長率を上げているという調査結果を発表しています。

2003年にSatmetrix社が航空会社、運送会社、生命保険会社など12業種50社以上の企業に対して行った調査によると、ほとんどの企業においてNPSのスコアと収益成長率に有意な相関関係が見られました。これは、NPSが単なる満足度調査ではなく、将来の行動と業績に結びつきやすい指標であることを示しています。

顧客満足度との決定的な違い

顧客満足度と大きく異なる点がこの業績との相関性にあります。顧客満足度は言葉の通り顧客の満足度合いを示す指標ですが、この満足の包含する範囲は非常に幅広く曖昧な言葉でもあります。

たとえ満足という評価を下した顧客であっても、必ずしもリピート購入や購入単価の向上といった形で業績向上に貢献してくれるとは限りません。NPSでは将来性を見込んだ満足感の指標であるのに対して、顧客満足度では現時点での満足度の指標であるという違いがあります。

離反客のうち80%が直前の顧客満足度調査で満足していると答えていたとする調査結果もあります。これに対してNPSは、他者にすすめるという未来の行動を点数化するため、今後の収益性と連動すると考えられています。

NPS調査の実施方法

2つの調査タイプ

NPS調査には主に2種類のアプローチがあります。リレーショナル調査は企業やブランド全体に対する推奨度を測るもので、顧客との長期的な関係性やブランドイメージ全体がNPSにどう影響しているかを把握するのに適しています。

トランザクショナル調査は商品やサービスを対象としたリレーショナル調査とは違い、店舗や営業担当者などを対象とした調査方法で、個別の利用体験の直後に調査するのが特徴です。対象を各顧客接点に絞っていることから、個別の課題発見に向いています。

調査設計のポイント

調査結果の信頼性を高めるためにはサンプル数も重要です。統計的な誤差範囲を考えると、誤差±5%に抑えるなら400サンプル以上、誤差±2%に抑えるなら2000サンプル以上が必要です。

顧客満足度調査では50問近い質問を設定するケースもあり、ユーザが回答途中に離脱してしまい有効な回答数を得られなくなる場面も見受けられました。NPSアンケートの質問数は多くても7問以内に抑えるのが理想的です。質問が多すぎると回答者が途中で疲れてしまい正確なデータが得られない可能性があります。

フリーコメントを設置することで、より詳細な顧客の評価を得られます。推奨度スコアの11段階評価では顧客が何に不満を感じどのような点に満足しているかは分かりません。フリーコメントに書かれた意見とスコアを合わせて見ることで、満足している点や不満点を具体的に把握できます。

マーケティングでのNPS活用方法

顧客セグメント別の施策設計

NPSが高い推奨者の顧客には、レビュー投稿を依頼すれば新規顧客獲得の促進につなげられます。一方で批判者の顧客に具体的な改善策を講じることで、離脱を防ぐだけでなく満足度の向上を実現できます。

推奨度が高い人ほどサービスの継続意向も高い傾向にあったり、また年間の購入回数、購入金額が高い傾向も確認できます。電力業界のNPSベンチマーク調査で今後の継続利用意向を尋ねたところ、推奨者は平均9.4ポイント、批判者は5.6ポイントとなり、推奨度が高いほど継続利用意向が高くなる結果となりました。また過去1年間に発信したポジティブな口コミの人数を調査したところ、推奨者は批判者に比較して約6倍の口コミを発信している結果となっています。

KPIとしての活用

NPSをKPIに設定し、営業・マーケティングの施策を実行することで、施策の成果を中長期的に確認することが可能です。見込み客が商品・サービスを認知し購入にいたるまでにはさまざまなタッチポイントがあります。タッチポイントごとに指標となるNPSを設定することで、各タッチポイントの最適化が目指せます。

業界や企業の性質に関係なく、NPSの評価方法や質問項目は基本的に共通しています。従って競合と比較するベンチマークの優劣を把握することもできます。業界内における自社の立ち位置を客観的に数値で把握できるため、事業方針の意思決定、競合との比較などにもNPS調査の結果は役立ちます。

NPSを活用している企業事例

NTTドコモグループの取り組み

NTTドコモグループでは2024年度から、お客さまを起点とする事業運営を推進することで最高のCXの実現をめざして取組んでおり、その指標の一つとしてNPSが挙げられています。2024年のサステナビリティレポートにおいては最高のCX実現にあたって個客起点のマーケティングへの変革を掲げており、顧客接点の強化、顧客理解の進化、サービスの磨き込みの3つに取り組み、その中でお客さまの声を聴き、それに基づいた顧客理解とその声に応えることを強化することに言及されています。

ポーラ・オルビスグループの活用

ポーラやオルビスなどの化粧品ブランドの展開、製造・販売を手がけるポーラ・オルビスグループでも、アンケートによるNPS調査をもとにお客様の声を事業に反映する取り組みを行っています。アンケートではNPSに対してどのタッチポイントがどのような印象を与えているのかについて定常的に調査を行っています。調査結果を基に接客を改善することでリピート率が向上するなどの成果に結びついています。

NPS活用時の注意点

日本特有のスコア傾向

NPS調査を日本国内で行った場合、スコアがマイナスに出る傾向にあることが指摘されています。SatmetrixというNPSのコンサルティング事業を手掛けるアメリカの企業が行った調査では、日本の顧客は他の国に比べ最も満足度やロイヤルティの点数を低く付ける傾向にあったと発表されています。

日本においてNPSが低く出る原因の一つとして、日本人の回答中心化傾向が考えられます。回答中心化傾向とは、たとえば5段階で評価を行う場合、そのちょうど真ん中である3の評価をつけやすいことを表します。思っていることをはっきり表現しないのでNPS調査の回答も4から6点などにしてしまうのではないかと考えられます。NPSを算出する過程では6点までを批判者とカテゴライズしてしまうため、ハイコンテクスト文化圏ではNPSが低くなってしまうのです。

日本では一般的に0から-50の範囲に収まることが多いとされています。NPSは推移の確認や他社比較で活用することで、施策の成果や業界でのポジションを認識できる指標です。絶対値ではなく、相対的な評価を把握することが重要です。

中長期的な視点の必要性

商品・サービスの品質向上、カスタマーエクスペリエンスの向上、口コミ促進などの施策の効果が出るには年単位の時間がかかります。顧客が企業やブランドに対して信頼感や愛着を持つには、継続的な良い体験の積み重ねが必要になるからです。NPSを活用する際は中長期的に物事を考える姿勢が求められます。

事業成長とNPSには相関性があり、NPSによる分析が今後の戦略を立てるために活用できます。しかしNPSが高い、もしくはNPSが向上したとしても、すぐに明確な数値として変化が表れるとは限りません。長期的なスパンで相関性がわかってくるものなので、継続的な調査を行いましょう。

まとめ

NPSは顧客ロイヤルティを数値化し、企業の将来的な成長を予測する上で有効な指標です。顧客を推奨者、中立者、批判者の3つに分類し、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値で算出されます。

顧客満足度が現時点の評価を測るのに対し、NPSは未来の行動を数値化するため業績との相関性が高く、経営指標として活用されています。調査方法はリレーショナル調査とトランザクショナル調査の2種類があり、目的に応じて使い分けることが重要です。

マーケティングでの活用においては、推奨者には口コミ促進施策を、批判者には改善施策を講じるなど、顧客セグメント別のアプローチが効果的です。また、タッチポイントごとにNPSを設定することで各接点の最適化が図れます。

ただし日本ではスコアがマイナスになりやすい傾向があるため、絶対値ではなく推移や他社比較で活用することが求められます。施策の効果が出るまでには年単位の時間がかかることを理解し、継続的な調査と改善のサイクルを回していくことが、NPSを経営に活かす鍵となります。

この記事を書いた人

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。アドタイにてZ世代の誤解とリアル。「ビーリアルな、密着エスノ記」連載中。