はじめに
インタビュー調査は、マーケティングリサーチにおいて生活者や顧客の本音やインサイトを深く掘り下げるための定性調査手法のひとつです。
質問紙形式のアンケート(定量調査)と異なり、直接の対話を通して背景や理由、感情まで把握できる点が強みです。
マーケティングリサーチ業界では、商品開発、ブランド戦略立案、UX改善など幅広い場面で活用されます。本記事では、インタビュー調査の種類や設計方法、実務のポイントを業界目線で詳しく解説します。
インタビュー調査とは?
インタビュー調査は、調査対象者(被験者)に質問を投げかけ、その回答内容や態度を記録・分析する手法です。
目的は「なぜそう考えるのか」「どのように感じているのか」という深層的な情報を得ることにあります。
マーケティングリサーチの現場では、新商品のコンセプト検証、ユーザー体験(UX)改善、購買行動の背景把握などに多用されます。
インタビュー調査の種類
1. デプスインタビュー(Depth Interview)
1対1で実施し、対象者の価値観や心理を深く掘り下げる手法。
特徴:
- 他者の影響を受けずに発言できる
- 感情や体験談を深く聞き出せる
- BtoBや専門領域、機密性の高いテーマに有効
2. フォーカスグループインタビュー(FGI)
6〜8名程度のグループで行い、参加者同士の意見交換や反応を観察する手法。
特徴:
- グループ内の相互作用から新たな意見が生まれる
- アイデア出しやコンセプト比較に向く
- モデレーターの進行スキルが重要
3. エスノグラフィー型インタビュー
対象者の生活環境や利用シーンで観察を交えながら実施する手法。
特徴:
- 実際の行動と発言のギャップを把握できる
- 無意識の行動や習慣を発見しやすい
インタビュー調査の設計方法
1. 調査目的と仮説の明確化
- 何を知りたいのか(例:購買理由、離脱要因)
- 仮説を立て、質問項目に落とし込む
2. 対象者条件とリクルーティング
- 性別、年齢、職業、購買経験など条件を設定
- 専門パネルやスクリーニング調査で適格者を抽出
3. 調査ガイド(質問ガイド)の作成
- 大項目(テーマ)→小項目(質問)→深掘り質問の順で構成
- オープンクエスチョン中心に設計
4. 実施環境の準備
- 対面の場合:防音のインタビュールーム、録音・録画機材
- オンラインの場合:Zoom/Teamsなどの安定接続環境
5. 実施と記録
- モデレーターは中立を保ち、誘導しない
- 記録担当は逐語録(トランスクリプト)を作成
6. 分析と報告
- 発言をカテゴリ分けし、パターンや傾向を抽出
- 背景要因とインサイトをまとめ、施策提案につなげる
実務で押さえるべきポイント
モデレーションスキルの重要性
インタビュー調査の質はモデレーターの力量に左右されます。
- 間の取り方、傾聴姿勢、相槌のタイミング
- 参加者の緊張をほぐし、発言を引き出す雰囲気作り
質問順序と構成
- 導入は軽い話題で緊張を解く
- 中盤で本題を深掘り
- 終盤で自由意見やまとめを促す
データの質確保
- 録音・録画+逐語録で精度を担保
- バイアスや誘導質問を避ける
活用事例
新商品開発
食品メーカーが試作品を試食してもらいながらFGIを実施。味やパッケージデザインの改良案を抽出。
サービスUX改善
アプリ利用者に対してオンラインデプスインタビューを実施。操作の不便さや改善要望を把握。
ブランド戦略立案
若年層消費者にブランドの印象や価値観をヒアリング。広告メッセージの再設計に反映。
メリットとデメリット
メリット
- 深いインサイトが得られる
- 数字では見えない背景や感情を把握できる
- 新たなアイデアや仮説の創出に役立つ
デメリット
- サンプル数が少ないため一般化しにくい
- 実施に時間とコストがかかる
- モデレーターのスキル依存度が高い
まとめ
インタビュー調査は、マーケティングリサーチにおいて顧客理解を深めるための強力な武器です。
デプスインタビュー、フォーカスグループインタビュー、エスノグラフィーなど、目的に応じた手法を使い分け、設計・実施・分析まで一貫して高いクオリティで行うことが成果につながります。