定性調査を活用した事業再生:赤字の会社をインタビューで黒字にした話①

こんにちは、リサートの石崎です。このコラムの運営元のリサート(インタビュールーム株式会社)の取締役と、親会社のバイデンハウスの代表取締役をしています。

2021年にバイデンハウスに参画して5年程の月日が経ちました。あまり語ることはありませんでしたが、5年の事業再生の日々を一度コラムに書いてみようと思いました。赤字のバイデンハウスを黒字にするために、営業から経営から採用まで、インタビュー調査を駆使していました。リアルなマーケティングリサーチの活用の体験談として読者の皆さんの日々の業務の参考になればと思います。

この記事を書いた人

石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。アドタイにてZ世代の誤解とリアル。「ビーリアルな、密着エスノ記」連載中。

バイデンハウスに入るまでの話

話は2016年。大学生の頃にまで戻ります。大学4年生のころ、当時広告代理店の若者研究所に私は参加していて、そこで運営元のバイデンハウスのオーナー社長(記事内ではオーナーと呼びます)と知り合いました。結構な頻度で飲みに連れ回してもらいましたね。

その後、私はベイカレントコンサルティングという会社に就職して、ITコンサルティングの仕事をしていました。

その後、オーナーはバイデンハウスで海外のクライアントの日本市場進出を支援するマーケティングリサーチ事業をしていました。Go-to-market strategyとも言われるような類の案件です。オーナーはあるプロジェクトでインドのチームと仕事をしていました。

とはいえオーナーはインド英語やインドとの異文化コミュニケーションに苦戦していたようで、なぜか私に声をかけてくれました。私は当時、オフショア開発のプロジェクトなどで当時インド人のチームとよく働いていたので、インド英語は得意なのでオーナーの仕事を手伝うことにしました。クライアントのカウンターパートがインド人のこともありましたし、この時期はかなりインドにどっぷりとハマっていた日々でしたね。

そこでマーケティングリサーチという仕事についてはじめて触れました。

業務を手伝っていて気がついたのですが、マーケティングリサーチという仕事を私は実はよく知ってました。小学生のときにスナック菓子と映画の座談会に参加した記憶を思い出しました。高校生のとき、渋谷によくたむろしていてお金がなかったので試飲調査などに参加して図書券とかをよくもらっていました。

話は戻り、そのインドのチームとのプロジェクトで、会議のファシリテーションをしたり、調査票を英語から日本語に翻訳をしているうちに、マーケティングリサーチの仕事のイメージがついていました。(ITコンサルの仕事やっていたからか、私は資料を読んだり話を聞くとリバースエンジニアリングのように、業務プロセスや日々の業務イメージを組み立てられる能力?勘?を持っています。)

まあそんなこんなで、仕事を手伝っている時期がありました。高校生のとき、リクルーターのおばちゃんに声をかけられて色々飲んだり答えたりしている裏を知って面白かったですね。

バイデンハウスに誘われた話

コロナ禍の2020年、今度は別のコンサル会社で働いてたときにオーナーからバイデンハウスへ誘いがありました。

話を聞いてみると、オーナー社長は社長を引退していまはオーナーになっていました。その直後、コロナ禍がやってきて赤字になっているとのことでした。

コンサルをやっていたので赤字を黒字にするという話は燃えるし、キャリアとしてPEファンドに雇われるプロ社長になんとなく憧れがありました。なので、まず規模問わず社長と経営をやってみようと思い、結構軽い気持ちで「バイデン入りますよ」と回答しました。

コンサルはプロジェクトベースで働いているわけなので、新しいプロジェクトを個人的に受注した、くらいの感覚でした。B2Bの事業戦略よりB2Cのマーケティングの方が楽しいかもな、とも思ってました。

「社長で雇ってくれるなら黒字にします」と生意気なことを言ってバイデンハウスに入りました。

この生意気さは若気の至りですね。

最初に考えたこと:赤字の原因を特定する

さて、そんな経緯でバイデンハウスに参画しました。2021年の話です。

いつもの感じでオーソドックスに分析を始めます。バイデンハウスの赤字の表面的な原因と根本原因を特定します。

コロナ禍が原因で売上が下がっていることは間違いないのですが、コロナ禍はコントロールできないので、外部要因を押さえつつ、内部要因の改善を前提に分析をしました。

まずキャッチアップとして、マーケティングリサーチ業界の市場規模、市場の成長、動向についてデスクトップリサーチしました。

市場規模2,000億円でゆるく成長傾向、コロナでクライアント業界の販管費が削減されているので直近は縮小。という感じでした。まぁ、当社は市場シェア1%もない会社なので、市場規模なんて大してアテにしてはいけません。

とはいえ、2,000億円という市場規模は気になりました。そもそもマーケティングリサーチ業界は市場規模が小さすぎますね。マーケティングリサーチ業界はお好み焼き店の市場規模とほぼ同じです。そんな印象でした。

マーケティングリサーチは支援業なのでクライアント業界の市場規模の動向も見ておきました。マーケティングリサーチ会社としてバイデンハウスは伝統的にFMCG商材が多かったのですが、これはコロナ禍で影響を受けて受注数下がっていました。一方テック系の市場はわりと好調なので、コロナ禍が落ち着くまではテック系の案件を狙っておいて、コロナ禍からの回復のタイミングでFMCG商材の離反顧客を取り戻すことにしようと、算段を付けました。

さて、マーケティングリサーチ業界の市場構成を見ると、定量調査セグメント7割、定性調査セグメント3割と書いてありました。バイデンハウスの事業ドメインの定性調査の方が定量調査より需要が小さいことを知りました。

普通に考えれば大きな7割の定量調査市場を狙いますが、とはいえ市場のシェア率1%にも満たない当社でボリュームを参考にしてもしょうがないかなと思い、得意な定性調査市場を継続して選択することにしました。得意な定性調査で顧客数を増やして、あとからクロスセルで定量調査を提供した方が現場のメンバーも負担が少なく、効率良いですからね。

続けて、社内のKPIを分解して現状を整理しました。

売上に紐づくKPIのシンプルな分解

  • 案件数
  • 平均受注単価
  • 従業員数
  • 従業員一人当たりの売上
  • アカウント数
  • クライアント・アカウント別平均売上
  • クライアント商材案件数
  • クライアント商材別平均売上

とこんな具合です。まあ支援業なので、売上KPIの分解はひねることもなくシンプルです。

売上・利益が減っているので、外部環境にコロナ禍以外にも致命的なリスクがないか、は見ておきました。代替財・補完財などサブ市場での成長領域がないかも一応見ておきます。

コロナ禍で定性調査は会場のインタビューからZoomを使ったオンラインインタビューに切り替えの動きがありました。オーナーや社内に話を聞くと、コロナ禍前までは「オンラインインタビューなんて・・・」という雰囲気でほぼ需要なかったみたいですね。

2020年のコロナ前まではモデレーターが高齢化しているのでインタビュー調査のデジタル化が進まなかったようです。Zoomの画面投影がぎこちないモデレーターをたくさん見かけて、なかなか古い業界だな・・・と正直思いました。オンラインインタビュー市場とモデレーターの高齢化は、「機会」にあたります。近いうちに、若いモデレーターでオンラインインタビューを訴求するのが効果がありそうだと思いました。

内部環境としては、客数(案件数)、平均客単価、新規顧客数・リピート率、大口アカウントの売上あたりのどれかにネガティブな変化が必ずあるはずです。だって赤字ですからね。あるいは、損益分岐点を超えていない(赤字)ので固定費および調達コストかもしれません。

今回のケースにおける分析の目的は、そのネガティブな変化を見つけて、その原因を特定すればよいだけで明確です。そんなに複雑な調査・分析はしていませんし、必要ないと思いました。

これは当時からの私の持論ですが、分析というのはシンプルな方が良いのです。統計学を用いるような複雑な調査は、大抵の場合ステークホルダーが大抵理解できません。かの大前研一氏もマッキンゼー時代は四則演算を使った分析しかしていないと明言していたと思います。

幸いエクセル上に過去5年分の取引データがすべてあったので、各指標の推移を見てみることにしました。毎年データフォーマットが若干違ったりしていたので、データクレンジングがちょっと大変でしたが、ゴリゴリやっていきました。

過去の取引データ分析からわかったこと:オーナー社長が社長を退いたタイミングで平均単価が落ちてる

取引データを調べてみると、オーナーが社長を引退した2018年ごろから案件単価が減少していました。

同じく受注件数も減っているのですが、平均受注額は2-4割くらい落ちていることに気が付きました。だいぶ落ちてるなコレ。費目を調べてみると、モデレーション費の発注が減っていることに気が付きました。レポート作成に関しては、受注実績がほぼありませんでした。ここで、バイデンハウスは、調査会社ではなくて「インタビュールームと機縁リクルートの会社」として認識され始めているのではないか?という仮説を持ちました。

決め手は、会社のロゴが入った配布用クリアファイルを見つけたときのことです。
Weiden Hausの下にタグラインで「リクルート&インタビュールーム」と刻印されていたのをみて、「ああ、間違いなくこれだな」と確信をしました。

AS-IS/TO-BE分析とまで言うと大げさですが、マーケティングリサーチ会社としてのあるべき姿は、まず、調査フルパッケージで請負ができることだろうと思いました。付加価値の源泉となるポイントは、調査設計、モデレーション、分析・レポート作成でしょう。これができていないと顧客から認識されている、というのが残念ながらバイデンハウスの2021年当時の現状、というわけです。

まずは元々発注があったモデレーションの発注が来なくなった原因を特定します。

クライアントの担当者や離反顧客、関係者数名に「カスタマーエンゲージメントサーベイの時期なので、フィードバックをお願いしたく何卒!」のような外資系でよくある定期フィードバックです、という雰囲気でアポを取って、ヒアリングをしてみました。

ヒアリングの結果わかったのは、バイデンハウスはモデレーションしているイメージがないということでした。

次に社内の営業責任者にヒアリングをしたら、モデレーションの受注が減っている感覚はなんとなくあったが、具体的に平均受注単価がこれだけ下がっている、という認識は弱かった

「そもそも、フルパッケージの調査とは?」という感じで調査の全体像に対してイメージがない印象を受けました。おそらく、得意先要望に対する御用聞き能力が高すぎて、RFQ通りの見積もりだけを作っている感じです。フルパッケージで売るという経験が社内で乏しいので、モデレーションの発注量が減っていることにあまり意識が向かない、ということが起きています。結果として、追加の提案としてモデレーションもいかがですか?みたいな声がけをした方がよいね、という発想に至っていない、という状況でした。じゃあ、これは明日から始めればよいとしました。

そもそもの根本的な原因は、自社の取引データを定量的に分析する仕組みがなかったので、誰も振り返りをしたことがなかった。結果として、誰も平均単価の減少に気づいていなかった、という話になります。

読者の方からすると、調査会社なのに社内のデータ分析をしていないのはお恥ずかしい話かもしれません。とはいえ、私からすれば根本原因がわかった時点で7割は解決しているようなものです。

とりあえず、基本的な経営指標は定期的にトラッキング・振り返りをして迅速に変化に気が付ける体制にしておきます。クロスセルとして、モデレーションはどんな場合でも必ず提案しておくことを社内でルールにしました。

加えて、100万円以下の案件は受注に際して私の承認を必須とする、ということにしました。社内には、100万円未満の案件をたくさんやっても赤字のままだし、忙しくても従業員のみんなの暮らしはよくならないし、当社のバリューをクライアントに感じていただくことも難しく、会社の存在意義に関わる問題、と説明しました。

単価は最低いくら以上、加えて粗利率は最低何パーセント以上、それを満たさない場合は社長承認としておけば、受注数が計画を下回らない限り、黒字になります。なので社内では、受注案件数だけを気にしておけばいいわけです。まあ、これを社内に習慣として浸透させることが難しいわけですが、理論上はそうなります。

現場の行動観察でわかったこと:強いリピート率ゆえに、営業のマインドセットが「待ちの姿勢」になっている

オーナーの社長引退後の売上減少は、確かにオーナー社長というトップ営業を失った点も大きく影響しているでしょうが、オーナー引退の問題は他にも起きているだろうと思いオーナーや現場にヒアリングをします。

オーナーからは「現場は、案件が来ると思って口を開いて待ってる状態な気がしている」という発言がありました。

ここは現場の発言をそのまま聞くのではなく、現場の風土を観察した方がよさそうだなと思い、社内の日常を行動観察(エスノグラフィー)することにしました。メンバー全員のメールにCCで入れてもらったり、電話や会議を横耳で聞いたりしていました。

わかったことは、まず当社の現場のメンバーは案件が取れるとフルスピードでクライアントのためにタスクをこなしていきます。一方、営業という観点では、明日には案件がくるかなーという楽観的な期待感を持っている。で、「今日も案件がこなかったねえ」という感じで毎日が過ぎ去っていき、結果、「今月は売上が悪かったねえ」というような話をしています。

「案件は降ってくるものという感覚なのか?そんな甘い話あると思ってる?」なんて思いましたが、そうじゃなかったことを後々知ることになります。再度オーナー社長とヒアリング。この会社にとっての営業とは何なのか、について話を聞きました。

Q.バイデンハウスの営業とは?
A.クライアントとの窓口担当者がいい仕事をする、そうするとそれが顧客満足となってクライアントからのリピートに繋がる、それがこの会社の営業。新規開拓はこれまで誰がやっていたか?実質、オレ1人だけ。

そこで気が付いたのですが、現メンバーは誰も一般的な営業の仕方を知らないし、教わったことがないのでした。その話をもとに改めて社内を観察すると、話しかける、提案する、クロージングする、断られても定期的に連絡を取り続ける、というごく一般的な営業活動は行われていませんでした。

つまり、サービスの顧客満足度が良いがゆえに、営業力の弱さに繋がっていたということです。コロナ禍で、クライアントの販管費が削られた中、競合他社は必死に営業部が積極的な営業をしたと思われます。一方、バイデンハウスでは誰も積極的にクライアントに話しかけることをしていなかったので、競り負けているんだろうなと思いました。

これはかなりいい発見でした。一般的な営業をしたことがないのなら、営業したら大抵売上は伸びます。目標を決めて当たり前のことを当たり前にやれれば、大抵のことは改善します。毎日英単語を10個覚えたら、TOEICの点は必ず上がるのと同じです。

オペレーショナルエクセレンスという言葉があります。オペレーショナルエクセレンスの本質は、必要なことを当たり前にやる、ということです。裏を返せば、当たり前のことを当たり前にできていない会社は私の経験上、零細企業・中小企業に限らず、大企業であっても結構多いものです。

営業すれば売上が伸びるという方程式にはプロダクトが優れている、顧客満足度が高い、という前提があります。確かにコロナ禍前のリピート率は高かったので顧客満足度は高いのかと予想できますが、なぜ顧客満足度が高いのか、という点はエビデンスを抑えておく必要があります。

リピーター顧客へのインタビューでわかったこと:他社にはない強みもある

逆にリピートいただいているクライアントの方からは機縁リクルートの質がよいとお褒めの言葉がありました。「出現率が低い対象者も頑張って探して見つけてくれる」とか「お話の解像度・言語化能力が高い方を見つけてくれる」(業界ではArticulate& Creativeといわれるやつ)とか。

オーナーと話していると、確かにそこはかなり強みだという自負があるらしい。現場を観察していても、ここが一番の頑張りどころ、という感じでやってる。

対象者のリクルーティングは確かに強みのようです。とはいえ、調査会社の強みとしてはちょっと弱くない?と正直思いました。

ここで思ったのは、モデレーションなどが別会社に発注されて、発注スコープが狭くなったことで、クライアントが価値を感じるポイントが具体的に・小さくなりすぎているだけではないか?ということです。

機縁リクルートは今後も頑張るとして、フルパッケージで発注をもらえれば「機縁リクルートの質がよい」ではなくて「調査の質が良い」という調査全体への価値に認識を転換をできるのではないか?と思いました。

そんな中、プライベートでちょっとした気づきがありました。地元の駅前のマッサージ店に整体に行ったとき、ものすごい力(強すぎる)の指圧のマッサージ師にあたりました。正直痛すぎて、不快感があったのですが。一方、施術師の彼は「強い痛みを与えることで、痛覚の鈍感さを直していきます、すると正しい元の感覚が戻ってきますからね」ということを私の耳元で何度も話しかけてきます。これも非常にうっとおしいのですが、何回も聞かされていると「痛み=回復」ということが頭の中に刷り込まれていくような感覚がありました。

相手が価値として意識していないことを、言語で表現された価値にする、それを繰り返して伝える。すると、相手は「そうなのかも?」と意識し始めていく。というマーケティング的に大事そうな原体験を経験しました。

その原体験をきっかけに、「調査の質がいい」ことに自信があるなら「調査の質がいい」と相手に言い続けて認識をしてもらうのは効果があるなと思いました。価値を言語化して口に出すのは間違いなく大事です。

競合調査でわかったこと:他社にできないことをやっているのに単価が他社より安い。安すぎ

相見積もりで値付けを見直す(値上げをする)

まず、マーケティングリサーチ会社10社くらいに相見積もりを行いました。製品ベンダーを比較をすることはITコンサルの仕事でよくあるやつですね。それと同じイメージでやりました。

結果、弊社の見積もりはが他社と比べて非常に安いことが分かりました。安すぎる・・・!クライアントには他社にない価値を認めてもらっている部分もあるのにも関わらず、安かったのです。そもそも難易度が高すぎて対応できない、という会社もありました。

なので、シンプルに値上げをすることにしました。他社にできないことは一番高い価格をつけても問題ないはずです。

オーナーからは「価格に手頃感がなくなると仕事が来なくなるかもしれない」「リスクがある」と反発がありましたが、これは戦いました。

プライシング案件あるあるですが、まず消費者の反発の前に社内で反発が起きます。例えば、営業からすると「値上げすると以前より得意先に買ってもらえなくなる」とかですね。それを越えて稟議を上げていけないとそもそも値上げできません。

とはいえ、安さを武器にすると、結局こなす数が増え、クオリティが落ち、激務なのに給与が安い、というサイクルから抜け出せなくなります。

なので、以下の好循環のサイクルを目指すことにしました。

ビジネスの好循環のイメージ

  • 高いけどクオリティに納得していただける
  • 同時並行する案件が少ない分一つの案件時間をかけられる
  • クオリティが高くなる
  • 顧客満足度が高いのでリピートをいただける
  • リピート率が高いので営業人数を多く抱えなくて済む
  • 再投資する余裕ができる

結果、値上げは当時の出し値から1.5~2倍程度上げました。当然、受注件数は減る想定でいたのですが、なぜか増えました。(この話はまた今度)

スライド1枚あたりの単価を比較する

コンサル業界にいたので、受注単価を見ていて、そもそもの金額が安すぎ、と正直思っていました。

100枚のスライドで5000万、1億円みたいなコンサル業界の相場があって、100枚の定量調査のスライドで30万円とか50万円とかです。1スライドあたりの単価という概念で比較すると、100万円のコンサルの世界があって、調査業界は3000円。

この単価差はどこから来てるのだろうか?と思いました。

シンプルに、発注側のお財布が違います。発注主が経営レイヤーなのか、マーケティングの部レイヤーなのかによって当然予算が違います。そこにはすぐ気づきましたが、やはり付加価値に差がある点も見逃せません。

もし提供している付加価値が同等だというのなら、マーケティングリサーチ会社は経営企画部からコンサルティングフィーをもらうビジネスに変えた方がよくありませんか?だから同等ではない、ということは少なくとも明らかです。

エキスパートインタビューでマーケティングリサーチ業界のお作法を知る

コンサルとマーケティングリサーチで付加価値に差・違いがある、という前提で分析を進めます。

私なりにマーケティングリサーチ会社の資料を見ていて感じた違和感がありました。事実しか書いていないのです。このレポートを読んだ後、クライアントはどうするべきか、という観点が大きく抜けていると思いました。

なぜこのようなことになっているか、マーケティングリサーチャーに話を聞いてみたいと思いました。ビザスクとか使いたいが、そんなお金はないのでSNSで探すことに。結果、Twitterでマーケティングリサーチャーのアカウントが会話をしているのを見つけました。直接DMをしてお話を聞かせてもらいました。

マーケティングリサーチャーへのエキスパートインタビューを通じてわかったことは以下の3点です。

  • 解釈や意見を書くことを禁じているマーケティングリサーチ会社すらある
  • 事実を事実のまま伝えるのがマーケティングリサーチの流儀・お作法という考え方がある
  • そもそも、提言をまともにできるほど、クライアントから周辺データをもらえていない

コンサルでは、事実だけをかけば(主に上司から)So what?と言われます。「事実はなにで、解釈はなにか?」「クライアントにとっての意味合いはなにか?」というのフィードバックを厳しくもらいます。

マーケティングリサーチとコンサルのスタンスは大分真逆だなと思いましたし、これではマーケティングリサーチだけで付加価値を認めてもらいづらいと思いました。なので、事実→解釈→クライアントにとっての意味合いという点はバイデンハウスでは重視することにしました

黒字化のためにやると決めたこと

様々なステークホルダーに話を聞いて考えた結果、はじめの6か月はここまでやろう、と決めました。

  • ターゲット(何を?誰に?)
    • テック・IT>FMCG
    • 定性調査>定量調査
  • 案件数の向上
    • きちんとやっていなかった営業を当たり前のようにする
      • 離反顧客から声掛けをする
    • 案件数のために安売りはしない
  • リピート率の向上(付加価値の向上)
    • 1案件にかける時間を増やして、クオリティ・顧客満足度にこだわる
    • 事実ではなく、解釈・提言を売る
    • 相手に認識してほしい価値を、言葉で意識的に伝える
    • 値上げ:稼働負荷を下げつつ、クオリティにこだわる
  • 平均単価の向上
    • フルパッケージで売る
    • 最低受注額、最低受注粗利額を決めて、下回った場合は社長承認とする
  • 粗利率の改善
    • 値上げをする
    • コスト削減はしなかった(もとからコストに関してはミニマムだった)

続きはまた今度書きます。