定性調査における「発言録」とは?マーケティングリサーチを成功に導く重要なエビデンスの作り方を解説

🗣️ 定性調査における「発言録」とは?作成の目的と分析への活用法

💡 はじめに:なぜ定性調査に「発言録」が必要なのか?

定性調査(デプスインタビューフォーカスグループインタビューエスノグラフィなど)において、モデレーター(調査員)が参加者から得た情報は、映像データ・音声データとして記録されます。

しかし、これらのデータをそのまま分析するのは非常に効率が悪く、また客観性も保てません。そこで必要となるのが、「発言録」です。

発言録とは、インタビューや会議などの音声データを一字一句文字に起こしたもの、つまり逐語録(ちくごろく)、文字起こしのことです。これは、定性データを分析・活用するための最も重要な基盤となります。

1. 定性調査において発言録を作成するべき理由

発言録は、単なる文字起こしではありません。定性調査において重要な根拠になります。

  • 客観性の担保:
    感情や記憶に頼らず、発言内容を客観的なテキストデータとして記録できます。
  • 効率的な分析:
    テキストデータにすることで、キーワード検索やコーディング(分析のためのタグ付け)が容易になり、分析効率が大幅に向上します。
  • チーム内での共有:
    調査に携わっていないメンバーも、発言録を読むだけでインサイトや文脈を正確に把握できます。
  • 引用・報告:
    報告書やプレゼンテーションで、ユーザーの生の声を正確に引用するために不可欠です。

2. 【重大リスク】発言録がないと分析時に起こるトラブル

発言録がない、またはその精度が低い場合、調査の分析と活用の各フェーズで深刻な問題が発生します。

  • 分析に時間がかかる:
    リサーチャーが音声データを何度も聴き直す必要が生じ、分析に膨大な時間を要します。
  • 分析時にインタビュー内容を忘れてしまう、記憶違いが起きる
    テキストデータがないと、リサーチャーの記憶や主観に分析が依存しやすくなり、記憶違いのまま誤った分析をしてしまうことがあります。最もひどいケースでは、エビデンスがないために社内で意見の対立などが起きます。
  • チーム間での情報格差:
    インタビューに参加していない関係者(開発、マーケターなど)が、ユーザーのニュアンスや文脈を正確に把握することが難しくなり、プロダクトへの反映が遅れます。
  • 重要なインサイトを見落としてしまう: キーワード検索による抽出が不可能になるため、長時間の発言の中に埋もれた重要なユーザーの声を見逃すリスクが高まります。
  • 分析を改ざんしてしまう:
    エビデンスとなる発言録がないことで、報告書を都合の良いよう書くことができてしまいます。例えば、マーケティング施策の稟議を通したいがために、実際はそうではなかったのにも関わらず、消費者からは肯定的な評価があったと書いてしまう、などが該当します。このような担当者の改ざんによってマーケティング施策や商品開発を行うと、企業として大きな損失を負うことになります。

発言録がないことは、定性調査のコストと時間を無駄にし、誤った分析や意思決定につながる大きなリスクとなります。

3. 定性調査における発言録の種類

発言録は「逐語録」とも呼ばれ、発言された言葉をそのまま記録したものを指します。発言録には、分析の目的に応じて主に3つの形式があります。

  • 素起こし(原文ママ)
    音声に忠実に、全てを文字化する「えー」「あのー」といった言葉(ケバ)や言い間違いも含め、話すスピードや癖、感情の機微を重視したい心理分析向け。最も手間がかかる。
  • ケバ取り
    「素起こし」から不要な表現(ケバ)を除去する最も一般的に利用される形式。会話の内容が整理され、分析のしやすさ精度のバランスが良い。
  • 整文
    文脈が通るように文章を修正・校正する読み物としての報告書作成や、発言内容の意味把握を最優先したい場合に適している。発言者の微妙な意図を損なうリスクもある。

定性調査において、リサートでは主にケバ取りを推奨しています。

4. 誰のために作る?発言録を必要とする関係者と、もたらされる価値

  • マーケティング・商品開発・リサーチ析担当者
    インサイト抽出、および報告書作成の根拠として利用します。
    また、実査中に気付けなかった発言の繋がりの分析や、自身のモデレーションの客観的な振り返りに活用します。
  • インタビュー不参加者
    時間や場所の制約なく、ユーザーの生の声やニュアンスを正確に把握し、製品開発や戦略立案に活かせます。
    例:経営層、上司、関連部署、他の予定が入り参加できなかった担当者など

5. 発言録の質を高めるための観点

質の高い発言録は、インタビューの「誰が」「何を」「どのような状況で」発言したかを明確に記録している必要があります。

5-1. 話者分離ができているか

定性調査の発言録作成において最も重要なのは、誰が発言したかを正確に区別すること(話者分離)です。

特にグループインタビュー(FGI)では、複数の参加者が同時に、または連続して発言するため、高度な聴き取り能力と正確な時間軸の記録が必要です。プロの書記は、発言のタイミングやニュアンスを記録したメモを添えることで、分析をサポートします。

5-2. 分析に必要な非言語情報を記録できているか

定性調査で収集される情報は、一般的に以下の階層で捉えられます。

  • 一次データ: オフラインの実査(生のコミュニケーション)
  • 二次データ: 映像データ、音声データ(一次データを記録したもの)
  • 三次データ: 発言録(二次データをテキスト化したもの)

この情報変換の過程で、三次データである発言録は、情報が抜け落ちることを理解しておく必要があります。具体的には、映像・音声データには含まれていても、文字化する際に失われてしまう非言語情報です。

書記は、インタビュー中に以下の情報を適切に記録し、発言録に付記することが非常に重要です。

  • 非言語情報のメモの追加例:
    • 発言時の表情や感情(例:「笑いながら」「困惑した様子で」)
    • 発言と同時に見せた行動(例:「商品を指さす」「メモに何かを書き込む」)
    • 試供品のテスト時の仕草(例:「むせる」「顔がゆがむ」)
    • 質問の意図や背景など、音声だけでは読み取れない文脈

発言録にこれらの情報があることでインタビューに参加していない人もインタビューの様子を臨場感をもって消費者を理解することができます。

5-3. モデレーターが適切に分析に必要な情報を聴取できているか

発言録を分析に最大限活用するためには、そもそもモデレーターが分析に必要な情報を適切に聴取できているかが重要です。
抜けもれなくインタビューを行うためには、モデレーターはインタビューフロー(インタビューガイド)を事前に作成することが効果的です。

3. プロが必要な理由:AI文字起こしツールの現状の課題と限界

近年、AIによる文字起こしツールも進化していますが、マーケティングリサーチの導入にはまだまだ障壁があります。

  • 精度が低い:音質や専門用語で大きく低下する
  • 誤字脱字が多い:修正の手間がかかる
  • 話者分離ができていない:雑音や声質が似ていると困難
    とくに、オフラインの会場インタビューや、フォーカスグループインタビューでは文字起こしの品質が大きく下がる
  • クライアントに納品できる品質に達していない:プロの書記の方が納品物として高品質

マーケティングリサーチ会社(市場調査会社)においては、現状AI文字起こしは納品物にすることは困難(リサートの独自調査より)

近年、AIによる文字起こしツールも進化していますが、現状、定性調査においてはプロの書記によるサービスが不可欠です。

✅ まとめ:リサートが提供する発言録作成サービス

定性調査における「発言録」は、インサイトを発掘するための宝の山であり分析のエビデンスです。その質は、最終的な調査結果の深度を左右すると言っても過言ではありません。

リサート(インタビュールーム株式会社)では、プロのモデレーター派遣に加えて、高品質な発言録作成サービスを提供しています。

✅ リサートではインタビュー調査の書記を募集しています!

この記事の監修者

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角 泰範 | マーケティング・リサーチャー
リサート所属モデレーター。シンクタンク・マーケティングリサーチ複数社を経て現職。マーケティングリサーチャーとして10年以上の経験を有し、大手ブランドの広範な商材・サービスの調査を支援。統計学的な分析手法とインタビューをハイブリッドに活用した、定量・定性の両軸での消費者分析力が強み。

この記事を書いた人

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石崎 健人 | 株式会社バイデンハウス マネージング・ディレクター
リサート所属モデレーター。外資系コンサルティング・ファーム等を経て現職。バイデンハウスの消費財、ラグジュアリー、テクノロジー領域のリーダーシップ。生活者への鋭い観察眼と洞察力を強みに、生活者インサイトの提供を得意とする。2022年より株式会社バイデンハウス代表取締役。2025年よりインタビュールーム株式会社(リサート)取締役。アドタイにてZ世代の誤解とリアル。「ビーリアルな、密着エスノ記」連載中。